省長代理

「というわけでなんだが、その本を貸そう。月曜日まで、しっかり読みこんできてくれ」

「月……? 今読めばいいんじゃないでしょうか?」

「それは謎には関係ないものだからね、一応魔法省の業務規定違反になる。ま、私の私物だ。ちゃんと読んでくるんだよ」

「ちゃんと? なにかこの本あるんですか?」


 不安そうな顔でチナミと本を交互に見るスクナ。そんなわけはないと笑い飛ばしながら、チナミはスクナの手元に収まっている本を華奢な指で示す。


「先ほど言った武闘会、実は省長代理として招かれていてね」

「え……すごいですね。まさか……チナミ班長戦うんですか!?」

「いや、それこそまさかだろう。あくまで代理、来賓扱いだよ」


 まさかの戦うのか発言にぎょっと目をむくチナミ。招かれていると言った瞬間から妙に赤く青くなっているかと思えば、とんだ誤解をしていたらしい。考えの飛躍に慄いているチナミに、スクナは耳まで赤くなってあわてて胸の前で両手を振った。


「いえ、だって。チナミ班長お強そうだから……そうかなって!」

「謎の力を借りればどこまでも強くなれるとは思うが。私自身は護身術で5、6人ほど沈められるくらいさ。強くもないよ」

「強いですよ!?」


 謎の力を借りると強いだろうと思っての発言だったが、まさかチナミ自身も十分強かったという事実にがっくりと肩を落とすスクナ。彼も男の子である。

 強いものにはあこがれるが、それが年齢はともかくとして見た目は自分よりも幼い少女だと思うと複雑なものがある。


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