第4話 春の色

春の色は国によって違う。日本はピンクだろう。それは桜のピンクによって生み出されている共通想起だ。


アラビア半島では、春に砂嵐が来るため、その砂嵐のオレンジ色が春のイメージとなる。中国では五行の青色が春に対応しているので青と言う。「青春」という漢字を思い返すと、まさに青い春と書くのである。欧州では春を訪れる花としてミモザが愛でられ、その黄色が春のイメージを想起させる。


しかし、いつか日本では春の色は白になるだろう。日本人全員が花粉症になりマスクをするようになる頃には。


その後、マスクを貫く花粉の奮起する粉塵たちが日本を覆い、日本は黄色となるだろう。そして、花粉を焼く花粉症の漢たちの業火が日本の春を覆い、いつしか春は炎の赤となるだろう。

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