第43話 再会4
「さて、どこで練習しようか」
暗国軍本部を後にしてから、俺は魔法の練習出来る場所を考えていた。
「誰にも見つからず、誰にも見つけられず、誰にも迷惑をかけず、広い場所ってないもんかな〜」
最悪、山か無人島を買えば良いだけなんだけど。
「……お兄ちゃん?」
ん?聞き覚えがある声だな。
「聡夫お兄ちゃん……?それとも剣お兄ちゃん……?」
「やっぱり美桜ちゃんか」
もう帰ってきてたんだ。
「その呼び方は剣お兄ちゃんだよね?」
「そうだよ。坂之上剣だよ」
「……雰囲気変わったね」
「そうかな?」
「うん」
自分じゃ、いつも通りのつもりなんだけどなぁ。
「取り敢えず、家来る?」
「お言葉に甘えさせてもらう」
「ただいま〜。美桜ちゃん見つけたから、連れてきた」
「うそ!?まだ片付いてないのに!!」
「大丈夫ですよ。それに、急に押しかけた私も悪いですし」
なんか、美桜ちゃんの方が変わった気がする。
「そんな事言わないの。貴女はもうこの家の家族と同じなんだから」
まぁ、そう思ってるのは、俺もだけど。
「……そうですか」
「取り敢えず、部屋に荷物置いてきなよ。俺の部屋でも、美桜ちゃんが居たと思われる部屋でも、どこが別の部屋にでも」
「そうする」
美桜ちゃん、やっぱり、
「変わったわね」
「やっぱりそう思う?」
「そりゃね。まるで、何かに気付かされたような感じがする」
それは多分、聡夫が身を以て教えさせに行った事だろう。
「あの、やっぱり迷惑でした?」
「「うわぉ!!」」
なんかめちゃくちゃ申し訳なさそうにしてるんですけど。
「そんな事ないって」
「そうそう、美味しいお茶菓子があるのよ。待ってて」
なんか、美桜ちゃんに気を遣わせてる。
「そう言えば、美桜ちゃん。聡夫とケンカしたらしいけど、どうしたの?」
「……」
あ。これ地雷踏んだかも。
「……私の考えが甘過ぎたんです。だから、お兄ちゃん、我妻聡夫とケンカしたんですよ……本当にバカですよね……」
まさか、本当にそれで暗かったとは。
「美桜ちゃん。聡夫が言いたかった事も事実だけど、美桜ちゃんが持ってた気持ちも事実なんだよ?」
「え……?」
「聡夫は希望を持たず、帰りたい場所と、帰れる場所を別として考えてた。確かに、それは正しい。だけど、帰りたいって思える場所がある、そこはまだ存在するって思うのも、それを口にするのも間違ってはないんだよ」
だけど、正しいとは言えない。俺は聡夫の意見に賛成だからだ。
「だから、聡夫がどう考えてたかはもう分からないけど、美桜ちゃんは美桜ちゃんの考えで生きるべきだよ。聡夫に無理に合わせようとしなくて良いんだから」
無理があり過ぎる。その言葉に何の価値もない。だけど、美桜ちゃんは涙を零した。
「大丈夫?」
「え……?」
自分でも気付いてなかったようだ。辛かった事も。
それから、美桜ちゃんは泣きに泣いて、お茶菓子を囲んで色々と話して寝てしまった。
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