第28話 遊園地は危険地帯です

遊園地に隣接されている駅で、電車から降り改札をくぐるとそこは、遊園地のゲート前だった。

チケットを購入しようと列に並ぼうとするが、梶本が呼び止めた。


「あっここはウチの系列だから、私の顔パスで通れるから払わなくていいから」


そう、梶本に言われ行列ができているゲートではなく、ゲートから少し離れたVIP専用出入口から入場した。


すっごい!金持ちってなんなの?


その後、遊園地のウェルカムゾーンに歩いていくと、遊園地お約束の中の人が操っている様々なかわいらしキャラがお出迎えしてくれた。田中さんは目を細めて写真を撮りまくって喜んでいた。


「うわ~久しぶりだあ、なんかうれしい!ねえどれからにする?やっぱりこの前TVで紹介された宙吊り海底コースターにする?」

 田中さんは今にも行列の方に走り出しそうなくらい興奮していた。

 僕はそんなの乗ったら後が怖かったので、少し抵抗してみた。

「でもさ、いきなり宙吊り海底コースターは怖すぎだから、メリーさんゴーランドとか?」


「ええ~?そんなのつまんないなあ」

 その声は予想通り軽蔑の眼差しを向けた梶本さんだった。

「まあ、こう言うのは女性が決めていいよ、なあ松君?」

「えっうんそうだね」

「それなら、まじかるじゅうたんがいいなー」

 と言ったのは梶本さんだった。

「エッ」

 僕はかなり焦った、なぜなら三半規管が超弱いから。この手のぐるぐる回転するやつは直ぐに気持ち悪くなる。嫌だ!それは絶対避けなければ。

「あ、それなら僕はここで見てるから、三人でいってきていいよ。」

 そう言うと田中さんが、

「ええ~松くんがいかないと、つまんないよ~大丈夫!怖くないよ、私が隣に付いててあげるから」


 それは、別の意味で困ると心の中で叫ぶ。どうしよう最初から梶本さんの機嫌を損ねるのもあれだし、しょうがない乗り込むとするか。なんだか子供の頃嫌いだったピーマンを生で食事の初めに食べさせられるような感覚だ。


 そして行列に並んでから10分後、僕達はその奇妙な鉄鋼製のじゅうたんに乗り込んだ。座席に座り、シートベルトを締めると直ぐにその物体は上下左右にくねくねと気持ち悪い動きを繰り返し、停止するやいなや、僕は猛ダッシュでトイレに駆け込んでいた。


 あああ!口の中が酸っぱくなって気持ち悪い!どうして休日にこんな思いしなきゃならいんだよ!!


 トイレに駆け込んだ時幸運にもトイレは人がまばらだったので、直ぐ傍の洗面台に顔を近づける。すると良く知っている男の後姿が鏡に映っているのが見えた、清水だった。


 なあんだ、あんたも苦手ならそうだと言えば良いのに、結構意地っ張りなんですね。

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