第48話 美桜がする決断

1人になった所で、何かをする訳でもなく、したい訳でもなく、とても暇な時間を過ごしている。

「なら、勉強しろよってなるんだけどね……」

一応、学生だし。本当に一応程度だけど、高校生だし。

とまぁ、やる気のない時に勉強しても、あまり頭に入る訳でもないし、それに今勉強した所で、本格的に作戦を開始した時に、それが役立つとは到底思えないし、死ぬかもしれないのに、そんな事する気は無い。

だったらと思い、俺は引き出しに珍しく丁寧に入れておいた聡夫からの手紙を何度目か読む事で時間を潰す事にした。




「お兄ちゃん、ちょっといい?」

「いいけど、なに?」

日も暮れ始め、漸く下に降りると、美桜ちゃんに呼び止められた。

「あのさ、お兄ちゃんが残した手紙を読んだよ」

聡夫の残した手紙の事だ。

「それで?美桜ちゃんはどう思った?」

多分、俺宛の手紙とは全然内容が違うのだろうけど、同じ事を書いてある部分もあるだろう。

「正直、何が正解で何が間違いか分からないよ。でも、2つ確かになった事は、我妻家が敵だということ。お兄ちゃんに付いて行くしか無いという事」

まぁ、残された道が少ない中で、これが正解のルートだろう。いや、決別もあるのだが、金も無く、人脈もない美桜ちゃんに独り立ちは今は無理だろう。もしかしたら、永遠に無理かもしれないが。

「それで?俺に付いて来るって決めたんだろうけど、どうしたい?」

「どうするって……付いて行く」

「付いて来てどうする?」

「……だから、お兄ちゃんの行く所に私も行く」

「自分の目的もなくか?」

「……」

そこで美桜ちゃんは完全に黙ってしまった。

「答えられないか。なら、きちんと答えを見つけろ。聡夫の残した手紙の真意を読み取れ。お前の本当の兄貴の最後の手紙なんだし」

俺は美桜ちゃんの兄であって、兄ではない。義兄なのだから。

「んじゃ、もうそろそろ晩御飯だし、食べに行くか」

「うん!!」

美桜ちゃんは大きく首を縦に振って答えた。

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