第2話 戸惑い


憂は生まれつき足が悪かった。でも、杖を使えば歩けないことはない。長く歩くと疲れるから、あまり出歩かない憂は、抜けるように白い肌をしていた。まっすぐの長い黒髪は今日はきちんと、結ってもらって来た。簪が、きらきらとまるで音を立てるようにひかりを反射して、憂は、不思議に、前は。。。いつもその簪をつけて生活していたような錯覚を覚えた。


そんなはずはないのに。。。


憂は滅多に着物を着ない。足が悪いせいもあったかもしれない。


一矢の手のひらは意外にも固く、同じように色白で背の高い一矢は、兄と同じく二学年上で、憂にとっては雲の上のような人だった。


お兄様のお友達だから、こんなふうに目をかけてもらえるけれど。。。。


実のところ憂は、少し怖かった。もしこんな所を誰かに見られでもしたら。。。。


まあ、足が悪いことをいいことに、一矢様に手を引いてもらったりして。。。。なんて図々しい。


ひそひそと、囁きあう声が聞こえる気がした。憂は、縮み上がるような気持ちで、本当に歩けます、一人で。。。と歩調を合わせてゆっくり歩いてくれている一矢にそう言った。


『 遠慮しないでいいんだよ。。。山の庵は飛び石がたくさんあるのだから、転ぶかもしれない。。。ほら、そこが受付。。。。』


左手には大きな言わで組まれた池があった。

『 ほら。。。覗いてごらんよ。。。』


一矢は、人目も憚らず憂に寄り添い、それから、パンパン、と両手を叩いた。


するとすぐに。。。まるで着物のような大きな錦鯉が色とりどりの船のようにやって来た。


『 餌が貰えると思って来るんだよ。。。ふふ、魚でも賢いだろう? 』


一矢はそう言って、受付を示して、そのビーズのバッグは、お席入りする前にあそこに預けるんだよ、と言い、その人数にたじろぐ憂に、


『 心配しなくても、憂ちゃんと同じクラスの女の子達も招いてあるから。。。。』そう言った。


『 え。。。そうなんですか。。。。』


憂は思わずつぶやいた。そんな話は聞いていなかった。


丸山様が来れなくなって、きっと不安じゃないかと考えてね。。。。 


岡山様に、クラスの女子を誘ってあげて、と、無記名で招待券を何枚か渡しておいたから。。。岡山様は憂ちゃんの学年で、一番顔が広いらしいね。

彼女のお姉さんも僕と同じクラスなんですよ。それに最近、彼女達、学外の乗馬クラブにも入って来ましたよ。。。奇遇でしょう?だから。。。。

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