みんなでもぐら叩き

けろよん

第1話 みんなでもぐら叩き

 ある晴れたすがすがしい日のことです。

 淳也君と清君と今日子ちゃんと舞ちゃんの仲良し4人組は近所のもぐら平原にもぐら叩きをしに出かけました。

 もぐら平原というのは広々とした見晴らしのいい平原で、そこにはたくさんの穴が開いていて、よくもぐらが顔を出すという、まさにもぐら叩きをするのに打ってつけの場所なのでした。

「よーし、もぐら叩きをするぞー」

 淳也君が手に持ったメガトンハンマーを軽く振り回しながら準備運動をしています。彼はとても力持ちで頼れる4人のリーダー的存在なのです。

「今日はB-35ポイントでよくもぐらが顔を出しているようですね」

 その横で清君が冷静に分析データを照合しています。彼はひ弱で暗いけど頭の良いチームのブレーン的存在なのです。

「じゃあ、早速そこへ行きましょう」

 元気だけが取り柄の向こうみずで頭の軽い今日子ちゃんがずんずんと先へ行ってしまいます。

「待ってください、今日子さん。B-35ポイントがどこか知っているんですか?」

「知らないけど、行けばつくっしょ」

 注意を促す清君に、今日子ちゃんは後ろ向きに歩きながら軽く答えを返します。そして、後ろの穴に落ちていきました。

「今日子ちゃんは元気だなあ」

 それを見て病弱な舞ちゃんはため息をもらします。わたしもみんなみたいに元気になりたい、そう思う舞ちゃんでした。

「呑気に呟いている場合じゃないぞ、舞! 今日子が穴に落ちたんだ!」

 さすがはみんなのリーダー的存在の淳也君です。よく状況を見ています。

「待っていろ、今日子! 今助けに行く!」

 そして、熱血漢でもある淳也君は勇敢にも暗い深い穴の底へと飛び込んでいったのでした。

 元気のなせる技というのでしょうか。そんな彼を見て舞ちゃんはうらやましいと思います。

「困ったことになったぞ、舞ちゃん」

 パソコンのデータと睨み合いながら、冷静な清君がうなるような声を出しました。

「どうしたの?」

 いつも沈着で冷静な清君が取り乱すなんて珍しいことです。舞ちゃんもそわそわとしてしまいました。

「僕の分析によると、どうやら僕達は二人でこの状況を打破しなければいけない状況に追い込まれてしまったようだ」

「まあ」

 困ったことです。淳也君と今日子ちゃんの欠けたこの二人ではとても戦力と呼べるものではありません。

「帰ろ」

 舞ちゃんは最も効果的と思われる答えを口にしました。

「そうだな、僕達はもぐら叩きになんて来るべきじゃなかったんだ」

 清君も賛成の意を表明しました。そうして二人は帰途へと着きました。


 次の日、舞ちゃんと清君が学校へ行くと、淳也君と今日子ちゃんも元気に登校してきました。二人は舞ちゃん達に昨日穴に落ちてからの冒険たんを面白おかしく話して聞かせました。放課後にはまたもぐら叩きに行こうね、という約束が出来ていました。

 そして、4人は再びもぐら平原へとやってきました。

 病弱な舞ちゃんは思います。楽にもぐら叩きが出来る道具があればいいのに。

 そんな時のことでした。

 遠い空から飛んできたミサイルがもぐら平原を直撃したのは。


 1発だけだったのでおそらく誤射だったのかもしれません。しかし、そんな間違いはみんなには関係ありませんでした。ミサイルが来た、それだけが目の前に迫った純然たる事実なのです。

 空から落ちてきたミサイルは運命的にももぐら平原の穴の中へと飛び込むとそこで大爆発を起こしました。地中全部に広がるかと思えるような大きな揺れ。みんなは必死に地面にしがみついて耐えました。

 やがて、全てが終わった頃。4人は無事でした。しかし、もぐら達は全ていなくなってしまっていました。

「なんと言うことだ。もぐら達がいなくなってしまった……」

 淳也君はがっくりと肩を落としました。

「わたし達はもうもぐら叩きを楽しめないの?」

 今日子ちゃんの声は震えています。

「元気になったら、わたしももぐら叩きをするのが夢だったのに……」

 舞ちゃんは静かに呟きます。

「いや、まだ手がないわけじゃないぞ」

 そんな彼らを元気づけるように言ったのは、清君でした。

「え!?」

 みんなは驚いて振り返ります。

「僕たちはもぐら叩きの楽しさを知っている。ならば再現することも出来るはずだ」

「そんなことが出来るの?」

 今日子ちゃんは半信半疑だ。その気持ちは淳也君と舞ちゃんも同じでした。

「難しいかもしれない。でも、出来るはずだ。僕たちはもぐら叩きが好きだから」

「もぐら叩きが好き……か」

 その気持ちをみんなで噛みしめます。彼らの思いはまとまりました。

「そうだね。こんなに楽しいことを終わらせられない」

「わたしも頑張るよ。元気になって。もぐら叩きをするんだ!」

「ああ、やろう!!」

「おう!!」

 そして、4人の研究の日々が始まりました。

 もぐら叩きを愛する熱い気持ちを原動力に。

 このハンマーで叩く力強い感覚を。わたし達の愛したもぐら叩きを。誰でも楽しめるように。今この世界に復活させる。

 やがて彼らの研究は実を結び、現在のみんなに愛されるもぐら叩きが誕生したのです。


 さあ、みんなで!もぐら叩きに出かけよう! 

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