第20話
「震災の時に真っ先に思い出したのは、ゼリーのことでした」ゼリーの話かよ、俺は心の中で毒づいた。 震災を受けても頑張るお店、というテーマで今日は駅の近くにある喫茶店に来ていた。 そこはお土産用のゼリーがとても人気らしい。
「たかがゼリーと思うでしょうが、私にとってはかけがえのないものなんですよ、わかってますか」思っていたことが顔に出ていたのだろう、店のオーナーから強く言われた。
「ゼラチンは但馬牛から取った上質のものを厳選し、いちごは福岡産のもの・・・」何回も聞いたゼリーの品質のためにいかに素材を厳選しているかをまた聞かされて、俺はうんざりしていた。 だいたいここは喫茶店であって、ゼリー屋ではないだろう。
「はぁ、ありがとうございました」取材を切り上げて、駅前のゲーセンによる。 昔懐かしい感じのゲームセンターでパンチングマシーンをぶっ叩き、俺は家路についた。 うちに帰って、一息つき、記事をまとめる。 かけがえのないもの、か、俺はこの記事を、伝えることをそう思っている。 あのオーナーにとってはそれはゼリーなんだ。 そう思うと、スッと何かが落ちたような気がして、俺は記事を一気に書き上げた。
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