メリーさんのストーカーさん

その1 伝説の発生

『都市伝説』

それは現代の社会の中に存在する曖昧な噂話だ。

どこから広まったのかは定かではないがそれは様々な媒体で社会へ浸透して行く。

例えばテレビや雑誌などはもちろんの事、 “電波”に乗って広まっていくもの。

例えば人から人へ伝言ゲームのように広まっていくもの。

例えばネット掲示板やSNSを通じて広まっていくもの。

どれもこれも情報の出発点は不確かではあるがだからこそ“伝説”となる。 別に伝説が真実である必要はないのだ。

そしてその“伝説”は時として魂を得ることがある。

日本には言魂というものがある。

言葉には不思議な力があり、言葉に魂や霊的なものが宿ったり、 言ったことが現実となると古くから信じられてきた。

現代にそれを心から信じるものは数少ないだろうが……。

だが、 言魂を意識してようがしてなかろうが、 言葉には知らず知らずのうちに“願い”が込められている。

１人の言葉では大した意味はない。

しかし同じ願いのこもった言葉がいくつも重なれば、話は変わってくる。

誰かが、 何かの目的でその小さな“存在”を流布したとしよう。

その時点では噂話ですらない単なる作り話であったそれは、 連鎖的に、 爆発的に、 好奇的に広まり、 その間に話の骨格が変わったり全く別のものになったりしながら“人の言葉”で語り継がれ、伝わった。

その存在はある意味で人が作り出した願われたものであり、 伝わる中で大きな存在として成長したそれは“願い”ではなく“現実”のものとなる。

……そう、つまり、 『都市伝説』は伝説が出来上がった後に “発生”するのだ。