2-13
琴子は、淡々とプロセスを進めている最中だった。
止血の処理を取り去り、露わになった藤の肩口に手を添える。
普段の琴子だったら直視など到底できない有様だったが、今の琴子はそういった感情をどこかに置き忘れてきたかのようだった
筋肉の繊維を、神経を、骨を、細胞を確認した。
どこをどう繋ぎ、足りないものは何から生成すれば良いのか、琴子には文字通り手に取るようにわかっていた。
傷ついた細胞、神経、筋繊維を、彼の健康な場所からからわずかな欠片を抽出したもので治し、切り離された左腕を繋いでいく。
大量に流れ出てしまった血液の補填には、自らの血を使った。
拒否反応が出ないように自分と藤の血液を中和させ、増やし、全身に血液を巡らせた。
額から汗が滴り落ちる。
極限まで高めた集中力の全てを、『藤を死なせない』という意思に費やしていた。
彼の顔に血色が戻り、呼吸が安定したことを確認して、ようやく琴子は藤の身体から手を離した。
大きく息をつくと同時に、自分の体が沈んでいくのを感じた。
誰かが支えてくれている。
(腕……ちゃんと動くかな……)
そうぼんやりと思いながら琴子はそっと目を閉じ、そして何もわからなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます