第6話  連行される

 佐藤先生は僕に気付いて資料から顔を上げるとおもむろに僕に椅子をすすめた。


「松川、よく来たな、まあ座れ」

「はぁ…、失礼します」

「今日は話があってだな」

「な…なんでしょうか」



 目元に皺3本と右の口元上昇7秒でも、口元の上昇が先ってことは完全な作り笑い。作り笑いにプラス眉間に深いしわ!まっまずい……あれは、何か悪巧みの笑顔!!なんか厄介ごとに巻き込まれる気がする!


「なんでしょうか」


 僕は小声で聞いてみる。その間頭の中の脳細胞が "何かやらかしたか俺は?"のワードで全速力で検索を掛けている。


先生はつぶやくように言った。


「おまえ部活はどこにするんだ?」


 おおっと、それは予想外の質問、それはグーグル先生でも回答不可です。


「えっと…中学と違って高校は自由って聞いたんで、今のところどこにも入るつもりは無いんですが……」


 相当動揺している為、僕は声が少し裏返ってしまった。とても先生の表情を呼んでどうしてそんな事を言って来たかを推測する余裕は無い。


 僕の意志を確認すると先生はいつも赤みがかった顔をさらに紅潮させ、やや大きな声で言った。


「なに! お前は帰宅部だったか! まあいい、どうせそんな事だろうと思ったからお前は生徒会に入れといてやった、感謝しろよ。これから挨拶に連れていってやるから、そこで座って待ってろ」


 いや何?この唐突なむちゃぶり、これはなんとかしないといけないぞ。


「いや…あの、そうなると勉強の時間が取れなくなってしまうんですけど…それに生徒会の役員って選挙で選ぶのがテンプレみたいなもんじゃないんですか?」



「なんだお前のその例えは? 大丈夫だ! おまえは書記補佐として生徒会のサポートをしてもらう。選挙など補佐だから不要だ。お前のタイピングスキルは相当なものだって関口から聞いたぞ?」


 チッ、関口の野郎~余計な事を、と心の中で舌打ち。


「お前の勉強についても問題はないしな。この前の中間だって全ての科目で100点に近い点数だったじゃないか」


「いや、それは山勘が当たったのと、この学校の……」



 そう言いかけ僕は説明に困った。確かに中間テストの点数はほぼ全て100点に近いスコアを叩きだした。でもその理由は正確に言うと山勘ではない。だって先生の細かな表情や仕草を見ればテストに出るところとか大体分かるから。でも人の顔が見えない模試や入試ではこのスキルは役に立たない。



佐藤先生は僕の "この学校の……"という付けたしの言い訳に過剰に反応する。


「なにぃ~!」


怖いから! 血管浮き出だして怒るのやめて!



「いえ!なんでもありません!!」



 結局僕は内申を人質に取られ3階の生徒会室にほとんど連行されるような感じで連れて行かされた。

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