彼の事情

第1話

「ただいま~…」


チャイムの音と機嫌の良い大きな声で、私は目を覚ました。




「おかえり~!」


ママが出迎える声がした。




ふと柱の時計を見ると、もう二時を回ってた。

深夜だけど、その日のうちに帰ってきたのは、きっとママを気遣ってのことだろう。

いや、気遣ってるわけじゃなくて、愛してるから?



しばらくすると、階段を昇ってくる足音がした。




「望結、起きてる?」


ママの声に、私はゆっくりと身体を起した。




「……何?」


「瑠威がケーキ買って来てくれたんだけど、一緒にどう?」


「ママ…もう二時過ぎてるんだよ…」


「え?でも、明日はお休みでしょう?」


「ママ…そういう問題じゃないから…」


私は、不機嫌な顔で扉を閉めた。

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