第30話 泣き虫

子どもの頃はいじめられっ子で泣いてばかりいました。

そしたらある時、近所のお姉ちゃんがサーと現れて


「弱い者いじめしてんじゃない!」


男の子たちを投げ飛ばしてしまうんです。

ついでに僕も投げられました。


「男のくせにメソメソすんな!」て。


その子はけっこう有名な柔道少女だったんです。

本当に強かった。

彼女に憧れて柔道を始めた子は、僕以外にも何人かいましたしね。


でも彼女、中学に上がるとすっぱり止めちゃったんですよ、柔道。

家出したり、補導されたり。

ロクでもない男ばかり好きになって、笑うことも少なくなって。

人目のない所でいつも泣いているんです。


こっちまで泣きたくなりましたよ。

何もできない無力な自分が悔しくて。

僕だったら絶対に泣かせないのに!

そう思ったこともありました。


彼女は今も泣いてばかりいます。

僕が大会で優勝するたびに、そりゃあわんわんと。



そんなわけで、オリンピックでもウチの嫁さんを泣かせてやりますからね!

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