第112話 昔の恋人との再会が持つ副作用
「変わってないね」
「ミキこそ変わってないね。むしろきれいになったよ」
そんな言葉が交わせるのは、大人の醍醐味の1つかもしれない。
昔の恋人と数年ぶりの再会。それはきっと若い頃にはなかなか経験できないことで。
「仕事は一緒のまま?」
「あの友達はどうなった?」
「あの家は引越したの?」
「最近、何してるの?」
空いた期間を埋める質問だけでもあっという間に時間は過ぎる。それはまるで、昔、読んでいたシリーズものの漫画の続きを聞いているような楽しさがあって。
「やりたいって言ってた部署に異動できたんだね」
「ああ、あの子、結局、夢を諦めたんだ」
「ついに舞踊始めたんだ」
と、あの頃の小さな約束の行く末を知ることができる。
ただ、この甘美な時間には副作用がある。きれいなバラには棘があるように楽しい時間には、反作用もついてくる。
それは
「もし、あのまま別れず関係を続けていたら、どうなっていたのか」
という想像を避けられないということだ。
あなたは、よりきれいになった恋人の幸せそうな顔を見て、今の彼女の隣にいる人に嫉妬するだろう。あるいは、あなたは、当時は頼りげがなかった彼氏が夢を叶えた姿を眩しく見るだろう。
あなたは再会の帰宅の時に、いつもより遠回りして家に帰るだろう。1つ前の駅で。
そして、帰り道にその日の再会を思い返し、自分が歩まなかった道を思い返すのだ。その副作用は、なかなか強烈で。
その覚悟がある人だけが、その甘美な再会を楽しめるのだろう。
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