第2話 晩餐

魔王「コックー。おーい、コック長ー」


コック長「はいはい。お呼びでしょうか、魔王さま」


魔王「今夜の夕食にはワサビを使ってくれたまえ」


コック長「わ、ワサビですか!? しかし魔王さま、この間うっかりワサビを食べて涙目に…」


魔王「やめろー! そ、そんなこと思い出すな!」


コック長「ですが…」


魔王「とにかく! ボクは今夜、苦手を克服するんだ! ワサビ如きに涙目をしているようでは魔王としての威厳が保てない!」


コック長「……。決意はお堅いようですね…。分かりました。今宵の晩餐、このコック長、腕によりを掛けて包丁を振るわせていただきます」


魔王「ああ。よろしく頼んだよ」フンス







魔王「こ、この料理は…?」


コック長「『サシミ』というワノクニの伝統料理でございます。新鮮な魚を薄く捌き、ショウユとワサビを付けて食べるのです」


魔王「ふうん。魚か」


コック長「食材の鮮度と味は私が保証します。さあ魔王さま、どうぞお口汚しを」


魔王「う、うん。いただきます」


コック長「…………」


魔王「……ま、ままよっ」パク


魔王「!」


コック長「いかがですか……?」


魔王「美味しい! 美味しいよこれ!」


コック長「なんと! それは本当ですか!」


魔王「うん! あはは。ボク、なんでこんなのにビビってたんだろ。すっごく美味しいのに!」


コック長「それは何よりでございます。ステーキなどの肉料理に添えても、油がさっぱりしてとても合うそうです」


魔王「あ、それ美味しそう!また今度作ってよ!」


コック長「はい、喜んで」


魔王「楽しみだなー。あははっ」


コック長「(魔法でワサビの辛味を消したことは、10年後くらいに打ち明けるとしますか…)」

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