どうしようもない人たち

フカミオトハ

泥沼に咲く花のように

「名前の文字数分シャーペンをノックしてハートを描き、芯を折らずに塗り潰せれば両想いになれる」

                     ――女子高生のおまじない


「相澤ぁ。猪狩ぃ。市原ぁ。……市原ぁー。なんだいないのか。おい、お前らなんか知らんか」

 出席簿をペンでトントンと叩きながら、担任が眉をしかめてそう言った。ぼんやり窓の外を眺めていた俺は、視線を教室の端に飛ばす。なるほど、普段市原霧子が座っている席に、今日は誰もいない。

「しょうがねえな」

 なにやら書き込んで、担任は出席の続きを取る。俺は視線をすぐに外に戻した。

 窓の外を眺めながら市原のことを思い出す。同じ中学だったから、存在は知っている。図書委員か何かで、ダサい眼鏡をかけている。髪が長くて、後ろで無造作にくくっている。なんだか暗い女だ。休み時間にタロットカードとか広げてたこともあった。黒魔術をやってるとかいう噂があったりして、キモイとかなんとか、あからさまに避ける女子もいる。女の世界は怖い。

 中学が同じだというだけで、俺とはほとんど接点のない人間だった。クラスメイトでなければ名前を知ることもなかっただろう。

「……くぁ」

 あくびが、一瞬思考を飛ばす。その隙に、コツン、と頭にチョークがあたった。

「巴。呼ばれたら返事」

「ぁい」

 くそ、今時本当にチョークを投げる馬鹿がどこにいるんだ。

 担任はくいくいと手首を捻って、にやりと笑った。馬鹿だ馬鹿だ。あれは本物の馬鹿だ。

 出席は先に進んでいく。俺は軽く頭を振って、また窓の外に目を向けた。


 市原霧子はこの日学校を休んだ。

 そして、もう二度と教室に来ることはなかった。


■泥沼に咲く花のように■


□1

「ねえ、巴くん」

「え?」

 その日、いつものように一日を終えようとしたところで、クラスメイトに声をかけられた。振り返ると、見慣れた顔が微笑んでいた。学級委員長の柚子浦だ。以前、まだ中学だった頃にちょっとしたことで知り合ってから、ちょくちょく声を掛け合うようになっている。

「なに、どうかした」

「市原さんのことなんだけど、巴くん、何か知らない?」

「なんで俺が。知らないよ」

 また突拍子もない話が出てきたもんだ。ちらりと目を向けると、市原の席には誰もいない。人もまばらになった教室だが、それとは関係ない。俺はもう長いこと彼女の姿を見ていなかった。

「今日で何日目だっけ。一週間?」

「ちょうど一週間。先生が家に電話してみたらしいんだけど……」

「誰も出なかったとか?」

「本人が出て、風邪だから休むって」

「ふうん……」

「それで、巴くんなら知ってるかなって」

「だから、なんで俺?」

 言ってることがさっぱりわからない。俺は市原とよく話していたというわけでもないし、同じ中学の出身だというなら他にも何人かいるのだが。

「だって、あれ……? 巴くん、市原さんと付き合ってるんじゃないの?」

「はあ? なんだそれ、知らないぞ」

「あれ、なんかそういうふうに噂されてるよ。市原さんが巴くんのことがずっと好きで、どうこうっていう」

 ……どこからそんな愉快な話が生まれるんだ。市原と付き合ってるとか、なんだそれ、何語?

「誰が言ってんだよ、それ」

「相澤さんとか、長谷くんとか、向坂さんとか……」

 指折り数えながら名前を羅列していく委員長。ひょっとしてクラス中が噂してんのか。

「意味わかんねー」

「やっぱり、ただの噂なんだ」

「噂だよ。俺、市原とほとんど話したこともないんだぞ。本当、どこからそんな話が出て来るんだか」

 言うと、そうだよね、と柚子浦も苦笑した。

「あ、わたし先生に呼ばれてるから、行くね」

「おう、市原のことは一応気にしとくよ。あと、次に噂の現場に立ち会ったら否定しといて」

「うん、わかった。ねえ、巴くんも市原さん気持ち悪いって思う?」

 柚子浦はちょっと困ったような顔で聞いてきた。立場上色々あるんだろう。ことが不登校だけに、そういうことが関係していると思ってるのかもしれない。

「別に、どうでもいいよ」

 本心だけでそう応える。柚子浦は安心したような、納得できないような、微妙な表情で笑った。


□2

 柚子浦とはじめて会ったのは、中学の、確か二年の時だった。柚子浦は当時四駅ほど離れたところに住んでいたらしい。田舎の四駅は相当遠い。柚子浦はそんな遠くまで来て、ふらふらさ迷いながら、猫探しのビラを配っていやがった。

「なにしてんの、お前」

「ね、ねこを、さがしてて」

 手の中のビラは結構な量が残っていたが、大きめの鞄の中は空だった。随分配り歩いたらしい。声をかけた手前、一枚もらって見てみる。

 知らない町の名前が載っていた。

「なに、おまえ、こんな遠くから来てるの?」

「だ、だって、猫は行動範囲が意外と広いからって……」

「広いからって……大変だな。電車?」

「ううん」

「え、車?」

 あたりを見回したが、親がいる様子はない。どこかで落ち合うのだろうか、と思ったら、

「ううん」

 と否定された。えーと。

「……あ、歩いてきたのか!?」

「う、うん。だってお金ないし……」

「……」

 それが、傍目には大人しい優等生にしか見えないくせに実は超行動派の柚子浦と、俺の出会いだった。

「そういや、あんときの電車代返してもらってないな……」

 帰り道、ぼんやりそんなことを考える。結局あの後柚子浦をわざわざ家まで送った俺は、その場で件の猫を発見するというミラクルをかますことになった。その後もちょくちょく連絡を取り合い、何の因果か、高校で再会することになったわけだ。

 人生、どこで何がどうなるかわからないものだ。柚子浦は頭の回転が速くて、話していて楽しい。思いついたら即行動の人なので、まあ、色々困ったりすることもあるが。

 柚子浦は「困った人がいたら放っておけない」人間だ。それが学級委員長なんてやってるもんだから(ちなみに立候補)やらなくていい仕事まで――

「……っと、電話だ」

 ケツポケットでブルブル震える携帯電話を取り出す。サブディスプレイには「柚子浦」と出ている。

「おう、なに?」

「あ、巴くん? 今どこにいる?」

「今帰り道。黒猫公園のとこ」

「あ、じゃあそんな遠くないね。頼まれごとがあるんだけど、いいかな」

「なに?」

「市原さんのことなんだけど――」


 ……人生、どこで何がどうなるかわからない。それは要するに未来がわからないってことだが、きっと人間には、今自分がいる場所だってちゃんとは見えていない。

 例えばそれが、足を踏み入れたら抜け出せない底なし沼の淵だったとしても、本人にはわからないものなんだ。

 だからこの時の俺も、自分の足が底のない泥沼にズブズブと飲み込まれていることに、気がつくことができなかった。


□3

「で、わざわざ柚子浦がプリントを届けるのはなんでだよ」

「なんでって言われても、誰も届ける人がいないっていうから、ならわたしがやりますって」

「またそのパターンか……」

 ため息をついて頭を抑える。そんな俺をなぐさめるように、足元で猫が鳴き声をあげた。

 この公園には猫が多い。その中でも黒猫の比率がやけに高い気がする。どこを向いても必ず一匹は猫が目に入るのだが、大抵の場合は黒猫だ。だから黒猫公園なんて呼ばれているのである。

「それに、ついでに様子を見て来ようと思って。本当に病気なのかもしれないし、そうじゃないならそうじゃないで、話とか聞けるかもしれない」

「なるほど。まあ、いいよ。付き合おう」

 柚子浦も一人で行くのは怖かったのだろう。頼まれごとというのはつまり、一緒に市原の家に行ってくれということだった。

「それにしても、この公園は相変わらず猫が多いね」

「そうだな……でもなんか、減った気がするけど」

「そうなの? これでも?」

「これでも。前はもっと、わらわら群れてたんだけどな」

「ふうん。わたしには凄く多く見えるけどな」

 見回すと、そこらじゅうに猫が見える。いや、うん、多いことは多いんだけど……多いことは多いんだよな。気のせいかもな。

「まあいいや、行くか。住所はどのへんなの」

「えっと……地図書いてもらったんだけど」

「書いたやつが行けよとか思うの、俺だけ?」

「まあ、でも、しょうがないよ。書いてくれたの違うクラスの人だし。あ、そういえば、今日佐藤さんいなかったよね」

 佐藤さん。ウチのクラスに佐藤は二人いるが、今日休んでいたのは佐藤弘美の方だ。そうそう、今日はいなかった。選択授業で作業グループが同じなので、ちょっと参ったんだ。同じパートを二人で作業していたので、滞ってしまった。

「昨日もいなかったの、気づいてた?」

「昨日? 昨日はわかんねえな。そういえばいなかった気もする」

「西田さんに書いてもらったんだけど、この地図」

 西田は同じ中学だが、クラスが違う。なるほど、市原と同じ中学の彼女なら、家を知ってるかもしれない。いやまあ、その理論だと俺も知ってるはずなんだが。

「西田さんと佐藤さんが仲良かったらしいのね。それで、二日連続で休んでて、電話にも出ないんだって」

「……市原と同じ?」

「市原さんは電話に出てるよ」

 ああ、そうか。教師が連絡したとか言ってたな。

「もう一人、一組の雅さんも」

「雅? いなかったっけ」

「うん」

 雅は友人の彼女だ。他に二人ほど混ぜて、よく五人で遊んでいる。

「雅さんは一昨日から。何も聞いてない?」

「聞いてない。雅も電話に出ないのか」

「親が出たみたい。なんでも昏睡状態で、今入院してるって」

「入院!?」

 ちょっと待て、俺は何も聞いてないぞ、そんなこと!

「なんだか、ちょっと変な感じがするよね」

「……そうだな。つか、それより雅は大丈夫なのかよ」

「わかんない、命がどうこうって話じゃないみたいだけど。わたしもちゃんと聞いたわけじゃないんだ。一昨日あたりはただの風邪っぽい感じだったらしいんだけど、今日の昼くらいから急に悪化したとかで……」

「伝染病とかじゃないだろうなぁ」

 話を聞いてると嫌な感じだ。これがニュースか何かで見たなら「怖いね」で済むのだろうが、身近な人間だけに気味が悪い。

「病気っていうか、なんか、呪いみたいだよね」

「呪いって、お前」

「だって……」

 言うまでもない。俺も、市原の噂のことを思い出していた。タロットカードを広げて占いなんてしている、気味の悪いクラスメイト。毎夜黒魔術を行っているという、滑稽で陳腐な噂話。

「やめろって。なんだ、はっきりしてるわけじゃないんだからさ」

「あ、そうだね……」

 自分の立ち位置を思い出したのか、柚子浦はこほん、と咳をした。頭の中から嫌な考えを振り払ったのだろう。クラスのまとめ役がそんな噂を真に受けるのは、確かにマズい。

「そ、そういえば柚子浦、その小指、なんかのおまじないか?」

「え?」

 話題を転換しようと、ちらちらとあたりを見回す。すると、柚子浦の右の小指に、なにやらこよりが巻きつけてあるのが目についた。目立たないが、鞄にも同じ物がついている。

「あ、うん、そう、おまじない」

「あ、本当にそうなんだ」

「うん。効果は内緒だけど」

 柚子浦はそう言って微笑んだ。ふうん。そんなおまじないがあるんだな。

「ああ、えっと、この喫茶店がそこだから、あの角の先だな」

「あ。うん」

 喫茶店を曲がった先に、その家はなんということもなく建っていた。二階建ての一軒家。駐車場もあるが、車はない。親は仕事に行っているらしい。ずいぶんくたびれたマウンテンバイクが置いてあるが、あれは市原のだろうか。

「ここだね」

「ああ」

 市原という表札を確認して、俺はインターホンを押した。

 ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえた。俺のものか柚子浦のものか。ちらりと彼女を見ると、変に緊張しているのか、神妙な顔をしている。俺も似たようなものなのかもしれない。

 返事がない。頭の中で二十秒数えて、もう一度押す。更に二十秒待つが、やはり返事はなかった。柚子浦と顔を見合わせる。

 まるで、そのタイミングを計ったかのように、

「――誰」

 玄関を開けて、市原霧子が現れた。


□4

 市原霧子は酷い格好だった。肩を越えて伸びる長い髪はボサボサで、ジャージの裾からシャツがはみ出ている。眼鏡の奥にある瞳は不機嫌そうに歪められて、それだけで殺されそうな視線を俺たちに投げかけていた。なんというか、記憶の市原とはイマイチ噛み合わない。

「誰、何の用」

 本当に不機嫌そうに、ブツ切りの問いをぶつけてくる。柚子浦の方を見ると、市原を見て度肝を抜かれているのか、ぽかん、としていた。仕方なしに俺が対応することにする。

「ええと、何の用っつか、同じクラスの巴だけど」

「はぁ? ――ああ。そっか、今日で何日目? 三日くらい?」

「え、なにが?」

「日数。休んでる日数よ」

「あ、ああ、いや、一週間目らしいけど」

「……一週間!?」

 ぎょ、と目をむいて、市原は頭を抑えた。うあー、と悲鳴をもらす。

「やっちゃった……。ああ、ああそうわかったはいはい。明日から学校行きます」

 ぱたぱた手を振って、市原は面倒くさそうにそう言った。そのまま家に戻ろうとするのを、

「ま、待って!」

 柚子浦が止めた。

「市原さん、どうして一週間も休んでたの、風邪だって言ってたじゃない!」

「ああ、嘘じゃないよ。最初の二日は風邪だったし。えっと、誰?」

 柚子浦は一瞬言葉に詰まった。柚子浦を知らない奴なんてクラスにはいない。なんせ学級委員長だ。

「ゆ、柚子浦だけど」

「ユズウラー。ユズウラー。あー、あれか、イインチョか。ごくろうさん、面倒だったでしょ。ちょっと最近忙しくてさ」

「だから、何やってたのよ!」

「想像ついてるんでしょ」

 そこで、市原はニヤリと笑った。そんな市原の笑い方を見るのははじめてだった。というか、笑ったところを見たのがそもそもはじめてだ。

「呪ってたんだよ、ユズウラさん」

 ゆらりと右手をあげて、市原は柚子浦を指差した。その指先に動きを止められたように、柚子浦が口を開いたまま停まってしまう。

「柚子浦?」

「あ、う……」

「わざわざ来てもらって悪いけど、家にあげるわけにはいかないのよね。なんせ呪いの真っ最中だからさ」

「あ……!」

「それじゃ、また明日」

 柚子浦が何を言うより早く、パタン、と扉が閉じられる。

 なんだ、今の。

「ゆ、柚子浦」

「……帰ろう、巴くん」

「え、でも」

 それでいいのか? あんなふうにはぐらかされてしまって。そうだ、それにプリントは、

「いいよ、帰ろう! いやだ、気持ち悪い……!」

「あ、ああ」

 確かに、それには同感だった。さっきの市原は、タロットがどうとか占いがどうとか黒魔術がどうとか、そういう問題でなく気持ち悪かった。教室ではいつも隅で大人しくしてるのに、なんなんだ、あれ。

「……」

 柚子浦はガチガチ震えながら先を行く。相当怯えているようだ。

「送ってくか、柚子浦」

「え、う……い、いい。ちょっと寄るところあるから。ごめんね!」

 駅に向かう分かれ道までまだいくらかあるのに、柚子浦は走っていってしまう。追う気にもなれずに、俺は呆然とその後姿を見送った。


□5

 釈然としないものを抱えたまま、家に辿り着いた。

 柚子浦の様子は明らかにおかしかった。あんなに焦る必要がどこにあるんだろう。市原の雰囲気があまりに異様だったから、それに呑まれてしまったんだろうか。

 市原。市原霧子も問題だ。あいつはなんなんだろう。教室でのイメージと違いすぎる。普段は暗い、言うなれば底なし沼の中にいるような、重く沈殿した雰囲気だというのに、さっきの市原はまるで抜き身の刀のようだった。

 眼鏡の奥から射抜かれた感触が、まだ残っている。

「ただいま……」

 家に入ると、中から声が聞こえた。母さんの声だが、相手の声が聞こえない。玄関先には見慣れた靴しかないので、電話だろう。

「あ、帰ってきたわ」

 と、母さんが俺を見てそう言った。受話器を差し出して、女の子から、とにやにや笑って言う。……柚子浦だろうか。

 ここで母さんにリアクションを返すような体力はない。無言で受け取って、

「――市原霧子よ」

 受け取った姿勢のまま、体が固まった。

「い、いちはら」

「そう、市原霧子よ。柚子浦さんとはわかれたかしら」

「な、なに言って……なんなんだよお前」

「なにと言われてもね。ねえ、今から来てくれない」

「なんで!」

 受話器の向こうで、くすりと笑う気配がした。

「大事な話があるのよ、巴桐音くん」

「……っ」

「同じ名前のよしみじゃない。来なかったら、呪い殺しちゃうわよ?」

「……何の用なんだよ」

「こっちについたら話すわ。柚子浦さんのことよ」

「……」

「それじゃあね」

 ピッ、という発信音と共に、電話は切れた。単調な通話音が後を引き継いで、俺はいらだちながら受話器を置く。

 柚子浦のことだって? いったいなんだっていうんだ。

「母さん、ちょっと出かけてくる」

「え? ちょっと」

 市原についてどうこう言われるのが嫌で、帰ってきたばかりの家を飛び出す。自転車で行こうかと思ったが、鍵は部屋だ。あきらめて、走っていくことにした。

 市原の家は遠くない。もともと、同じ中学の学区内だったのだから。走って十分ほどで、俺はそこに着いた。

「……」

 インターホンを押そうとして、一瞬躊躇する。だが、ここまで来て帰るというのも馬鹿らしい。俺は親指で、思い切りインターホンを押し込んだ。

 今度は、すぐに出てきた。

 格好はさっきと同じジャージの上下。裾からシャツがはみ出ているのまで全く同じ。

「入って」

 市原が、挨拶もなしにそう言った。

 今度こそ、俺は躊躇した。市原の家。傍目にはただの一軒家だが、中身までそうだとはわからない。

「なによ、怯えてるのかしら? 早くしなさい」

 扉を大きく開いて、市原は催促する。玄関の中は、やはり普通の家と変わらないように見える。そうだ、何を馬鹿な。噂がどうあろうと、市原が何を言おうと、呪いなんてばかばかしい。

「ああ、行くよ」

 そうして俺は、市原霧子の家に足を踏み入れた。

「ようこそ、いらっしゃい」

 つぶやきを追って、バタン、と扉の閉まる音がする。まるで死刑宣告のように聞こえた。


□6

「そういえば市原、同じ名前ってどういうことなんだ」

「どうって? 同じ名前は同じ名前。キリネって読むんじゃないの、あれ」

「いや、俺は桐音だけど……」

 市原家の中は、やはり普通だった。普通の廊下、普通の階段、普通のリビング。多分キッチンやトイレも普通だろう。市原霧子の異常性を証明するものは、そこにはなにもない。

「こっちよ」

 市原の先導に従って階段を昇る。二階の廊下も、普通だった。

「お前はキリコじゃないのか」

「あれでキリネって読むのよ。まあ、普段はキリコって名乗るし、書類上もキリコになってるけど」

「……? 意味がわかんないんだけど。それ、お前の名前はキリコっていうことになるんじゃないのか」

「だから、書類上はね。名前なんて所詮後付けでしょ、書類の上がどうあれ、あれは本人の認識が最優先なのよ」

「……」

 意味不明だ。家がどんなに普通でも、こいつはどこかおかしい。

「それに何の意味があるんだよ」

「〝本当の名前が相手にわからない〟じゃない。重要なのよ、名前って。だから同じ名前の人がパートナーだったりすると、色々便利なんだけどね」

 言って、ちらり、とこちらを見る。

「何が言いたいんだよ」

「いいえ、別に」

 そう言って、市原霧子は扉に手をかけた。見たところ、二階の廊下は一本道で、扉はひとつしかない。随分空間が余っている気がするが、そのスペースはどうなっているんだろう。

「ここよ」

 扉が開く。中は暗くて、一瞬様子が把握できなかったが、すぐに目が慣れた。

 最初に見えたのは紙だった。次に確認したのも紙だった。紙、紙、紙、とにかく紙の山。本来あったはずの壁を取り外してしまったのだろう、二階まるまるをブチ抜いているらしいその部屋は、無数の紙で埋まっていた。

「な、なんだよこれ」

「資料。適当なとこ座って。あ、紙崩したら呪うわよ」

「いや……」

 崩さずに歩けるのか、と市原を見ると、彼女は平然と部屋に入って、そのままデスクに向かって一直線に歩いていった。案外平気なものなのだろうか。おそるおそる、市原の後をトレースするように部屋に入る。


 ばさばさばさ。


「……」

「呪うから」

「俺のせいかよ」

 頭が痛くなってきた。ここはなんなんだ。

「さて、柚子浦さんの話だけど」

「あ、ああ。なんだっていうんだ」

 がりがりと頭をかいて、市原は一枚の紙を差し出した。山を崩さないようにおそるおそる近づいて、おそるおそる受け取る。

 ノートの端を切り取ったらしいその紙には、ハートマークが描かれていた。鉛筆で書かれたもので、随分丁寧に塗り潰されている。

「これは?」

「柚子浦さんのものよ」

「……」

 多分、変な顔をしただろう。でも無理はあるまい。これがなんだっていうんだ。

「まあ、なんてことはない話なんだけどね、二ヶ月くらい前だったかしら、それが柚子浦さんの机の中に入ってたのよ」

「なんで、お前がそれを見つけたんだ」

「偶然よ、偶然。それでね、そのハートマーク、なんだかわかる?」

 言われて、まじまじとそれを見つめる。ただの落書きにしか見えない。光に透かしてみたりしたが、やはりただの落書きだ。

「わからん。これがなんなんだよ」

「おまじないよ」

「え?」

「恋のおまじない。〝好きな相手の、名前の文字数分シャーペンをノックして、ハートマークを描き、芯を折らずにそれを塗り潰せれば想いが叶う〟――っていう、おまじない。知らない?」

「知らない。そんなのあるのか」

「らしいわね。まあ、それを柚子浦さんが実践していたわけよ」

「ふうん……」

 なんだか、居心地が悪い。他人の日記を覗き見てしまったような、妙な罪悪感が湧き上がってきていた。

「で、お前は柚子浦のプライベートを暴いて何がしたいんだよ」

「これだけなら問題はなかったんだけど。効果がなかったんでしょうね、彼女、そのうち色んなおまじないに手を出し始めたのよ」

「それで? 別にいいだろ、柚子浦がおまじないしようがなんだろうが。紙にハートマークを書くと誰かが死ぬのかよ」

 柚子浦のハートマークをペラペラと振って、俺はそう言った。なんだか気分が悪い。こういう風に、本人の知らないところで、知られたくないことをベラベラと喋るもんじゃないだろう。

 市原を睨みつけながら言うと、彼女はふう、とため息をついた。

「死ぬのよ、困ったことに」

「は?」

「だから、柚子浦さんが紙切れにハートマークを書くと、誰かが死ぬのよ」

「……なに、言ってんだお前」

 肩を竦めて、市原は眼鏡を引き抜いた。その両眼が、なんだかとてつもなく恐ろしいものを秘めているような――

「巴桐音くん。柚子浦さんがやっているのは〝まじない〟よ。この意味がわかる?」

「意味って、」

「〝まじない〟なのよ。これは、〝ある一定の手順を踏んで望む結果を不当に引き出す〟、そういう行動。この意味が、わかる?」

 ある一定の手順を踏んで、望む結果を、不当に引き出す。

 それは。

「いや、待て、おかしいだろ。柚子浦の望みは両想いになることなんだろ? だいたい、だいたいそうだよ、そんなおまじない程度で、人なんて死ぬはずがないじゃないか」

「あなたが帰った後に調べたわ。佐藤弘美と雅優雅。今休んでるわよね」

「……おい、待てよ」

「二人とも、あなたに近しい人間だった。そして二人とも、原因不明の昏睡状態にある」

「待てよ!」

「原因不明なのは、今の医学科学ではわからないことが原因だからだわ。柚子浦さんのおまじないの結果がこれよ」

「そんな、証拠は……」

 柚子浦のおまじない。

 ふと、気がついた。小指と鞄、こよりはふたつあった。

「かん、関係ない!」

「ああ、なんだ、心当たりがあるのね。そういうことよ、巴桐音」

 違う、そんなはずない。

「柚子浦は、両想いになるために恋敵を殺そうなんて考えるやつじゃない!」

「重要なのは認識なのよ。例えばあなたが誰かに恋をしていて、恋を叶えるおまじないをしようとするわよね。そんな時、どんなことを考える?」

「そりゃ……そうだよ、そんなの、好きな人に振り向いてもらおうって、そういうことを考えるだろ!?」

「そうね。それはなぜかというと、今は振り向いてもらっていないからだわ」

「……え」

「最初のうちはまだいい。でも色んなおまじないを試してるうちに、不安になってくる。どうして効かないんだろう? どうして振り向いてくれないんだろう? それは、今想い人が別の方向を向いているからだ。だからアノヒトはあんな女ばかり気にして、私のほうを向いてくれない――」

「待てよ、待てよ! 佐藤と雅が倒れたからって、柚子浦のせいとは限らない!」

「――そんな時、本当はどんなことを考えているのか。そんなものは簡単よ」

「待てって言ってるだろ!」

「〝あんな女、いなくなってしまえば――〟」

「待てよ!」

 があん、とデスクが大きな音を立てた。右腕がじんじんと痺れて、一瞬送れて拳が痛み出す。その痛みで、はじめて自分の手がデスクを叩いたのだと知った。

「……柚子浦さんはあなたが好きなのよ。そんなの今更でしょう?」

「だって、でも、待ってくれ市原。お前じゃないのか、それは。そういうことをするのは、お前のはずなんだ」

「くだらない噂話に振り回されないでちょうだい、失礼な話だわ。繰り返すわよ、巴桐音。これは〝まじない〟なのよ。あなた、まじないってどういう字を書くかわかる」

「まじない、って」

 口偏に、兄。


「――〝呪い〟よ」


 それこそ、まるで死刑宣告のように。市原霧子はつぶやいた。


□7

「巴くん、いらっしゃい」

 少し困ったような笑顔で、柚子浦は扉を開けた。

「急に悪いな」

「ううん、大丈夫。でもウチに来たいなんて、どうしたの?」

「ちょっと、話したいことがあって」

 ドクン、と心臓が音を立てた。柚子浦は独り暮らしだ。高校に入るあたって、近い駅に引っ越してきたのである。独り暮らしとはいえ二駅ほどの違いなので、週末は実家に帰っているらしいが。

「この部屋くるの久しぶりだな」

「そ、そうだね」

 ちらりと視線を飛ばす。柚子浦の右手には、相変わらずこよりが巻かれている。更に、気づかれないように部屋を見回す。以前と何か違う部分はないか。それを探す。

「えっと、話って、なに?」

「ああ、いや、その……」

 俺は、市原に言われてここに来た。だけどそれは、柚子浦を疑っているから来たんじゃない。俺は、柚子浦の無実を証明するために来たんだ。

 柚子浦は呪いなんてやってない。二人が昏睡状態になってるからって、それは柚子浦のせいじゃない。それを証明するために、ここに来た。

 部屋に、視線を巡らせる。呪いの形跡なんてない。ほら見ろ、柚子浦は無実だ。彼女は何もしていない。

「……柚子浦、おまじないの本とか、集めてるんだ?」

 本棚に、おまじないと題のある本が、四、五冊見えた。

「あ、うん、まあ」

「……その下の、カーテンがかかってる棚は?」

「やだな、人の部屋荒らしに来たの?」

 冗談っぽく、やんわりとたしなめる。誤魔化している? 違う、そうじゃない。誰だってそんなふうに部屋を見られたら嫌に決まってる。

「柚子浦、そういえばさ、猫は元気か?」

「え、ああ……う、ん、元気だよ?」

 一瞬、口篭もった。

 違う、何を考えてる。俺は柚子浦の無実を証明するんだ。そのために来たんだ。違う、違う。

「ねえ、話って、えっと……」

「あ、ああ、そうだよな、その」

 ギリ、と無意識に奥歯を噛んだ。

「雅が――死んだらしい」

「え?」

 柚子浦の視線が、その一瞬、本当に一瞬、右手のこよりに飛んだ。

「ほん、とう?」

「――あ、」

「あ、きっと、きっと市原さんだよ! あの人おかしかったじゃない! そうだよ、市原さんだよ……!」

「柚子浦っ!」

 口元を抑える柚子浦の脇を抜けて、本棚のカーテンを引きあける。すぐに肩を抑えられて、柚子浦が体で棚を隠した。

「な、なにするの!」

「柚子……」

 見えなかった。見えなかったけど。

「ゆずうら……お前」

「ど、どうしたの? おかしいよ、巴くん。い、市原さん、市原さんが怪しいよ」

「……笑ってる」

「え」

「笑ってるよ、お前……さっきからずっと!」

「え?」

 柚子浦が不思議そうに、顔に手をやる。何度も何度も、ぺたぺたと触る。その間もずっと、口元はほころんだままだ。

「雅が死んだって聞いて、お前ずっと笑ってるんだよ!」

「え?」

 後ずさる。部屋を視線が巡る。バスルームの扉が見える。俺はそこに飛び込んだ。

「あ、ダメ……ッ!」

 なんの変哲もないユニットバスだった。ただ、洗面台の上に、大きなビンが乗っていた。毎日毎日、それを鑑賞するために置いてあるようだった。ビンの中身は花じゃない。毛だった。

「あ」

 毛にしか、見えなかった。

〝この公園は相変わらず猫が多いね〟

 その中に、

〝でもなんか減った気がするけど〟

 両手で抱えられるほど大きなビンの中に、

〝猫は元気か?〟

 ぎっしりと、

「み……ッ!」


 猫の、耳が。


「うわあああ!」

「やだ、やだ、なにしてるの、なにしてるのよ!」

「ゆ、柚子浦、ゆずうら! お前、お前なに、なんだよ、なんだよあれ!」

「違う、違うよ、ちが……あれは、あれはその、おまじない、おまじないで」

「柚子、浦……」

「う――」

 柚子浦が、口元を抑える。体をくの字に折って、痙攣をはじめた。

「おい、柚子浦?」

「うぇ……っ、げっ、げぁっ……!」

「柚子浦!」

 なんだ、なんだこれ、どうなって……

「ぐ……!」

 携帯電話を取り出して、登録したばかりの番号を呼び出す。コール二回で相手が出た。

「どうしたの」

「市原! 柚子浦が、急に苦しみだして、なんだよこれ、どうすればいいんだ!」

「ああ、それ、私が返した呪いよ」

「は……?」

「思ったより早かったわね。まあ、放っときなさい。三十分くらいで収まるから」

「さん……」

 柚子浦は胃液と一緒に血まで撒き散らしながら、目に涙をためて苦しんでいる。三十分もこのままだってのか!

「それよりどうだった? 柚子浦さんだったでしょう」

「……俺はわからない。でも、それらしいものはあった。来てくれないか」

「ていうか、呪いがそこに返ってる時点で柚子浦さんなんだけどね」

 プチ、と電話が切れる。わかってる。俺にだってわかってるよ。

「柚子浦、大丈夫か」

 手を伸ばす。その腕が、胃液と血にまみれた柚子浦の右手に捕まった。

「ちがう、よ。わたしじゃない……ともえくん。わたしじゃ」

 この時。俺ははじめて、柚子浦を恐ろしいと思った。

 苦しんで、苦しんで、胃液と血を撒き散らしながら、柚子浦は俺の手を掴んで、涙をぼろぼろこぼして――笑って、いた。

 小指のこよりが、やけに白く見えた。


■8

 市原霧子の噂を一言でまとめると「呪いとかやってそう」ということになる。それ以上でも以下でもない。そうして現実もその通りだった。

 市原霧子は呪いに詳しい。だがそれだけだ。野球部の連中が、どう打てば球が遠くに飛ぶのかを知っているのと大差ない。

 事件から――市原霧子が学校を辞めてから一月が経って、ようやく俺はそれを理解した。

 彼女はただ降りかかる火の粉を払っただけで、もう一人の彼女は、ただ自分の望みを求めていただけで。

 二人とも、学校からいなくなってしまった。

 実際には雅も佐藤も、あの後すぐに目を覚ましている。市原が色々やってくれたらしいが、詳しいことはわからない。

 柚子浦は学校を辞めた。どこに行ったのかはわからない。ただもう、俺の前には姿を現さないと言っていた。

 なんと応えたのか覚えてない。今ならなんと応えるのかも、わからない。

 市原が辞めた理由なんてもっとわからない。本業が忙しくなって来た、とかわけわからんことを言っていた。意味不明だ。

 一通り終わって、何も残らなかった。

 まるで底なしの泥沼が、何もかも全て飲み込んでしまったかのように。

 ……ああ、でも、この事件の発端が誰かを好きだという純粋な想いならば、それだけは残っているのかもしれない。

 こんな話がある。両想いの原理ってやつだ。世界にはこんなに人間が溢れているのに、両想いの人間がそんなにゴロゴロいるなんておかしくないかっていう話。つまり、誰かに好かれているという想いが、誰かを好きだという想いを生むのだということ。

 もし本当に柚子浦が俺を好きだったというのなら、それもまた、「柚子浦を好きだという想い」が生んだものだったのかもしれない。

 だから、この想いはここに埋めておこう。泥沼に咲く、一輪の美しい花のように、いつまでも白く咲き誇ってくれればいい。

 花の持ち主がそれを忘れてからも、ずっと。


「――終わった、桐音」

「終わったよ、市原」

 振り返る。夕陽に照らされる校庭に、市原が佇んでいた。

「名前で呼ぶなよ」

「いいじゃない。私のことも名前で呼んでいいわよ」

「そうかい。今日は仕事はいいのか、市原」

「ま、たまにはね。柚子浦さんの事件が上々の解決だったから、結構繁盛してるし」

「やっぱり、そういう仕事なのか」

「うん。結構多いのよ、呪ってる人も、呪われてる人も」

 人の恨みつらみに関わるような仕事だ。どう考えてもろくなもんじゃないだろうに。

「で、急に連絡してきたのはなんだったんだ」

「いや、仕事が予想より忙しいのよね。手伝ってもらえないかなって」

「……なあ、市原。なんで俺に〝本当の名前〟を教えたんだ? 知られたらまずいから隠してるんだろう」

「まあね。なんていうのかな、あなたには、あんまり隠し事をしたくないし、知っておいて貰った方がいろいろ得なのよね。パートナーになるわけだから」

 勝手なことを。

「もうひとつ。結局最後までわからなかったことがあるんだけど」

「うん?」

 俺は、ため息をついて市原を見据えた。

「俺とお前が付き合ってるって噂、誰が流したんだろうな」

「……」

「そんな噂がなければ、柚子浦もひょっとしたら、おまじないなんてやらなかったんじゃないかな」

 市原は首を振った。

「それはないわね。あの子は噂が流れる前から、呪いに傾倒していたから。時期が早まった程度の問題でしょう」

「そっか。お前、噂が流れ出した時期も、柚子浦がずっとおまじないやってたことも、知ってんだな」

「知ってたわよ」

 空を見上げる。夕焼けはもう終りに近づいている。やがて、泥の底のような暗闇が訪れるだろう。

「市原。仕事は、繁盛してるんだな」

「うん。柚子浦さんの事件が上々の解決だったのと、まあ、タイミングが良かったっていうのもあったわね。大きい仕事が入るか否かっていう状況だったから」

「そっか」

 地面に視線を落とす。

 これは俺の想像だ。柚子浦だけを悪役にしたくない俺の、意地の悪い勘繰りだ。だけど、なぜか確信があった。

 市原が何をしたのか。この事件に、どう関わったのか。泥沼の底にまではまりこんだ今なら、はっきりとわかる。彼女は、そう、柚子浦を焚き付けのだ。タイミングよく、自分の仕事に実績をつけるために。

 いつか踏み外すだろうその背を、押した。

「俺はお前が嫌いだよ」

「そうかもね」

 歩き出す。泥の中を泳ぐように、足が重い。

「柚子浦は、あのまま何もしなかったらどうなってたんだ」

「関わった人、多分あなたも、本人も含めて、全員死んだでしょうね。人を呪わば穴ふたつ、って言うでしょう」

「そっか」

 ずるずると、泥を這いずって、市原の脇に並ぶ。

「それで、俺は何をすればいいんだ」

「やっぱり、桐音はいい奴ね。思ったとおりの人間だわ。これからもよろしく」

 市原が笑う。眼鏡をとって、手を差し出してきた。

 ――泥沼にだって花は咲く。

 例え肩まで泥に浸かっていても、見上げれば月は光っている。

 俺はその手を取った。泥沼に咲く一輪の花を、いつまでも美しいと思えるように。


泥沼に咲く花のように・了

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