物事を裏から見ると

 私は、幼いころから物事を真っ直ぐ見ないところが有ります。というか、これは私の父から受け継いだものなのです。


 復員兵で寺の住職の三男坊だった私の父は、二人の兄に唆されて、祖父が孫の学資にするんだと所有していた土地の権利書を持ち出し、売り払って当時(昭和二十年代後半)のお金で六千万円の大金を手に入れ、札幌から石狩に向かう鉄道を引くつもりだったらしい。しかし、その計画も昭和三十年代後半には頓挫したのだけど……。


 計画が進行していた頃、父は政治的な根回しをするため、当時の国会議員だった河野一郎さんや、桜内義雄さんなんかとも会っていたらしい。


 そのような経験からだろうか、父は私に物事には表と裏があると話して聞かせてくれたものです。つまり、簡単に言うならば総理大臣の会見は表の舞台。その裏で根回しや水面下での交渉をする人間が必ずいます。所謂、寝業師と呼ばれる人なのですが、戦後最高の寝業師と呼ばれた三木武吉は数多くの伝説を残しています。


 それに比べると近年の政治家の先生たちは……。


 ま、それはそれとして。例えば新聞の記事はそのままを読んではいけない。テレビのニュースはそのままに見てはいけない。つまり、情報を素直に受け取ってはいけないということです。


 常にマスコミの流す情報には、意図が有ると思っていた方が良いということです。もう亡くなったのですが、多少なりとお付き合いのあった脳神経外科の先生から、こんな話を聞いたことがあります。彼は落語家先生としてかなり有名な方だったのですが、時折某テレビ局でお昼の奥様向けワイドショーに出演したことが有ったのですが……。彼が私に語ってくれたことは、非常に興味深いものでした。


 それは、どのように質問に適性に応えていっても、最終的にテレビ局の思惑に沿った答えになるように誘導できるように質問が用意されている。その為、彼は自分の考えと全く逆の事を言わされてしまい、帰り際に「もう一切テレビには出ない」とディレクターに宣言してきたと私に話してくれました。


 そう、テレビ局は自分たちの考えが正しいと言いたいがために、権威を利用する。つまり、○○大学の先生とか✖✖病院の院長先生なんて肩書の人が出てきたときは、眉に唾を付けてみたほうが良いということです。だからと言って出演した先生が悪いと言っているのではありません。


 私たちが受け取る情報には、必ず何らかの意図が有るということです。だから、数年前に某テレビ局で、血液サラサラを捏造するという事件が起きたりしたんです。


 また、政治色の強い報道に出てくる学者さんは、冷静なる第三者なのか、御用学者なのか、はたまた完全なる否定者なのか。そこのところをしっかりと見極めて見ないと騙されます。


 誰も騙されなかったとは思いますが、福島原発の事故の時、プルトニウムは無害であり、飲んでも大丈夫的な発言をした学者さんも居ましたが、そんな発言をした学者が実際に飲んでみせたという話は聞いたことが無いですよね。もしテレビ局がその発言を真に受けて、実際に飲んでいただきましょうなんて番組を企画すれば、彼は恐らく「そんな危ないことできるわけないだろう」と怒りまくったのではないでしょうか。


 情報の発信者は、発信すべき情報に一番見合う専門家を選びます。どのように話を進めさせれば庶民の関心を引き、受け入れられるか。話を進めるためのコーディネーターもいるなんてことも聞いたことが有ります。


 兎に角、私達は簡単に騙されないようにしなくてはならない。という事でした。


 

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