姿かたちなき相手との聖戦

篁五郎

第1話「あの時」

 あの時、僕はPCのモニタの前でうなだれた。悪夢の民政党政権が誕生してしまったあの日だ。民政党は外国に日本を売り渡し日本を破壊する売国政党、そんな政党がよりによってマスコミの”政権交代”というキャンペーンで選挙に勝つなどあり得ない。

「取り戻すんだ!絶対に取り戻して日本を守るんだ。」僕はあの時そう決意したんだ。その時から僕は何も変わっていない。しかし僕は今PCのモニタの前にはいない。いや、いることができない。なんでそうなったんだろう?僕は日本を守るためにやってきていただけなんだ。間違えてはいない。絶対に間違えていない。なのになぜPCのモニタではなくこんな誰にも会えない場所にいなくてはいけないんだろう?


 あの頃の僕は民政党なんて売国政党が日本を売り渡しをしないか一生懸命監視してた。インターネットでアップされる国会の質疑を仕事から帰ると飯を食いながら見ていた。民政党の閣僚がおかしなことを答弁するとすぐに民自党の国会議員が鋭く返している姿に拍手をしていたんだ。特に首相だった鳩村由紀彦の答弁は酷かった。

「国というものがなんなのかわからない」とか「集団的自衛権はみんなで守る」とか言っちゃってるんだもん。まともに答えられていない。

 でも、マスコミは報道しなかった。全くと言ってくらい報道しなかった。だって自分たちが応援して作り上げた政権だもん。過ちをマスコミが認めるわけないんだ。マスコミも売国なんだよ。自分たちの既得権を守るのにいっぱいで日本が売国政党によって売り渡されてもいいんだ。あいつらも売国奴なんだ。売国奴だらけになった日本を守らないと日本は外国人、いやシナ朝鮮の巣窟になって日本は日本じゃなくなっちゃう。


 そして僕は仕事はそこそこにしてインターネットに上がってくる情報を集め始めた。それは首相の鳩村の脱税疑惑。これだってマスコミはおざなりでしてか報道しなかった。脱税しておいて首相だなんて変だろ?だから僕は鳩村の脱税の証拠がインターネットにないか探してみたんだ。そうした出てきた出てきた。鳩村はママからもらった何十億ってお小遣いを政治資金として流用してたんだ。しかも個人献金にして死んだ人の名前まで使っていてさ。”個人献金ならぬ故人献金”なんてあったけどホントにそうだよ!あいつは絶対に今すぐ辞任しないといけなかったんだ!どうして脱税をした奴が総理大臣なんだよ。おかしいだろ?

 僕はすぐにTwitterでその事を拡散することにした。マスコミが報道しないから僕がやった。今はインターネットで真実を知ることができるんだ。だからマスコミがやらなかったから僕がやった。

効果はすぐにあったよ。たくさんリツイートされて「知らなかった」とたくさん返信ももらった。僕は正しい情報を拡散していけばたくさんの人に届くってわかったんだ。だからインターネットで戦うことを決めたんだ。

正しい情報はインターネットにある。マスコミはウソばかり流すクソだ。クソなんてなくなればいいんだ。


 たくさんの反応をもらって僕は自分のやっていることはいい事なんだって思ったんだ。だってこの時の世の中はクソだらけ。クソみたいな奴が国を動かしてクソみたいなマスコミが歪んだ情報を流して、シナ朝鮮人がでかい顔をして歩いて日本から全てを奪おうとしているんだぜ。


 でも、周りの奴らは自虐史観教育のおかげで「平和が一番」とか「隣の国と仲良くしよう」とか言ってた。シナ朝鮮人と仲良くするなんて無理だよ!あいつらが日本の自虐史観を利用して日本で好き放題してるんだ!シナ朝鮮人は民政党の議員に取り入ってシナ朝鮮人のための日本にしようとしてるんだぜ?民政党はシナ朝鮮人のために政権をとってシナ朝鮮人のための国にしようとしてるんだ。

 それをマスコミが糾弾しないのはどうしてか?決まってるだろ!マスコミもシナ朝鮮人に汚染されてるんだよ。マスコミにはザイニチ枠ってのがあるんだよ。あるキー局がザイニチに関する番組を放送したらザイニチの連中が「差別だ!」って抗議をしてきたんだって、それにビビってザイニチ枠ってのを作って日本人の枠を削ってザイニチを採用するようになってザイニチが今や幅を利かせてるんだぜ。

なんでお前が知ってるのか?インターネットに内部情報として流してあったんだよ。「ネットDE真実」だよ。こんなのマスコミは流せないだろ?インターネットだから流せたんだぜ。


だからマスコミなんて信用できない。みんなそれを知らないんだ。だから僕がインターネットで拡散をして戦うんだ。戦わないといけない。だって鳩村の脱税を知らない人ばかりだったんだ。知れば民政党が売国政党で売国政党にはシナ朝鮮人が入り込んでてシナ朝鮮人が日本を奪おうとしてるんだ。

だったら日本を守るために日本人が立ち上がらないといけないって思うのが普通だろ?だから僕が立ち上がったんだ。


それがキッカケだった。それのどこがおかしいんだ?僕は間違えてないんだ。僕は間違えてないんだ。

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