魔王の孫の変身ヒーロー生活

ムネミツ

人間界デビュー1週間目編

第1話 魔界の皇太子、ヒーロー学校へ進学

正義のヒーローとヴィランが戦いを繰り広げる現代世界。

そんな世界でも季節は巡り春が来れば入学式のシーズン。

瀬戸内海に浮かぶ小さな島、桃ノももものしま


そんな田舎の住宅街にある、イギリス貴族のタウンハウス風の洋館。


洋館の扉が開いて、美人だが紫色の肌に頭の横に螺子の刺さった長身のメイド

が出てくる。


二人目は、狼の耳と尻尾を生やした赤毛の年若い白人女性のメイド。


三人目は緑の髪に耳の部分が、魚のひれになっている褐色眼鏡美少女なメイド。


計、三人の胸の大きい人外である美女メイドさん達が出てきて扉の近くに整列する。

「行ってらっしゃいませ、殿下♪」

とメイドさん達が声を出したところで最後に、一人の詰襟学生服を着た少年が

開いた洋館の扉から出てきた。


彼の名は、進太郎しんたろう赤星あかぼし・ヘルグリム。


「・・・・・・殿下って言うな、行ってきます。」


進太郎は、外見は身長165cmと小柄だが筋肉で引き締まった体つきに

温和な顔立ちをしたフツメンな日本人の少年である。


だが、彼は正確には日系魔界人にっけいまかいじんと呼ばれる悪魔などの

魔族と人間のハーフで在日外国人扱いである。


宇宙人や異世界の存在は現代では、外国人として扱われている。

しかも、ただのハーフではなく片親は魔王と呼ばれる王族クラスの悪魔。


彼の場合は、故郷の魔界は皇帝が治める帝国で身分は皇太子である。


何故彼はそんな生まれで、日本にいるのか?

それは、彼の父が日本人で戦隊ヒーローのレッド。

母は、父親と敵対していた魔界の悪の組織、ヘルグリム帝国

の次期首領にして皇女と言う複雑な出自による。


激しい戦いの末、父と母が愛し合い自国の政権を勝ち取った事でヘルグリム帝国

と日本ヒーロー政府は和解した。


そして、ヘルグリム帝国は日本との国交と同盟と各種条約を結ぶ。

その時の取り決め中で、大使館の場所が赤星家のある桃ノ島なのだ。


進太郎は、魔界で生まれ育った為に国籍はヘルグリム帝国である。


そのような事情で、ヘルグリム帝国は、悪の組織から

正義のヒーロー組織へと生まれ変わった。


皇族であり、構成員である進太郎にはヒーローの教育を受ける為。


桃ノ島にあるヒーローの養成機関である、国立ヒーロー学園高等部桃ノ島分校へ

この春から進学することが決まった。


住宅街を走り、桜並木の中を学生達と共に学園の校門へと行く進太郎。


周りには自分と同じ新入生がある者は空を飛び、又ある者は電気を放電しながら

疾走して赤レンガ造りの校門をくぐり体育館へと進んでいく。

他にも体をゲル状にして流れるように学校へと入っていく生徒も居た。


進太郎も含めて新入生達が全員、集合するとスーツを着たマッチョなスキンヘッドの黒人男性が舞台に上がり、マイクに向けて口を開く。

「新入生諸君、私がこの分校の校長サミュエル・ブレイブだ。」

ブレイブ校長が語りだす。

「この分校の歴史は君たちと共に始まる、ヒーローはまず第一にハートだ。」

校長が指折り数えて喋る。

「第二に訓練、訓練なくしてヒーローは生まれない。以上だ。」

最後に校長が心臓部に握り拳を当て締めくくる。


校長のスピーチの後、教師に促されそれぞれの教室へと皆で向かう。


進太郎の教室は、一年A組だった。

教室は一クラス二十人、席は教卓の前から二列目。

とりあえず自分の席につく。


隣の席を見ると、たれ目でおっとりした印象の胸の大きい金髪の美少女がいた。

挨拶をしようと口を開きかけた所に少女が掌を突き出して

「あなた、何か悪い物に取り憑かれていますわね?今払って差し上げます!!」

と言って掌からカメラのフラッシュに似た光を放つ!!


「あばぁっ!!」

少女から放たれた光を受けた進太郎は、その衝撃で倒れていく。


「危ねえっ!!」

赤い髪をした元気そうな少年が、進太郎を受け止める。


受け止められた進太郎は、鼻血をたらして気を失っていた。

「あんた何してんだよ!!こいつ、あのヘルグリムの王子だよ半分悪魔のっ!!」

少年が少女を叱責する。


叱責された少女は一瞬、唖然となるが半分悪魔と聞いて

「・・・・・・え?」

と、間をおいて状況を理解したのか

「ごめんなさい、てっきり悪霊に憑依されてるのかと思って!!」

と謝りだす。


少女が放ったのは、神聖魔法。


神様の聖なる力で回復したり攻撃したりする、ファンタジーでは神官が使う力。


魔界の住人には凶悪な殺傷兵器、普通の人間には神聖魔法はありがたい物。


だが、悪魔とのハーフである進太郎には効果が半減するもダメージとなる。


「とりあえず、俺はこいつを保健室へ連れて行くから。」

赤毛の少年に背負われて、進太郎は教室から出ることになった。


赤毛の少年が廊下を走り保健室のドアを引く。

「すみません、友達が神聖魔法しんせいまほうを受けて怪我しましたので治療をお願いします。」

赤毛の少年が白衣を着た美形の眼鏡男子な保険医に叫ぶ。


「・・・・・・わかった、君は彼をベッドに寝かせてくれあとは私が見よう。」

保険医に従い少年は進太郎をベッドへと寝かす。


「それじゃ、俺は失礼します。」

赤毛の少年は、そう言って慌しく保健室を出て行った。


「・・・・・・やれやれ、初仕事が友人の息子を診る事になるとはな。」

気絶したままの進太郎を見下ろし、保険医がつぶやく。


「・・・・・・骨折などはなく、鼻血が出ただけか人間の血のおかげだな。」

アルコールを湿らせた綿で進太郎の顔を拭き、寝かせる事にする。


「後は保護者に連絡を入れて迎えに来てもらうか。」

保険医の呟きも聞こえず、進太郎の高校生活初日は気絶により幕を閉じた。






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