第11話

「家今、ゼリーしかないねん」そう言って、男の子は笑った。 私はとまどいながら、

「ありがとう」と返した。 その男の子はクラスは違うけれど同じ学年の子で、今日はどういう風の吹き回しか、帰りにいきなり声をかけてきたのだ。

「なぁ、ウチ、よらへん?」私の方もどういうわけだか、その子の家についていこうと思ったのだ。

こんなに近所だったんだ。 通りを隔てて、細い路地をはいったところに、その子の家はあった。 ボロボロのアパートで、中にはいるのをためらった私は、

「上がるのは遠慮しておくわ」と言った。 そうすると、男の子はニコッと笑うと、

「ほな、おやつ持ってくるわ」と言って、家の中へと入って行った。 そして、ゼリーを持って来たのだ。

「ゼリーしか、ないの?」

「そう、冷蔵庫の中になーんにもあれへん」そう言って、男の子はまた笑った。 私は何か、刺さるようなショックを感じた。 私の家は小さな会社をしている。 こんなに近所に住んでいるのに、学年もおんなじなのに、こんなに別の生活をしている子がいる。 私はもらったゼリーを食べると、お礼を言って、急いで家へと帰った。

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