第22話 実験開始
銀行から自主規制円を下ろして私は家に帰り、残り半分が入っている通帳をお兄ちゃんに渡した。
「それじゃあね、お兄ちゃん」
「さようなら、美桜」
私達は呆気ない人生で最後の挨拶を済ませ、私は東京に戻るべく、さっさと出て行った。お兄ちゃんと同じ空気を、長い間吸いたくないのが理由なのは言うまでもない。
(やはり、銀行に行く時間では、考えを改められませんでしたか。まぁ、それでも良いでしょう。なんせ、この方が動きやすいのは確かなのですから。それに、美桜ももうそろそろ気付いてほしいものですからね。それでは、私に課せられた事をきちんと終わらせてから、剣君にバトンを渡しますか)
僕は、僕自身が書いた手紙の封筒を見ながらやる事を整理し、やるべき事を終わらせるべく、奏さんに今のリハビリに合っているスポーツジムや、市民プールの場所を教えてもらい、取り敢えず普通に学校に通えるぐらいの筋力を取り戻す事にした。
私は少しでも確実に東京に近付くために、地図上での少し遠回りして行くことにした。お兄ちゃんが何故引き下がらず、あっさり送り出したのか分からなかったけども、私は気にしないようにしていた。だけど、後の私は後悔する。あっさり送り出した理由に気付いても、もう確認する方法はないのだから。
日曜日と夏だけあって、市民プールは中々混んでいる。と言っても、僕がいる温水プールには、僕と男の監視員以外誰も居らず、監視員は本当に仕事をしているのか怪しいぐらいに思えた。
「貸切と言ってもいいぐらいに屋内プールには誰もいませんね〜。静かなのはとても嬉しいですし、この状況なら、僕が好きに使っても迷惑にはなりませんしね〜」
そんな嫌味を言っても、本気にしてないのか、嫌な顔も警戒もせずに、ただボーッとしている様に見える。なので、仕事ぶりを実験したくなった。
実験1日目
泳ぎ25m専用プールで歩く
「あの〜。そこ泳ぐ場所なんで、誰も居ないからって歩かないでもらえます?そういうのこんな状況でも、一応迷惑行為に取れますし」
迷惑行為の相手は多分監視員だろう。だが、きちんと働いている事ができた。
「スミマセン。以後気をつけます」
わざとやっておいて何に気をつけるのだかとか思っているが、監視カメラがきっちり撮っているので、形式上謝り、真面目に歩いて、泳いで帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます