Take-44 映画『グレイテスト・ショーマン(The Greatest Showman)』(2017)『LA LA LAND』は面白かったのか?
もはや黒歴史に近いのだが一度だけダンスをしたことがある。その昔、アマチュア猫芝居をやってた頃だ。
もちろん社交ダンスでも
どんな経緯でそうなったのやらよく覚えてないが、芝居のラストに全員で踊ることになったからさあ大変。ドジョウこそ出てこないが、エアロビのお姉さんが出てきてコンニチワ。皆さん一緒に踊りましょ、ってなことで──基礎教育が始まる。まさに『オマタ開いてワンツーワンツー』そのまんまみたいなことをやらされるわけだ。
ほとんどが
どれくらい固いかというとまず
しっかし踊るというのはこれほどキツイもんなのかと心底思ったね(○_○)。グラウンド100周の方がまだええわと思いましたわ。
そんなわけで「This is Peizannu!」でごにゃーます。自分が叩くドラムの音で歩くのでごにゃーます。
その辺りが理由というわけじゃないんすけど、ミュージカル映画というのが少し苦手。嫌いなわけではありませぬ。むしろ見始めると血が騒ぐくらい。ただ……
その「見始める」までが長い。これも──掃除を始めるまでが長いが、いざ始めると徹底的にやらんと気がすまない──B型の血のさだめなのであります。
ミュージカル……ねぇ……。
いや! だってそもそもおかしいだろ? いきなり歌い出すんだぜ?!
全力疾走しながら満面の笑みで歌を歌うんだぜ?!
交通渋滞だからって車を降りて急に皆で歌って踊り出すんだぜ?!
鼻歌ならばともかくだよ、一緒にメシ食ってる時、目の前のやつが突然歌い始めたらやっぱオカシーだろ。しかも、やたらうまいとか何だよこれ。
「やべぇよこいつ、救急車呼ばなきゃな」なんて思ってると周りのウェイターとかまで歌いながら参加してくるのだよ? 怖いよ。てか、なんか歌ってないこっちの方が空気読めないヤツみたいじゃね?
まあ……しゃーないから、じゃあこっちも歌って答えるか……みたいな気になるわな(ハッ)そーかー、あれって一種の集団ヒステリーみたいなもんだと思えばいいのね……
などと頭のどこかで冷静な判断を下しながら見ているわけだが、いつしかそんな思考もどこへやら、二時間後にはなんか感動しちゃってる自分がちょっと悔しい。
あ、そーだ。その前にひとつ謝らなければならないことがあったのです。それは──
映画『LA LA LAND』
私ですね、この映画てっきり
むしろ今では私がゆいたい。
「アレ見た? アレすっげ~イイよ! 超~イイから絶対見た方がいいって!(大興奮)」
ヾ (゜∀゜)ノ ムフーッ
と。
んも、すっげ~素晴らしい映画でしたわ。
先ほど言った「交通渋滞の中、みんな踊り出す」ってのはこの『LA LA LAND』の冒頭シーンのことなんですが、ぶっちゃけ言うと最初「なんかかったるそうな映画だな~」ってそれ見ながら思ってたんですよ。そこまでは。ええ。
で、見終わった後、もう一度同じ冒頭シーンを改めて見た時のね、その違いようといったら!──なんかもう、ぶわぁ~ってキちゃってですね。
画面の中ではみんなボンネットに乗っかったりして能天気に明るく踊って歌ったりしてるわけですが──なんかぶわぁ~ってキちゃってですね。
流し見してた前半のくだりが二周目には全部違う世界に見えましてですね。「ああ、なるほど」「ああ、なるほど」の連打。
女性向けだなんてとんだ勘違いでしたわ、ホントにごめんちゃい。むしろ
ライアン・ゴズリングがもう、ヤバい。『ブレードランナー2049』から『マネーショート/華麗なる大逆転』、そして今回で完全にファンになっちゃいましたわ。
ただライアン・ゴズリングとライアン・レイノルズかごっちゃになってしかたがない。名前も顔もちょっと似てるし「あ、あれ? デップー(『デッドプール』ね)演じてるの、どっちだったっけ?」ってよくなります(笑)
こーゆー映画を見て
本来は『グレイテスト・ショーマン』と比較するために見てみるかと思っただけなんですが、ストーリー的にはこちらがあまりに良かったんで書かずにいられなくなったってわけであります。
特筆すべきはあのラストシーン。これは演出的とゆーか映像的にっていうことなんだけど、こういうラストシーンって、ちょっとこれまで見たことがなかったかもな、ということ。
いわゆる『結』の部分。こういう「余韻の残しかた」がまだあったんだ……と唸りましたね。小説ではちょっと難しいんじゃないかという映像ならではの手法──これが昔ながらのミュージカルという骨格にまたピタッとはまってるわけなんですよ。う~ん。
逆に『グレイテスト・ショーマン』はどうだったかというと──あくまで個猫的な感覚なんですが──ミュージカルとしての部分が新しい。てか、なんでしょーね、これはアクション映画に等しいぞ、という表現が合ってるかも。パワーとテンポ、ロープアクション、それに『マトリックス』のような視覚効果なんかも使われたり。こちらはこちらでダンスのシーンの中にこれまでにはなかったものを感じたと言いますか。
今年のアカデミー賞の音楽賞にもノミネートされた「ディス・イズ・ミー」ですが……やっぱすごいです。映画を見た後、お店や街中でフッと耳に入るとね、今ではブワッと鳥肌が立つくらい。
もちろん耳で聞くだけでも素晴らしいんだけど、映像が加わった時の感動ののびしろがまた格段に違う。
なんでミュージカルの歌って一度聞いただけでこんなに頭に残るんだろ? といっつも思いますわ。繰り返す部分が多いからなのかな? なんかセオリーがあんのかな? これはむしろ音楽に詳しい人に解説してもらいたいくらいですね(笑)今でもまだ耳の中で「ウォーウ、ウォーオオオゥ!」言うとりますからね。
『天使にラブソングを(1992)』じゃありませんがこういう大勢で歌うゴスペルチックなのにわしゃ弱いんですよね~♪
そう、『グレイテスト・ショーマン』で特筆すべきはダンスシーンなのです。そこだけ五六回は繰り返して見ちゃったこと。
その「ディス・イズ・ミー」の場面はもちろんのこと、前半でヒュー・ジャックマンとザック・エフロン、そしてバーテンまでが割って入る男三人によるバーでの掛け合いのミュージカル・シーンは何度見てもホントに飽きない。
ただ残念なことは──「そこだけが」見たくなっちゃうってことなんすよ。『LA LA LAND』は全体を通して何度も見たい、『グレイテスト・ショーマン』の場合は他の部分はなんとなくどうでもいいというか──つまりめっちゃカッコいいプロモーション・ビデオに近い。
せっかくフリークスたちとのサーカス団という設定がいいのに、あまり生かされてないというか、何もかもがちょっと美化されすぎなんじゃないかなというのが少し鼻についたというか残念というか。こう言い切っちゃうのになんとなく抵抗があったんですが、『LA LA LAND』を見た後、やっぱりそう思っちゃいましてね。
差別表現が厳しい現代で『
こちらはホラーなんですがそれこそ「本物」の奇形たちを役者に使った『フリークス《怪物團》(1932)』という30年間上映禁止だったカルト映画があります。まあその時代と同じように制作するわけにはいかないですからね。彼らの扱いに敏感になりつつ、腫れ物に触る感じで制作したのがどうしても見えてしまう。
まあ当然なんですけどね。
扱い方を間違えるとちょっと現代では怖いです。主役のモデル、P.T.バーナムは実在した人物でありますがぶっちゃけ奇形フリークスたちを見せ物にして儲けようとした変人とゆーか奇人ですからね。
ここまであからさまに美談にしちゃうとちょっと空々しいという感じもしまして。
なんだかんだいって結局「綺麗でロマンチックなシーン」って空中ブランコ乗りのゼンデイヤしかり、イケメンのヒュージャックマンしかり、入れ物が美しい人たちがみんなかっさらっていっちゃってるじゃないですか。
で、肝心な時だけ
かといってホラーミュージカルの『オペラ座の怪人(1925・2004)』や『スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師(2007)』のようにするわけにもいかないので、そのへんが中途半端と言いますか、少しモヤモヤが残ったかな~とは思いましたね。
ちなみにこれを書くうえで急遽『フリークス《怪物團》』も見てみたわけですが、こちらはガチでぶつけてくる映画でありました。
衝撃的な結末だけは確かにホラーのようではありますが「人間てすごいな……」と思わせる底知れぬものさえ感じたり──逆に奇形を見下している通常の人間こそが醜く描かれている映画です。
かといってフリークスたちを『エレファント・マン』のように心が美しいだけ──とは、作ってないところがまた凄いんですね。彼らにだって怒りや嫉妬、ともすれば殺意という心もある。そういう意味では健常者もフリークスも同じに見えちゃうんですよ。客席側こっちから見てると。
しかも表情なんかも、皆、しっかりと生き生きと演技してるのですわ。
こちらは歌いこそしないけれど、まさに「ディス・イズ・ミー!」というパワーを感じさせられるのであります。
【本作からの枝分かれ映画、勝手に三選】
★『マイ・フェア・レディ』(1964)
……枝分かれというより今回はミュージカル縛りですやね。ミュージカルってこんなに面白かったのか! と初めて気づかされた作品が『マイ・フェア・レディ』。のちに『プリティ・ウーマン』としてリメイクされてるのは有名な話。うん、こちらも面白かった。
言語学者のヒギンズ博士が友人と賭けをして「下品な言葉使いの下町女」を「貴婦人」へと仕立てあげていくが……
ホント、なんで耳に残るんだろ。ミュージカルの音楽って……。不思議。
★『コーラス・ライン』(1985)
……ダンス・オーディションの最終選考に残った17人。何人が受かり何人が落とされるとかはわからない。一人一人がそれぞれ自分自身の過去を背負い、アピールしていく──。
劇中劇というか、演じているのはそれこそオーディションをかけ上がったプロなのに、皆、初心の頃を演じているという設定がまず面白いですよね。
フィナーレの曲『One』はキリン一番搾りのCMにもなってましたんで、聞いたことがない人はいないんちゃうかと。
最後、名前を呼ばれた人たちが次々と前に出て、彼らがオーディション合格者なのかな~と思いきや「名前を呼んだ者はお疲れさんだった」てのは後々でもよくパロディにされたりしてましたね。
面接とかで実際アレやられたら腹立つやろな、しかし(笑)
★『RENT』(2005)
…… ブロードウェイで1996年から12年というロングラン・ミュージカルの映画化。
見終わったその足で二枚組のCDを買いに走ったのは後にも先にもこれだけであります。
舞台はマンハッタンのダウンタウン。LGBTやHIV患者、様々な悩みを抱え、明日の家賃(RENT)も払えない、それでも夢に立ち向かっていくボヘミアンな若者たちを描いたストーリー。おそらく「RENT」てのは「明日がくるかもわからない」「人生は借家のようなものだ」って意味合いも含まれてるのでしょうね。
そんなストーリーとは裏腹にまったく暗さなど感じさせません。
「ボヘミア~ン!」というと昭和のベストテンなんぞを思い出してしまいますが「蔑視などものともしない自由奔放な者たち」という意味だったんですねぇ。へぇ~。
特筆すべきは作者のジョナサン・ラーソン。5年を費やし書き上げたこの作品。オフブロードウェイでの公演初日──その“前日”に35歳という若さで死をとげてます。まるで演じる者たちとリンクするようなこの出来事はもはやストーリーの一部としてしか見れないんですよね。
どんづまった時などに見ると本当にたまらなくなります。大傑作です。というか大好きです。
とりあえず、オープニングの「シーズンズ・オブ・ラブ」だけでも動画で視聴してみることを強くお薦めしますね。いつのまにかっていうくらい自然に涙出ちゃうんすよ、コレ。
今回はその和訳歌詞でしめようと思います。
では、また次回♪
525600分
52万の大切なとき
525600分
一年をどうやって計る?
明けの数、夕焼けの数、
それとも過ごした真夜中の回数?
コーヒーを飲んだ回数、
インチで、マイルで?
それとも笑った数で、争いの数で?
525600分
人生の一年を
いったいどうやって計る?
愛ではどうだろう
愛で計ってみてはどうだろう?
愛という季節で──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます