第27話 嫉妬は蜜の味

 嫉妬って、誰にでもある感情で、それも男女間だけではないのは古今東西の共通だと知られている。有名なのはモーツアルトの才能に嫉妬したサリエリが有名だ。

 実は私もある人に嫉妬している。それは同人誌を作っている友人。とても才能があって、絵も文章も上手い。私なんか、どちらも下手で嫌になってしまうが、天は彼女に二物を与えたのだと思う。いいえ、可愛い容姿も含めたら幾つもの才能を手にしていると認めざるを得ない。

 今は年末の冬コミに向けて製作している真っ最中だけど、彼女はイラスト入りの小説をもう二本も書いて来た。対する私は未だ一本も出来はしない。この差はいったいドコから来るのかしら? 嫌になってしまう。

  同人誌は他にも参加者がいるのだけど、彼女と私以外は十把一絡げ。問題にもなりはしない。レベルが違うと言うのかな。才能が違うと言うかそんな感じ。私か ら言わせれば、同人誌に載せるレベルじゃないのよね。枯れ木も山の賑わいと言うから載せてあげているのよ。同人誌だってちゃんとお金を貰うのだから、本当 はいい加減なものは載せたく無いのよ。判る?

 それでも、私も一本は何とか完成した。彼女に見せると

「わあ! 凄いですねえ! 私が思いもつかなかったことだらけです」

 そんなお世辞を言ってくれた。そう、お世辞だと言うのは判る。だって彼女が書いた二本の作品は、私が一生かかっても思いつかないお話で、しかもイラストが超カワイイ。これが嫉妬せずにおられようか……私の中でそれは段々と燃えたぎっていた。

  本当に才能がある人は周りに無頓着で、天真爛漫だったりする。それもムカつくのよね。そんなことまで嫉妬してしまう私がおかしいのかしら? いいえそんな ことは無いわね。私がおかしいなんてことはありはしない。同じ目標を目指していて、どうしてこんなに差がついたのかしら? 私の方が最初は先を走っていた のに、いつの間にか簡単に追い越されてしまった。

 あまりにも才能の差があると人は嫉妬しか生まれないものだと経験したわ。


 で も、そんな彼女でもスランプはあるもので、他のメンバーが書く予定だった作品が急遽書けなくなってしまったの。その子の家に不幸があって、書いてる場合で は無くなってしまったのね。そこで急遽、彼女がもう一本書くことになったのだけど、中々出来て来ない。締め切りが迫るが、どうも書けないで困ってるみたい だった。

 そうなると、現金なもので、彼女が可愛そうになって来る。思わず

「出来なかったら私が代わりに書こうか?」

 なんて心にもないことを口にしてしまった。皆の注目を浴びてしまい

「是非、お願いします!」

 と頼まれてしまった。仕方がないので頼まれてしまう。今回は気楽なものだ。なんたって自分のではなく人の代わりだからだ。スイスイと書けてしまった。もしかしたら、本来の自分の作品より良い出来かも知れない。読んで貰ったメンバーの評判も中々良かった。

 結局、それが採用されて、印刷され製本された。そして冬コミに並んだのだ。売れ行きは上々でほぼ完売となった。実は残りが僅かだか、某サイトで通販もすることになっていた。

 そっちは幾つも注文が来ないだろうと踏んでいたら、冬コミで買った人の評判が良くてこちらも完売してしまった。どうやら私がやっけで書いたあの作品が評価されているみたいだ。

 あれから、彼女を含めメンバーの視線から燃えるような嫉妬を感じるのは気のせいだろうか……


   了

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