第4話 ふたり



それから、ほら。。。この赤い方が憂ちゃんで、白い方が僕。。。。


憂は着物が苦しいのか、誰も見ていない桃の木の下の、この白い場所が息苦しいのか、あの。。。と思わずつぶやいた。


あの。。。


そう言ったものの、何を言おうとすればいいのか分からなくて、下を向いたその時、一矢に突然、引き寄せられた。


。。。!


横並びに座っていた憂の杖が、突然、からんと乾いた大きな音を立てて、赤い毛氈の腰掛けから落ちた。


あ。。。。。。


一矢は、そっと憂を離して、ごめんごめん、と笑った。


憂は、髪にさされた赤い花の髪飾りに思わず手を伸ばす。しゃらら、と銀色のひかりが赤い毛氈に反射した。それでも、それは一瞬で、空は薄暗い曇天だった。見上げると桃の花の枝が、自分達の真上にある。抱き寄せられて、真上を見た憂は、咄嗟にひらひらと舞い落ちる桃の花びらが綺麗。。。と、何も考えていなかった。気がつけば毛氈の上には、辿り着いた時にはなかったピンクのは花びらが舞い落ちていた。


髪飾りはゆるんではいたけれど、別に抜け落ちてはいない。髪が乱れても今日は自分では直せない、と思った憂はほっとした。綺麗にまとめた長い髪に下を向いて、もう一度そっと簪を差し込む。


そんなふうにしていると、すっかり大人びて見えるよ。。。


お兄さんの許可を得ないと、怒られちゃうね。。。。


一矢はそう言った。

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