第6話ローラIII
【サイド・ローラ】
セバスチャンの顔色が冴えない。
昼間のあれかなあって思うけど、さして興味もないし、お互い仕事があるわけだしさ。放っておいたわけよ。
そしたら夕方にクラリスが来店した。セバスチャンの店に。
それだけで決定的に……決定的だった。
少女みたいに髪を垂らしたクラリス。なんで名前で呼ぶかって? セバスチャンがそうするからよ。そのうつむいた顔を見て、彼はなぜか洗濯物を自分が運ぶって、言ったんだ。
嫌な予感がした。
なーんせ、クラリスは私らとぜーんぜん、違って見えるからさあ。
上品だし、いつも着飾っているし、洋服持ちだし? セバスチャンには上客なわけだし、ま、常連さんよね。
だけど、荷物は荷物。彼女は自分で運べないものは持ち込まないし、今までずっとそうだった。
だけど、そのときだけは違ってた。
うつむきがちにぼそぼそと話して、細い肩をすぼめて、まるでみすぼらしかった。だから私は彼の反応について、なんにも言わなかった。客と店員って言っても、人と人なわけだし。そういうこともあるよねって感じでさ。
それがなによ?
彼、なんで帰ってこないの。今夜。
私のごちそうは? なんにもないの?
ふざけるな! どれだけお腹すかせてると思ってんの? みじめ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます