黒谷日記
詠み人知らず
前書
序文
この時代というのはとかく生きやすいものだ。
嘘だと思うのなら昔の人々を見てみるが良い。
仮名日記を書きたいが為に性別を詐称した過去を暴露されたり、仕様もない痴話喧嘩を後世の人々の目に晒されたりした挙げ句、写本と称して勝手に内容を改変され、はたまた仮託と称して勝手に名前を使われる。
やっとの思いで名を残せば、睡眠学習に励む生徒達には九分九厘の努力と一厘の才能の結晶をつまらないと一蹴され、研究者を名乗る偏屈者には誤字の一つに至るまでを調べ尽くされる。
なんたる仕打ち、なんたる暴挙。
この現実を見ても昔は良かったなどとうわ言を垂れ流すことが出来ようか。
覚めよ諸君。
今こそ、万物の霊長たる我々が、史上最高の時代を最大限に謳歌すべき時である。
此は、蒙昧なる人間にささやかな光を啓かんとする或勇気ある若人の日記であり、亦た或大馬鹿者の罪状の記録である。
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