ダイナマイト・キッドの話。
映像は見ていない。
けど、誰かのアップした写真は見た。
それで十分だった。
キッド。
私のハンドルネームもモロに彼のこと。
誰よりも大きい訳でも、華麗なわけでもなかった。
だけど誰よりも強く、誰よりもカッコよく、誰よりも豪快に戦った。
私はリアルタイム世代じゃない。
近所のお店にあったビデオテープ。
タイガーマスク特集の1本を手に取ったのがきっかけだった。
お目当てはダイナマイト・キッドでもタイガーマスクでもなく、ウルトラマンだった。
当時幼稚園か小学校入りたてぐらいで、あのウルトラマンが出ると信じて疑わずにビデオを借りた。
今だったらルチャリブレに対して一定量の知識があるので、「メキシコの」ウルトラマンがウルトラマングレートやウルトラマンスコット、パワードなどの「外国版ウルトラマン」の類に含まれない事はわかる。
けど、当時のチビッコである私には落胆モノだった。
かわりに私を夢中にさせたのがダイナマイト・キッドだった。
名前も、ロン毛に筋肉ムキムキの風貌も、タイガーマスクを容赦なくぶっ飛ばす戦い方も物凄くカッコ良かった。
要は怪獣みたいだったんですな。
その後スクスクと成長して、高校2年の夏。
鼻炎のレーザー手術で入院する前に退屈しのぎに本を買った。
当時出版されたばかりのキッドの自伝「ピュア・ダイナマイト」を抱えて病棟のベッドに寝転んでいた。
棚橋さんの本によれば「8割イタズラで残りがステロイドの本」という。
その通りだ。マクドナルドで仲間レスラーのポッケに詰め込んだ紙ナプキンに着火するとか、カバンに本物のダイナマイトを詰めて爆破するとか。
故ジョニー・バレンタインが半身不随になった時、仲間から冷たい仕打ちを受けたのは彼のどの過ぎたイタズラのせいだった、という説がある。
キッドはキッドで、リングを去った後はひっそりと暮らしていた。
時は流れて立派なプロレスマニアのクソガキになっていた私の前に現れたダイナマイト・キッドは見る影もなく痩せ細っていた。
その後しばらく音信が無く、久々にGスピリッツに登場した時は嬉しかった。
けど、やっぱりそっとしておくべきなのではないかとも思った。
ダイナマイト・キッドは伝説だ。本物の男だ。
その最期は、愛する人たちだけで迎えてあげて欲しい。
変わり果てた姿になろうとも、骨や灰になろうとも。
ダイナマイト・キッドは永遠なのだ。
キッド、ありがとう。
私は選手でもなければ何でもない、ただいつまでもプロレスが好きで仕方がないクソガキのままだけど、いつまでも貴方が好きで仕方がない。
余談だけれど、最近ダイナマイト・キッドのラジオネームで伊集院光さんの深夜ラジオに投稿もしている。
漸く、少しだけネタが読んでもらえるようになってきた。
良い事か悪い事かわかんないけど、私はずっと、この名前を使って行きたい。
いいですよね?
と聞いて、「勝手にしろ!」とロッカーを蹴飛ばされたい。
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