闇の皇太子 宿命の兄弟/金沢有倖

ビーズログ文庫アリス


「この世界の他にも、世界ってある──后さんは、そんな話を信じますか?」


 言が訊いてくるのに、后は思わず苦笑してしまった。

 こう見えて、后は現実主義であると自負しているのだ。


「まさか。宇宙人だって怪しいって思ってるくらいなのにさ。異世界なんて、あるはずねーって」

「異世界というか──天界とか地獄とか。──そうだな、この世界が太陽の光が降り注ぐことを必要不可欠とするなら、月光や闇を必要とする闇の世界もある、ということを」

「……はあ?」


 言の言いたいことがわからない。

 思わず、顔をしかめて疑問符を投げつけてやれば、言は端正な顔を緩めて笑った。


「信じられないって顔をしてるけど──あるかもしれないですよ? だって、表裏一体って言葉があるくらいでしょ? 光があれば影もできるし──意外に、この世を支えている影=闇の世界ってあるかもしれない」

「……お前、ミステリー読みすぎ」


 呆れてやる。

 そんな后は──この時。

 言の意味深な笑顔の意味を、まったくわかっていなかった。

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