プライス・レス
風見☆渚
第1話 気にしないで・・・
女子
涙が自然と流れてくる・・・
その涙は止まらない・・・
今日が、土砂降りの雨で良かった。
だって、こんなに濡れてたら、涙も化粧のひどさも雨のせいにして言い訳出来るから。
一人・・・たった一人雨の中・・・ただ立ち尽くしている。
誰に見られたって気にしない。
たくさんの、たくさんの雨で、涙とまとめて全部一緒にどこかへ流して。
思い出も一緒に流れていって・・・
激しく当たっていた雨が急に私を避けて地面に当たっている。
くしゃくしゃになった顔で空を見上げると、相変わらず土砂降りの雨は降っている。
ただ、私の頭の上にはみなれない真っ黒な傘があった。
傘の持ち手から、傘を持っている人に目線を動かすと、見たことある顔がそこにあった。
頭の中が真っ白な私には、すぐその状況が理解出来ていなかった。
その瞬間は数秒だったと思う。
見たことある顔は、私の体を抱きしめ、一緒にずぶ濡れになった。
その、雨の寒さで冷え切った私の体を温かくおおってくれた温もりに、また涙が止まらなくなった。
ひとしきり泣いて、泣いて、泣き疲れたところで、見知らぬ顔をなんとなく眺めた。
涙でぼんやりとしか見えていなかったけど、誰かはわかっていた。
こんな時に、気にされても迷惑なだけだから。
私の事はいいから・・・気にしないで。
なんでもないの・・・本当に・・・なんでもないの・・・
ただ、私が悪かっただけだから。
私のせいで、彼はどこかへ行ってしまった。
雨の中私を置いて、どこかへ行ってしまった。
追いかける事も出来ずに・・・
ただただ、雨に打たれることしか出来ない私。
本当に気にしないで・・・
こんな時に優しくされたら、もっと涙が流れて、体中の水分がなくなっちゃう。
体中の水分がなくなったら、少しは軽くなれるかな。
水分も思い出も、何もかもなくなってしまえばいいのに。
そうしたら、少しは楽になれるのかな。
気付くと、雨がやんでいた。
さっきまでの雨が嘘のように、空は晴れ晴れしている。
私の中の雨も、もう少ししたらやむのかな・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます