第7話 勇者一行の戦闘能力

 なんてことで時間をロスしたからかまだ村が見えないが夕方が近づいてる。まずいなあ。




「うわ!!!」

 魔物だ。間違いない。俺は魔物だと全身で言っている。

 俺の想像していた動物の形態をってのは合っていた。が、イメージとは程遠い。まずは動物だが、ワニ? だろう。くちばしのように口が出ている。が、その口から剥き出しになっている牙は絵で書くようなかわいいもんじゃない。もう降参ですと言いたくなる恐ろしい牙だ。そして体は爬虫類だろう的な鱗が全身を覆っている。

 それが二足歩行で立っている。手も十分な武器になる大きな爪が4本出ているし、なにより疑うことができないその身体から湧き立つ紫の煙。なんで出てるのかはさっぱりわからないがその禍々しさは間違いなく魔物そのものだ。

 それが目を充血させてこちらに向かって来ている。目、紫に血走ってるけど。 これは逃げるのは無理だな。覚悟を決め剣を抜く。他の奴らが手を出す前にやらないと。あいつは今までの奴らとは話が違う。怪我は間違いない。


「うりゃー!」


 ガキン!!


 嘘だろ?

 俺が振り下ろした剣が魔物の肩にがっちりめり込んでしまった。ヤバイ抜けない。目の前にはあの牙があるくちばしにさらには、肩を抑えてない方の爪もある。やられる!


 ボー!

「Woooo!」

 獣の叫び声がこだまする。

 ん? 焦げ臭い。ニタがもう片方の肩を焼いている。もちろん魔法で、指から出してる炎だ。

 だけど魔物はまだ俺を睨んでる。だよね。



 ガキン!!



 俺の背中に誰かいる。見るとツバキが刀で魔物の爪を抑えている。



 ああ、だけどこれで終わりだ。これ以上戦闘能力はない。

 仕方ない。俺は剣を左手に持ち替え背中のつるぎを魔物目がけて振り下ろした。

 痛い。背中に痛みが走る。左手に持ち替えたんで力が弱くなった為に背中を魔物に爪で切られた。

 が、魔物は真っ二つに切れている。ふう。さすが勇者のつるぎだ。名前だけのことはある。普通の剣では全く歯が立たない魔物の皮膚をお構いなしに真っ二つにした。魔物が紫の液体を流している眺めは見るのもエグいが、なんとかなってよかった。

「トオル、怪我を治すから、じっとしてて」

 もちろんジュジュである。背中の焼けるような痛みが徐々に治まっていく。フェアリーの卵が狙われるわけだ。すごい力だ。どんどん痛みがなくなっていく。




「トオル大丈夫?」

 涙目のリンがそばに来る。

「私何も出来なくて」

 ああ、言ってるそばから涙を流すリン。

「リン、大丈夫だって。気にするな。魔物には勇者のつるぎしか効かないみたいだしな! 大丈夫だから」

 本当に傷の痛みは消えていってる。

「ジュジュありがとう。もう大丈夫だよ」

「いいえ。魔物の傷は毒がある場合があるんです。ちゃんと浄化しとかないと」

 え? 魔物ってかなり恐ろしいな。フェアリーいなきゃ危ないじゃないか。




 傷の浄化が終わりようやくスタートできる。また魔物に会うのは勘弁したい。急ぎ足で村へと向かう。

 みんなも同じか無言で進む。魔物って恐ろしいなあ。これで魔王の想像がまた一段と……無理だろ! 誰か無理だって言ってくれ!



 *



 村につきすぐに宿で休む。魔王一匹でこれだ。この先どうなるやら。

 ニタはしきりにツバキの話。よっぽど気に入ってるんだな。そういえばツバキはしらっとニタの言葉をかわしてたな。一方通行もここまでくると哀れに思うが、ニタは気にしてないようだ。もうツバキの話はわかった。寝よう。今日はもう疲れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る