魅力的な「悪役」について

ベネ・水代

第1話 悪役の6分類

 ここではファンタジーものや戦記ものなど、「何かを倒す」ことが重要となる物語での悪役を考察します(現代社会ものや恋愛ものにも、多少は応用できるかもしれません)。



 以前、ツイッターで興味深いつぶやきを見かけました。


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 ふと魅力的な悪役について考えていたんですが、悪役でも


  ①魔王など突き抜けた悪

  ②悲しい過去を持つ同情できる悪

  ③主義があり、それが主人公側と対立する悪(敵国など)

  ④価値観が全く違う悪(狂気タイプ)

  ⑤力を持ってしまった小悪党

  ⑥もはや災厄・災害


 程度には分けられると思ったんですが、皆さんはどれがお好きですか?

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 試しにゲームや小説に登場する悪役を思い浮かべてみると、だいたいどれか1つ、または2つくらいの組み合わせに当てはまりました。かなり的を射た分類だなあと思います。


 王道的なラスボスに相応しいのは①「魔王など突き抜けた悪」や、⑥「もはや災厄・災害」でしょうね。倒すことでカタルシスを得られるので、読後感をすっきりさせることができます。


 また、ぶっ飛んだ悪役を登場させれば他の悪役の理性や美学が際立ちますから、④「価値観が全く違う悪(狂気タイプ)」や⑤「力を持ってしまった小悪党」も一人くらい配置してみると面白いですね。裏を返せば、ぶっ飛んでいない悪役には理性や美学があって良いし、悪役同士で主義主張がぶつかり合って葛藤を抱えていても良いわけです。


 ※葛藤については、後日考察したいと思います。



 私が個人的に好きな悪役は②「悲しい過去を持つ同情できる悪」、または③「主義があり、それが主人公側と対立する悪(敵国など)」です。こういう相手はラスボスよりも、主人公のライバル役に設定すると面白そうです。中盤~終盤で寝返ったり共闘する展開にすれば、とてもドラマチックになります。


 ラスボス打倒後に、彼らがどうするのかも極めて重要です。分かりあい、意気投合するのか。互いを認めながら、なおも戦うのか。その勝敗や生死にどんな意味を持たせるのか。あるいは互いに背を向け、それぞれの道を行くのか。


 対立しあう主人公クラスの二人が、巨悪を倒した後でゆっくりと向き合う。

 それぞれの手には武器。

 仲間たちの見守る中で、彼らはどんな言葉を交わすのか――


 ことによってはラスボス戦よりも息を呑む展開となります。これこそが物語の最重要テーマになるかもしれません。



 ここまで悪役を6種類に分類してみましたが、それぞれをラスボスに据えた場合に、物語はどう着地するでしょうか。次回は類型ごとの着地点を考察してみます。

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