イブ
まーし
第1話
冬休みの大手旅行代理店の激安パックにダメ元で応募した俺は
300倍の倍率を掻い潜り
アメリカ西海岸、ラスベガス旅行6泊7日の旅を ホテル代、燃料サーチャージ、飛行機代、全込で
たった39800円で手に入れた
しかも今回は ペア旅行!
初の海外でしかも彼女との初クリスマスに旅行出来るなんて
今年1年頑張って働いた甲斐があった
大した貯蓄も無い俺から サプライズで海外旅行をプレゼントされるなんて
彼女も飛び上がって喜ぶに違いない
予想通り彼女は喜んでくれた
彼女も友達と台湾旅行に行った事があるだけで、 いつかは一緒にに海外旅行は行きたいねと予てから
話していたからだ
激安パックだけあって、 現地ではほぼ自由行動
たどたどしい英語と 自動翻訳辞書を頼りに なんとかレンタカーを借りる事が出来た
初日はイブ
ロサンゼルスでドライブをするというのが俺達のプランだった
旅行雑誌で見た風景を見つけに行こう と 意気揚々と出発したのだが
借りた車にはカーナビが付いていなかった
日が暮れる頃になると 完全に迷ってしまったことに気が付いた
ホテルやレンタカー会社に連絡を取りたいが
電話で英語は話せない
やがて電線からは靴がぶら下がり グラフィティだらけの壁が乱立するような場所に迷い込んでしまい
道端を歩く人たちは 一様にバンダナにバカでかいジャケット、ずり落ちてしまいそうなくらい腰パンをしている
アイフォンの地図アプリを使おうとしたが
海外で電波が入らない
Wi-Fiもこの界隈では使えないようだ
半泣きの彼女を宥め乍ら
とにかく来た道を戻ろう そういってクルマをUターンさせようとすると
バンバンバンバン 通行人の黒人にものすごい勢いで車を叩かれた
やばい
なにか英語でまくし立てているが 何を言っているかさっぱりわからない
映画で見た事がある
ギャングに違いない
あーこのままだと俺は撃たれ
彼女はレイプされるんだ
どうしよう どうしよう
通行人は 窓を開けろという仕草をしてくる
恐る恐る窓をあけると
チャイニーズ?? と聞いてくる
ジャパニーズ ジャパニーズ と 半泣きで答えると
通行人は大声で仲間を呼び始めた
いよいよ終わりだ
ジャパニーズなんちゃらと叫んでいる
向こうから目つきの悪い アジア系の男が走ってくる
彼女に目をやると 堅く目を瞑ってぶるぶると震えている
再びバンバンバンバンと車を叩かれた
アジア系の男が口を開いた
『日本からっすかー? ここ一通なんで
Uターンしたら捕まっちゃいますよ
あ、俺日本からの留学生っす ども
迷ってる感じでしたら、 ダウンタウンはあっちなんで、次の交差点まで行ってから回れば大丈夫っす
あ、こいつ 俺の友達で 一回この道でUターンして捕まってから
なんかいちいちみんなに親切に教えてあげてるんすよ へへ
あ、つか俺ダウンタウンまで行くんで乗せてもらえませんか?
ナビします』
拍子抜けすると同時にしょんべんを漏らしていることに気が付いた
こんな状態で人を乗せれるわけがない
『いや、あの、大丈夫です 』
クルマを急発信させ 次の交差点へ急ぐ
彼女は言った
『あんた最低』
イブ まーし @masism69
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