転移した俺は異世界で財をなす!
ムーンラビット
世界転移編
第1話:宝掘師《榎谷司》
それは、歴史に隠された様々な謎を解き明かし
その歴史に隠れた財宝を発掘する者達の
総称である。
近年、世界では宝掘ブームとでも呼ぶのだろうか
宝掘師を生業とする者達が急増している。
海、山、河、草原、砂漠、雪山、
財宝は至る所に隠されている、
ある者は財を、ある者はロマンを、
彼等は様々なモノを求めて今日も何処かで宝を
探し求めている。
~日本・Y県S市・とある山奥
ザクッ、ザクッ…
とある山奥、時間にして昼1時
木々が生い茂る森林にスコップの音が響く。
この場所は地元民でも滅多に立ち入らない
程の山奥、お昼ではあるが生い茂る木々が日光を
遮り若干薄暗い空間を形成している。
そんな場所で額から汗をかきながらスコップを
振るう1人の青年、まだあどけなさが残るその顔から二十歳そこいらの年齢であることが伺えるだろう。
しかし、今はそんな青年の歳などは問題ではない
このような人も近付かない山奥、
そんな中一心不乱にスコップで地面を掘る青年
傍から見れば「死体遺棄!?」や「ヤベーよアイツ」
などと言われてしまいかねない状況である。
ザクッ、ザクッ……カチン!…
スコップを握る青年の手に響く何かの手応え
その手応えに青年の顔に嬉色が浮かび上がる。
青年はスコップでその物体の周りを慎重に
掘り始めてゆく、時間にして2時間掛かったか
掛からなかったか地中に埋まる物体がその姿を
現した、
《アーチ》
一言で表現すればそれである、
高さ約3m、横幅約1mのそれは、
土で汚れてはいるがその荘厳さを醸し出していた
「材質は…石…、この彫られているのは模様は
龍と人…か?」
穴に降り腰のツールポーチから
取り出すとアーチの土を払い落としながら
アーチに描かれた彫り画を熱心に見つめる青年
既に、お気づきの方もいるだろう、
彼は、
歴史に隠された財を見つけるハンターである。
穴の壁に打ち込んだ杭に足を掛け
軽々と地上に跳び上がると青年は近くに張っているテントへと行きスマホ片手に誰かへと連絡を
かける。
『やっほー、珍しいねぇ司から連絡があるなんて、おじいちゃん感激だわ~』
電話に出た相手の返答に若干頭が痛くなり
《榎谷司》
「何が〝感激だわ~〟だ、気色悪いからやめろ
ジジイ」
『うああん、そんなジジイだなんて
おじいちゃん超ショック~』
「切る」
『わぁァぁぁ、待て待て待て待て!?
冗談だ冗談!軽いジジイジョークじゃよ!
それで、要件は何じゃ?』
「最初からそうしろアホ爺…
あぁ…要件は、見つかったぞ例のアレ」
実の祖父に平然と毒を吐く司、彼はかなりの
毒舌家なのか…いや、大部分があの爺さんが
原因であるのは間違い無いのだろう。
そんな感じの電話先の
報告をする司、その司の報告にジジイの雰囲気が
変わる。
『本当か、司よ?』
「あぁ、一ヶ月山の中掘りまくって、
ようやく掘り当てた、
『石造りのアーチ…ふぅむ、何らかの
儀式用に作られたか、はたまた何か別の
目的の為の物なのか(ブツブツ』
電話越しに考察しだす祖父、
こうなった祖父は納得のいくまで自身の
世界から帰って来ないことを知っている司は
とりあえず、要件だけを伝えると電話を終わらせる。
即席チェアーに身体を預けながら
今回の仕事について司は思考する、ことの発端は
祖父の元に届けられた一つの書記、
祖父は有名な考古学者でありとある有名大学の
教授をしている、主に古代文字や壁画等を
研究している祖父はその書記を見て驚愕に
目を染め上げた。
〝謎の言語〟
既存するどの古代文字にも値しないその書記に
描かれたソレは、祖父を含めた考古学者を
唸らせた、そして一年が過ぎた頃に祖父から
俺の元へと連絡が掛かってきたのだ。
俺はフリーで世界を周りながら、
様々な財宝を発掘する宝掘師を仕事にしている、
祖父の話しによると俺の両親も宝掘師だった
そうだ、俺のガキの頃に亡くなったらしく
両親の顔を俺は知らねぇ。
そんな俺が宝掘師になったのには、特に特別な
理由なんてない、ただ単にこの時代に儲かるのが
宝掘師であり、なおかつ祖父の影響で
歴史について推理するのが好きであった、
ただそれだけの事だ。
とまぁ、高校出て速攻この道に入った俺だが
結構な財宝を見つけていてそれなりに
宝掘師としての知名度は高い、そんな俺を
知っているから祖父は
俺に連絡をよこしたんだろう。
依頼内容は単純であった、祖父達が書記を
なんとか解読した結果、このY県の場所が
分かったそうだそこから祖父達は現地にて
伝わる伝承何かを聞き回りこの山に行き着いた
ちなみに聞いた伝承と言うのが、
〝遥か昔 彼の地にて
天より天照大御神の使い顕り
そのもの龍の顎を唸らせながら
新天地への道をいざ開かん〟
要約すると、遥か昔にこの地に天照大御神の
使いの龍が現れ、新天地と呼ばれる場所への
扉を開いて民を移動させたらしい。
まぁ、その伝承に出てきた扉の場所ってのが
この山で、何かあると見た祖父は勘のいい
俺に依頼した、そんな感じである。
ふぅ~、と長く息を吐きながら立ち上がる
穴に雨が入って水没などをされては困る、
司は用意していた大型テントを張るために
穴の周りに杭を打ち込み始める。
今宵は良い満月となりそうだ……
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