第64話 真冬のタクシー

寒さに負けてタクシーに乗る。タクシーは渋滞に捕まり、のろのろと走る。


社内で今日中に作らないといけない資料の構成案を考える。窓の外では木枯らしがふいている。今年の冬は寒い、とは本当なのかもしれない。


考え事をして、気がつけば渋滞が過ぎていて。車は並木通りを走って会社に向かう。ただもう5分はかかるだろう。


そして、ふと気づく。運転手さんが話しかけてこなかったことに。


つい好奇心がでてきて聞いてしまう。


- お客さんがはなしかけて欲しい人か、話しかけてほしくない人かってわかるんですか?

- そりゃわかりますよ

- どうやって?

- 話しかけて欲しい人は、自分から話をしてきます。「今日は暑いですね」とか。話しかけてほしくない人は自分からは話をしないです。


なるほどな、と思った。


なんだか物事を複雑に考えていたのかもしれない。資料の構成ももう少し考えそうかな、と思いながらタクシーを降りた。

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