恋愛作法AtoZ

ヒズミ

第1話 Aの作法とBの作法

Aの発言

「苦悩や挫折、努力や自虐。必死に頑張って居る様や努力して汗している様、苦しみの中で活路を見出そうとしている様、全部誰にも見せたくないんだろう?カッコつけて、なんでもないよ平気平気、と云いたがっているみたいだ。つまり君は、人間らしいあれこれを見せたくないんだろう?そういった美学が君の中に存在していることは最初から判っていたよ」


Bの発言

「今苦しい、と云う宣言はさー、なんの意味も含まないんだよなー。苦しいからこんな助けが欲しいーとかー、苦しいからせめて君は良くやって居るよーって慰めてー、って云うことなら判りやすいんけどー、それはしたくないしさー。慰めてくれるのは物凄く有難いしー、申し訳無い気分になるんだよねー。でもさー、自分からそれを望む事はないんだよねー。慰めなんてさー、やっぱ僕には必要ないよー」


Aの発言

「君の場合はそう云う時に、"放っておく"のが正しい作法なんだな。じゃあなるべくは君の苦しさを感知出来ないように、俺は今より少し馬鹿になっておく必要があるんだな。想像力を捨てないと、放っておく事なんて到底出来そうもない」


Bの発言

「お前はさー、僕の事を好きでもなんでもないんだよー。お前はただー、身の回りで苦境に陥った誰かを見つけてー、観察するのが趣味なだけー、出来れば自分もー、その苦境に参加したいだけー。僕はたまたまお前の目にとまったけどー、それが僕でなかったとしてもー、きっと同じ行動と考えに至ったはずじゃねー?」


Aの発言

「そうだと感じるのなら、そうかもしれない、いや真実なんてどうとでも解釈出来るし感じたままが総てだ。出逢いはいつも、誤解と妄想を燃料にして少しずつ本当の相手を知るという悪戯めいた仕草に過ぎない。でもだからなんだと云うんだ?そうやって始まった関係性に価値がないという理由や理屈もまた論理性に欠いた主張だろう。論拠のない状態にこそ意味があると感じているんだ」


Bの発言

「嗚呼ー……。お前はさー、ロマンチスト過ぎるんだよなー」

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