サンライズ・オーバー

九番空白

始めからの、カンチガイ

 高校二年の春。

 あの日、三人の幼馴染の嘘が終わり、沈む夕陽とともに四人の新しい世界が始まった。

 ボクたちの青春――




 ピピピピピピピピピピピピピピ――

 目覚ましの音がなっているのが遠くで聞こえる。

 意識が強制的に引きずられ、音がどんどん大きくなってくる。


 「うあー」


 仕方なく起きる。顔を洗い、制服に着替えて朝ごはんを作る。そろそろイズミも起きている頃だろうか。

 簡単な朝食をとり、支度をして家を出るとちょうどイズミが家から出てくるのが見えた。


 「おはよう、今日は早いな」

 「あ、マーちゃんおはよー。がんばって早くおきたよ~」


 おっとりしたイズミのキレイな声が耳に心地いい。

 イズミがオレの頭から足先までをさらっとチェックしていく。


 「うん、オッケー。今日もカッコいいよ」


 イズミは毎朝オレの容姿をチェックする。オレは油断すると寝癖とかついたままで出てくるから、習慣になったのだ。だらしない格好をするとすごい怒られる。


「じゃ学校行くか」

「うん」


 緩いウェーブのかかった髪、小学校の頃からほとんど変わらない背丈。一四〇センチくらい。だがこの幼馴染はどんどん美しくなっていくように感じる。てゆーかかわいい。




 バス停に近づくとサクラがいるのがわかった。一八〇ある身長は遠目からでもわかりやすい。

 「おー、おはよう」などと朝のあいさつを交わす。

 サクラを見るといつも軽い嫉妬感をおぼえる。高身長に整った顔立ち、おまけに頭も良い。オレもイケメンに生まれたかった。ちなみにオレの身長は一六〇センチである。ちょうど二〇センチずつ差の三人。もうちょっと背がほしかったけど、イズミとの差はこんなものでいいかな。


 しかしもう高校生にもなるというのに、この幼馴染三人組はよく一緒にいるものだ。特に男女ならそろそろ疎遠になるものではないだろうか。いや、自分たちのことなんだけど。

 オレが危惧しているのは、サクラもイズミのことが好きなんじゃないか、ってことだ。だとすれば最強のライバルである。ファンクラブまであるサクラにオレの勝ち目などあるのだろうか。


 とはいえ、サクラには彼女がいる。――となりのクラスの超美人だ! だけどあまり深い付き合いをしている様子がないのである。たまにいっしょに出かけているようだけど、なんかオレとイズミと一緒にいるほうが多いのだ。もうちょっと彼女を大事にしろ。




 バスを降りると、サクラの彼女が待っていた。登校時はいつもここで合流する。

 毎日彼氏を待つ少女……朴念仁のサクラにはもったいないくらいの良い彼女だ。


「おはようございます、みなさん。」

「おはよっ」「おはよー」「おはよう、ミズキ」


 オレとイズミとサクラが返す。


「おはようございます、サクラ君」


 サクラにだけもう一度。

 良い彼女なのだ。




 まあ登校の描写など特になにがあるわけでもない。誰もが何千回とくりかえす、自分の登校風景を思い浮かべてもらえれば、大差はない。


 ……ないはずだった。

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