第23話 リセマラ

「リセットする」

そう唱えると俺の魂は赤子の体からするりと抜けていく。


どうしてこんなことができるのか、それは俺にも分からない。

だが俺はこの能力を使って、今度こそ幸せを掴んでみせる。


前の人生で痛感したのだが、人の幸不幸は生まれた瞬間にほぼ決まる。

裕福な家庭にさえ生まれれば良質な教育を受けられる。

金がないせいで才能の芽を潰すこともないし、いざとなったらコネで就職もできる。

だから俺は裕福そうな親に当たるまで何度も何度も生まれ直した。

そしてようやく引き当てた。


だが父母は友人の借金を背負ってあっさり破産してしまった。

まあ生活は一転して苦しくなったが、俺はこの人生をけっこう気に入っていた。

善人で働き者の父と、優しくていつも明るい母。

だからこの父母を助けるため俺は進学せずに働いた。

恋をして結婚もした。


俺は幸せだった。

けして裕福ではないが世界一の幸せ者だった。



「リセットする」


赤ん坊が俺を見てそう呟くまでは。

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