糸へん地獄ー呉服の闇
蒼猫
第1話 古着屋稼業
蒼猫の糸へん界隈へのかかわりは古着屋から始まりました。
『糸へん』というのは業界用語であり、今でいう『アパレル業界』なんかな?
よく古株の人などは、
「おれも糸へん長いからねえ…」
とか言ってましたね、つまり繊維とか服飾とかそういう業界を指す訳です。
それまで勤めていた会社を辞めて『糸へん』に飛び込みました。
やはり家族や周囲には反対されたし、中でも父は特に、
「おまえをどういう思いでここまで育ててきたか…人生をぼうにふるのか?」
とまで説教されたんで、そうとうに落胆させてしまったんだと思います。
そういう事々を思い出すと、業界を去った今となっては、心苦しい面も確かにあります。
ただ言い訳になるかもしれないけれど、中途半端な転職動機ではなかったことは、くどくとも言いたいです。なにしろ呉服屋になるというのは、僕の小学生の時分からの夢であり、度々文集などにも寄せてましたしw
なんちゅうことはないんですが、小学生の頃の友達の家が古くからの大棚の呉服屋さんで、そこの店主である品のいいおじさん(友達のお父さん)が、日がな着物姿でぷらぷら出歩いて遊んでる風で、飄々と浮世離れというか、そういう生き方に憧れを抱いてしまったんですね、どんだけなめたガキというか、マセてるというかw
今思うとアレも営業のうちというかそういうのわかるんですがw子供の頃は単純に、
「いいなあ、ああいう生き方」
と素っから思ってしまい、影響をうけてしまった、という訳です。幼少の頃の思い込みって強い残留思念性があって、生きてるうちに消えたかと思ってたら突如頭をもたげてくるというか、そういうのありませんか。僕はたまにあります。ガリガリくんとかw
そういう騒動を経て、兎に角入ってしまった着物という異世界。にわかだけど着物好きだったんで一寸は知ってるつもりだったんだけど、案の定そんなものはなんの役にもたちませんでしたw全部ふきとんだし、先輩やらにゴミ虫の様に扱われるw
古い業界なんで、徒弟制というかそういうのが色濃く残ってて、上下関係に厳格で、今の体育会系とかいうのをはるかにこえた世界だった。
市場の痰ツボ掃除、交換とか人生で初めてやらされたwなんであんな事しなきゃいけなかったのか当時はよくわからなかったが、要は『おまえは下っ端なんだよ』という事を、骨の髄までしみ込ませてわからせる為の洗脳とか演出だったんだろうね。僕は新人にやらせなかったから、先輩に怒られたなあw
「そんな事も出来ない奴は使い物にならない」
これ百回は言われたと思う。w
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