バカと天才は紙一重

南かりょう

第0問

「……雄二、挙式はどこがいい?」

「翔子、色々と突っ込みたいが、まず最初に言っておく。校則で恋愛は禁止だ」

「……これはただのアンケート」

「そう来たか。ったく、最近おまえも頭を使ってきたな」

「……どこがいい? アンケート途中経過だと、暫定一位は……牢獄」

「待て!! 誰にアンケートを取ったら、牢獄が一位になるんだ!? さては、明久の仕業か!?」

「……ううん、言い間違えただけ。一位はハワイ」

「ハワイを、どう言い間違えたら牢獄になるんだよ!」

「……そんなことよりも、私は挙式をするなら牢ご……じゃなくてハワイがいい」

「本音が漏れてたぞ!? 俺を牢獄に入れて、どうするつもりだ!?」

「……もちろん、浮気した罰」

「ん? ちょっと待て。浮気どころか、俺たちは付き合ってすらないだろ。それから再三言うが、校則で恋愛禁止だからな」

「……なら、昨日の二年生女子との関係は?」

「どこから見てやがった」

「……浮気はダメ」

「あれは違う! 後輩の相談に乗ってただけだ!」

「……恋愛相談?」

「違うから、その握りしめた拳を解け。……チョキはもっと駄目だ!」

「……だったら何の相談?」

「ったく、試召戦争のだ。今日から二年生が始めるらしい」

「……嘘つきは、新婚生活の始まり」

「それを言うなら泥棒だろうが!」

「……雄二は私のハートを盗んでいった大泥棒」

「上手いこと言って、俺に手錠をかけようとするな。ほら、手錠を渡せ」

「……はい」

「なんだ? やけに素直だな。何か良いことでもあったのか?」

「……ううん。今日は――縄の気分だから」

「縄もよこせ。いますぐだ」

「……せっかく花嫁修業してきたのに」

「縄を使った花嫁修業なんぞあってたまるか。それと『やれやれ……これだから雄二は』みたいな仕草をやめろ。まるでおまえが譲歩してるみたいで腹が立つ」

「……雄二、仕方ないから信じてあげる。その代わり、式場はハワイがいい」

「あー、そうかい。俺は北海道が良いな」

「……なら北海道にする」

「…………」

「……?」

「………………ハワイの方がいいかもな」

「……雄二、聞こえない。牢獄がいいの?」

「なんでもねぇよ」

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