限りなく透明な遺書。
相生逢
第1話 遺書。
お父さん、お母さん。先立つ不孝をお許しください。もう、生きていく気がしないのです。
僕自身、どうしてこんな事になったのか自分でも分かりません。
ここに、僕を追い詰めた人物の本名を書くことがあの人達への復讐となるのかもしれませんが、あえて書くことはしません。
そんな事をしても無駄だと思うからです。
きっとあの人達は僕が死んだところで気にもかけないでしょう。
あの人達はそういう人間です。
ここに、こんな事を書くのはどうかと自分でも思いますが、でも書かせてください。
僕には妹がいました。兄の僕が言うのもなんですが可愛い素直な子だったと思います。
僕とは年齢が離れていて、まだ小学校3年生だというのに、しっかりとした子でした。
もしかすると、まだまだ甘えたい盛りであるのに、周囲に気を使わせていたのかもしれません。
そう思うと不憫でなりません。いつも、周囲に気を使っていた彩香でしたが、いつも持っていたうさぎのぬいぐるみは大好きでした。
もし、こんな僕の願い事を聞いてくれるのであれば、あのぬいぐるみを直してあげてください。
ところどころほつれている場所があるので。僕がやってあげればよかったのかもしれませんが、なにぶん手先が不器用なもので、直そうとすればするほどさらにひどくなってしまって彩香に怒られてしまいました。
その彩香を殺したことを僕は忘れません。
そんな僕にも好きな人がいます。その人は彩香とよく遊んでくれる人でした。
両親がいない僕達ですが、彩香にはまるで母親のように接してくれていました。
実際、年齢は20代半ばでしたので、なおさら、彩香がそう思えたのかもしれません。
僕が生徒会で帰りが遅くなった時など学校まで向かえに行ってくれて家で待っていてくれる事もありました。
僕は生徒会の副会長をやらせていただいていたので、行事の前には帰りが遅くなることが多かったので大変助かりました。
そんな水村洋子さんには感謝してもしきれません。
遺書にこんな事を書くと洋子さんが気に病むかもしれませんので本人には伝えないでください。
彼女を好きになったのはいつだったでしょうか。知り合ったのはいつの頃か覚えていません。
父親の友人だと言って連れてきた人と一緒に家に来た時が最初でした。
正直、最初は苦手なタイプだと思いました。
無駄に明るくて、大雑把で、でも所々神経質のようにこだわりがあって。
友達にはなれないな。そう思ったことを今でも覚えています。
彼女のことを意識し始めたのは両親のお葬式の時だったと思います。
死に方が死に方でしたので葬式の雰囲気は一言で言えば異様でした。
あちらこちらで、ひそひそ話が行われており、笑い声も聞こえていました。
たくさん人がいるにも関わらず芳名帳が空白ばかりだったのを覚えています。
両親の死因についてはここでは触れないことにします。
僕としても面白い話ではないので。
そんな異様な雰囲気の中、一人涙をひっそりと流してくれていたのが洋子でした。
大泣きするわけでもなく、涙を堪えているわけでもなく、無表情に涙が流れていました。…それを見た瞬間…怒りが沸いてきました。
お前に何が分かるんだと。泣くほど両親のことを知っているわけでもないくせに。…まったく子供でした。情けない限りです。
洋子には洋子が事情があったのでしょうが、今となっては分かりません。聞いたことがありませんし。
両親が死んでから、洋子はよく家に遊びに来るようになりました。
本当に迷惑だと思っていたのですが、でもやはり、人間弱っている時に優しくしてくれる人がいるというのは本当にいい事です。
この時、洋子が家に来てくれていなかったら、僕も彩香も立ち直れていなかったでしょう。
洋子と最初に仲良くなったのは彩香でした。洋子を避けるように生活していた僕とは違い彩香は洋子といつも話していました。
両親にすら、あまり甘えることのなかった彩香が洋子に対してはいつも甘えていた気がします。
洋子は人の心に触れるのが得意でした。こういう言い方をするのと失礼かもしれません。
でも彼女は確かに人の心の隙間を埋める事が得意な人だったと思うのです。
彩香が仲良くなったことで、僕も洋子と仲良くなりました。初めはぎこちなかったですが、彩香が間に入ってくれることで次第に打ち解けていきました。
僕が生徒会の副会長の仕事ができたのも、洋子のおかげでした。
いくらしっかりしているとはいえ、夜、彩香を長時間一人にしておくことは僕にはできませんでした。
両親の事と関係がないと言えば嘘になります。
そんな事情を知っているからなのか、洋子は僕が帰りが遅くなるというといつも彩香を向えに行ってくれていました。
家で遊んでいることもありましたが、大体は小学校の校庭で遊んでいるか、僕達の学校に遊びに来ていたかのどちらかだったと思います。
彩香の通っている小学校と僕の通っている高校は距離が近いですからね。
彩香は校庭で遊ぶのが好きな奴でしたから、よく洋子と鬼ごっこをしていたのを覚えています。
特別運動神経の悪かった洋子はいつも彩香に翻弄されていました。
その姿は生徒会室から見ていると微笑ましいものでした。
…本人の顔は真っ青でしたが。
彩香は体育倉庫が好きな変わった奴でした。
狭い所が好きというのか、暗いところが好きなのか、よく分かりませんが狭くて暗いところが好きでした。
一度だけ理由を聞いたことがあります。散々渋った挙句、一度だけ答えてくれたことがあります。
彩香は小さな声で言いました。
……あそこは汚れている私を覆い隠してくれるから。
僕は何も言ってあげることが出来ませんでした。
そんな生活が一年ほど過ぎようとしていた頃、もうすぐ冬休みという時期の事。
彩香は冬でも元気に校庭を走り回っていました。
洋子はこの頃になると、自前のジャージを持参していて、冬だというのに額に汗を流して彩香を追いかけていました。
相変わらず、追いつけていなかったけれど。それでも2人とも楽しそうでした。
世間は冬休みに入りましたね。彩香も冬休みを楽しみにしていました。洋子お姉ちゃんと遊ぶんだーと言って。
その洋子が死んでからもう1週間も経ったのですね。早いものです。
話が大幅に脱線してしまったようです。脱線癖は昔からなかなか治りません。彩香にもよく怒られていました。懐かしい思い出です。
本題に戻りましょう。なぜ、僕が自殺する事になったのかでしたね。
自殺する。それ自体にはまったく持って抵抗がないのです。それは昔からでした。
なぜ、自分が生きているか。他人の為。そう思っていました。
偽りなくそう思っていました。
自分が生きている意味なんかないと思っていました。
生と死の区別が、よく分からないのです。生きている。その事に価値は見出せませんでした。
ただ、両親が僕に生きていて欲しいと望んでいる事は分かりましたので、死ぬ事はしませんでした。
その両親が死んでも彩香が僕に生きていて欲しいと思っていたので死ぬ事はしませんでした。
傲慢な考えですね。自分でもそう思います。でも、そうでも思わない限り、生きている意味はわかりませんでした。より正確に言うと、死ぬのが面倒くさい。だから、生きていました。
ああ、でも、彩香が死んだから死のうと思ったわけじゃありません。
だって、彩香を殺したのは僕ですから。
そう言えば、11月頃、時計塔から飛び降りた人がいましたね。
教師も生徒会も大騒ぎでした。あの事件があってから、体育倉庫に鍵を閉めるようになったんでしたね。
僕達の高校には校庭の隅に時計塔が立っていてシンボルのようになっていました。
その時計塔の一階が体育倉庫として使われていて、そこから時計塔の最上階に繋がる梯子が伸びていたんです。
飛び降りた人はそこの梯子を昇って最上階に行ったので、放課後など人が使わない時は鍵をかけるようになったんです。それが12月の初めの頃でした。
その鍵を毎日閉めにいくのも副会長の仕事でした。
雑用と言えば雑用ですが、他にやる人もいなかったので仕方なかったと思います。
そもそも、副会長なんて雑用係のようなものですから
副会長の仕事として、生徒指導のような事をしなければいけないのは少し、嫌でした。
一般的に不良と呼ばれている人達が煙草を吸っているのを見かけたら注意をするのも副会長の仕事の1つとしてありましたから。
正直、あの人達が煙草を吸おうが体を壊そうが知った事じゃないって言うのが本音ですが、こちらとしても立場という物がありますから、見かけると注意をしなければなりません。
よく、時計塔裏で煙草を吸っていた明弘君には苦労させられました。
一度注意されたならば、もうそこで吸わなければいいものを何度注意しても同じ場所で煙草を吸っていましたから。
ちょっと頭がおかしいのかと思いました。
ここだけの話ですが、最近はわざと時計塔裏には行かない様にしていました。
明弘君に会うと、また注意しなければいけませんから。
副会長ともあろう者が、注意しないなんてどういうことなんだ! と生徒指導の西垣先生に怒られたことがあったので、見かけたら注意をしないわけには行かなかったので、見ていなかったら注意しなくてもいいだろうと思ってしまったのです。
それと、あそこは落ち葉や枯れ枝などを集めて一時的に置いておく場所になっていました。
本当はそんな場所に置いてはいけないのですが、焼却場は校庭からは遠く、いちいち持っていくのが大変だったので清掃業者の人が一時的に置いておくのは暗黙の了解となっていました。
そんな場所だったので、清掃係の人も迷惑していたと思います。
ここで言うのもなんですが、もうやめた方がいいと思いますよ。明弘君。
同じことを繰り返していると馬鹿に見えます。
また、話が脱線してしまいました。
同じ事を繰り返しているという点では僕も馬鹿の一員ですね。
話を戻しましょう。僕を追い詰めた理由の1つとして、彩香の死を入れないわけにはいかないでしょう。
彩香の死因は焼死でした。
あの日、僕は生徒会の仕事があったので洋子に彩香を向かえに行ってもらうように頼んでいました。
その日は校庭を業者の人が清掃する日でしたので、渋々ながらも 体育倉庫裏に向かいました。
明弘君がまた煙草を吸っているかもしれないと思ったからです。
体育倉庫裏に行った時、意外にも明弘君はいませんでした。
拍子抜けした僕に声をかけてきたのは稲森先生でした。稲森先生は科学の先生で、生徒にも人気のある女性の先生です。
科学準備室の掃除をするので手伝って欲しいとの事でした。
稲森先生には生徒会の事でたびたびお世話になっているので、断るわけにもいかず、手伝う事にしました。
科学準備室に向かう途中、体育倉庫の鍵を閉めてくるのを忘れていた事を思い出しました。
その時、ちょうど校庭に入ってくる洋子が見えたので、体育倉庫の鍵を閉めてもらえるように頼みました。
この時、どうして違和感に気が付かなかったのでしょう。今でも後悔しています。
いつも、見ていた光景だったのに。
稲森先生と科学準備室の片づけをし始めましたが、片付ける物などほとんどなく、あっという間に終わってしまいました。
稲森先生は片付けが終わるとコーヒーを僕に出してくれました。
それは、砂糖も何も入っていないブラックコーヒーで、僕には少し苦かったのを覚えています。
素直に「苦い」と言うと稲森先生は「それぐらい苦いほうがいいんだよ」と言って苦笑いをしていました。
僕は、そもそもアルコールランプでコーヒーを入れるなよと思ったりもしましたが、僕も子供ではありませんので、そこは黙っておきました。
それは、砂糖も何も入っていないブラックコーヒーで、僕には少し苦かったのを覚えています。
素直に「苦い」と言うと稲森先生は「それぐらい苦いほうがいいんだよ」と言って苦笑いをしていました。
僕は、そもそもアルコールランプでコーヒーを入れるなよと思ったりもしましたが、僕も子供ではありませんので、そこは黙
しばらく、2人でコーヒーを飲んでいると、稲森先生が苦虫を噛み潰したような顔をしました。
せっかくの綺麗な顔なのにそんな顔やめればいいのにとなんとなく思っていました。
そして、稲森先生は僕に言いました。
「本当に、こんな事がしたかったの?」
何を、言っているのか意味がわかりませんでした。
直後、体育倉庫の方から煙があがっているのが僕の目に飛び込んできました。
僕と、稲森先生は顔を見合わせると、急いで外に飛び出しました。
体育倉庫に着いた時には、黒煙が立ち上っていました。扉の目の前には洋子が座り込んでいました。
僕が洋子に話しかけると呆然と体育倉庫を見上げるだけでした。
体育倉庫の扉には南京錠がかけられていました。
ここで、僕はようやく、違和感に気が付きました。
そこにあるはずの影が無いのです。そこに、洋子が居るならば、無ければいけないはずの影。…彩香の姿が見えませんでした。
咄嗟に、扉に駆け寄って引き戸の取っ手を握りました。手の平が焼けるように熱くなりました。
僕は、それを無視して重い鉄の扉を思い切り横に引き開けようとしましたが、それは南京錠に阻まれてかないませんでした。
手近に落ちていた石を拾って、南京錠を殴りました。何度も、何度も殴りました。
しかし、南京錠は鈍い音を立てて歪むだけで外れようとはしてくれませんでした。
気が付くと、僕は稲森先生に押さえつけられて地べたに這いつくばっていました。
目から水が流れ落ちていました。止め処なく流れていました。
その後、稲森先生が呼んだ消防車が駆けつけて、火は消し止められました。
焼けたのは体育倉庫として使われていた1階部分と、その少し上ぐらいまでで、時計塔の全焼はまぬがれました。
ただ、その体育倉庫の中から1人の女の子の焼死体が発見されました。…彩香でした。
彩香は大好きだった、ウサギのぬいぐるみを抱え込むようにして死んでいました。
そのおかげかウサギのぬいぐるみは焼けることなく、多少、ススだらけになっていたものの、その原型をとどめていました。
火事の原因は煙草の火でした。発火した場所は体育倉庫の裏です。
ただし、いつも明弘君が煙草を吸っていた場所ではありませんでした。
いつも、明弘君が居たのは体育倉庫の西側、校舎から死角になっていた場所でした。
火の手があがったのは体育倉庫の南側。体育館と時計塔に挟まれた狭いスペースでした。
その日、校庭の清掃業者は、落ち葉や枯葉をいつも置いていた西側ではなく南側に置いていたのです。
事件の前の日、西垣先生に体育倉庫の横にゴミを置くなと注意されていたからです。
事件の日も、側を西垣先生が通ったので、南側に置いて隠していたようです。
そして、明弘君。あの日、僕は彼を見かけませんでした。
でも彼は体育倉庫横で煙草を吸うのを止めていたのではありませんでした。
僕が体育倉庫に来るのを見かけた彼は体育倉庫の南側に逃げて隠れて吸っていたのでした。
もちろん、火元は彼の投げ捨てた煙草でした
そうなると、疑問なのはなぜ、彩香が体育倉庫に居たのかです。
いや、本当は疑問でもなんでもないのです。
彩香は僕の帰りが遅くなった時、洋子の向かえを待たずに僕の学校へ来る事があるのを僕は知っていました。
そして、彩香が落ち込んでいる時は体育倉庫に隠れている事も知っていました。
だから、あの日も彩香は1人で、学校に来ていたのです。
そして、体育倉庫に行っていた。
つまり、僕は、彩香が、体育倉庫に居る事を、知っていながら、鍵を、かけた、のです。
もし、あの日、僕の帰りが遅くならなければ、
彩香が1人で学校に来なければ、
体育倉庫に行かなければ、前日、
西垣先生が注意しなければ、
僕が、あの日、体育倉庫の裏に行かなければ、
明弘君が煙草を止めていれば、
洋子に鍵を閉めるように頼まなければ、
稲森先生に呼ばれなければ、
彩香は死ななかったかもしれません。
でも、それは何を言ってももう遅いのです。
洋子が壊れたのは彩香が死んでから1週間後でした。
彩香の葬式の日、何回やっても身内のお葬式と言うのは慣れるものではありませんでした。
父親の時とは違い、まだ来る人は同情的でしたが、それでも、やはり、どこか異様な空気が漂っていたとは思います。
ちらほらと、「またよ…」「これだけ続くなんてねぇ」「関わりたくないわね」なんて声も聞こえていましたから。
稲森先生も葬儀に参列してくれました。
黒いパンツスーツに咥え煙草で現れた時は驚きましたが、素直に嬉しく思ったのを覚えています。
稲森先生と少し話をした後、人ごみの中から「あなたのせいよ!」と叫び声が聞こえてきました。
そちらの方を伺ってみると、洋子が誰かに罵られているようでした。
叫んでいたのは洋子といっしょに彩香の面倒を時折見てくれていた、クラスメイトのゆかりさんでした。
ゆかりさんは洋子が鍵を閉めたから彩香ちゃんは死んだのだと叫んでいたのです。
「中を確認せずに閉めたから、向かえに行ったのに、姿が見当たらなかったのに! 全部! 全部! あんたのせいよ!」
周囲の人がゆかりさんを引きとめていましたが、僕はそれを見ても助けに行く気にはなれませんでした。
僕も心のどこかで同じ事を考えていたのかもしれません。
本当に僕は生きている価値のない人間だと思います。
葬儀の後から、洋子は僕の家にも学校にも来ることは無くなりました。
僕は洋子の家に行ってみる事にしました。
洋子の家はマンションの一室で僕が訪ねると洋子のお母さんは快く中に入れてくれました。
洋子は自室に篭りっきりになっているらしく、食事以外の時は部屋から出てこないようでした。
僕が部屋をノックすると、部屋の扉は簡単に開きました。中から出てきた洋子はげっそりとした風もなく、見た目は元気そうでした。
中に入ってと言われて僕は部屋に入りました。
洋子はベットの上に座ると僕をまっすぐに見つめてきた。
僕は洋子に聞いてみた。
……本当は、まったく悲しくないんでしょ?
洋子は小さく頷きました。
そして、小さく呟き始めたのです。
彩香ちゃんが死んで悲しいと思うのが一般的な感情なんだろうと思う。
でも、私はまったく悲しくないの。あんなに仲がよかったのにね。
彩香ちゃんの事嫌いだったわけじゃないの。
でも、なんて言うのかな、ピンとこないの。
実感が沸いてないだけじゃない?
嘘をついてみました。
案の定、洋子は小さく首を振った。
本当はね、扉の鍵を閉める時、目が合ったの。
誰と?
もちろん彩香ちゃんと。
僕は驚きませんでした。
どんな、気持ちなんだろうって思ったの。
実の親に閉じ込められるって事は。
洋子はそう言って黙り込みました。
……回想はこのぐらいにして、僕が本当に書きたかったことを伝えたかったことを
書きたいとおもいます。
今、この遺書を読んでいるのが誰なのか、僕は予想がついています。
たぶん、外れてはいないでしょう。
そして、それは僕を自殺に追い込んだ人達の1人であるという事も、間違いないでしょう。
僕を自殺に追いやったのは、彩香の死に関わった人、全てです。
彩香の死は偶然が重なった事故かもしれません。でも、僕には許す事は出来ない。
例え誰であろうと、僕を含めて許す事は出来ないのです。
特に、あなたは絶対に許す事ができない。
でも、僕が自殺したところで、あなたは気にも留めない事でしょう。
だから、僕はあなたに、罪を背負って貰いたい。
彩香を殺した時のように事故と思えるような事ではなく、あなたの意思で、罪を背負って貰いたい。
今、あなたの目の前で僕は寝ています。
そこに、凶器も置いてあります。
あなたには、僕を殺してもらいます。そんな事するわけが無いと思うでしょう。
でも、きっと、あなたは殺すでしょう。僕は確信しています。
だって、あなたは
×××××××××××××。
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