異世界に召喚されたので人類と魔王を滅ぼしてみます。

蒼井・ミクロ

プロローグ

「異世界の勇者を、召喚せざるをえません」


漆黒のローブに包まれた少女が淡々と言い放つ。

この少女の一言で、先程まで静寂が続いた円卓会議に亀裂が走った。


「ふ、ふざけるでない!異世界の勇者だと!?本当に今がその時なのか!」


怒涛の勢いで立ち上がり、憤慨した表情で少女を睨みつけるのは、半ば50歳程の初老である。身なりが良く、貴族の類いだ。


「これこれ、少しは落ち着かんか。お主は昔から気が短すぎる。恐らくは彼女なりの考えがあってこその一言であろう」


貴族の憤慨を収めたのは、彼女とは相反する白いローブを纏った老人であった。杖を両手で握っており、風貌は賢者と表すに相応しい。


「それで、異世界の勇者を召喚するとなると、腕の立つ召喚士が何人犠牲になるか分からない。それを知った上での発言であろうな?」


圧のある低い声で彼女に問いかけるのは、漆黒の鎧に包まれた騎士であった。頭をアーメットヘルムで覆っており、素性は不明だが、この円卓会議のマスターを務めている。


「勿論承知済みです。しかし、新生魔王が現れてから1年。たった1年間で人類の領域の35%の侵略を許してしまいました。これ以上の侵略を止める為に、魔王と同等の力を持つ勇者を、至急手配する必要があるのです。どうか……ご決断を」


再び円卓会議に静寂が訪れる。スグに決断出来ない原因は、召喚士の欠如

この世界では召喚士は非常に重宝される職業であり、召喚士になれる者は、生まれつき神に好かれたごく一部の人間だけだ。


そして、漆黒の鎧に包まれた騎士の一言により、静寂な空気に終わりを告げた。


「……よろしい。許可しよう。我が国に異世界の勇者を召喚する!皆の者、これより一週間以内にAランク以上の召喚士を10人以上集めよ」


こうして、異世界の勇者を召喚する為の準備が始まった。

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