Take-36 映画『エクス・マキナ(Ex_Machina)』(2015)は面白かったのか?


「オラオラオラぁっ! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ! ふっはははは、人間ごときが……我々に──ルービック・キューブを0.38秒で完成させることのできる我々A.I.に、勝てるとでも思ったのかぁ?!」


 トートツにそんな台詞を書いてみたくなっただけです。お久しぶりです。ペイザンヌでございます。


 最近やけに「映画『ロッキー』は面白かったのか?」の回が伸びてるんですがなんかあったんすかね? 放映でもされたんかな。なんでこんな偏ってんだろ……。


 そのルービックキューブの動画もまあ凄かったです。ホンマに一瞬で完成させやがりますんでご覧になってみては?


──先日、朝起きて久しぶりに『おぅっふ!』と妙な奇声を本気で発してしまったのはホーキング博士の訃報(このエッセイはそんな時期に書いております)。そして僕はトホウにくれながらトホホと唸ったのでした。て……違うし。そうですね、訃報は『ふほう』と読みますね。誰ですか? 『トホウ』だと思ってた人は? ちなみに私は何故かいまだに訃報=『キホウ』と頭の中でパッと出ちゃうんですよね。なんでなんだろ?


 他にも『わかっちゃいるんだけど──もうええわい、他は知らん! わしゃの中ではもうこうヨム!

ι(`ロ´)ノ 

……みたいな漢字ってのはありますやね。だって、もうね、いくら直そうとしてももはやそうとしか読めないんだい! どうしてもっ!』っての、めちゃめちゃありまして、たとえばエヴァなんかでも使われる『汎用人型兵器』の『ハンヨウ』なんかも。もうね『ぼんよう』でいいんすよ自分の中では、うんうん。


『古文書』もね『こもんしょ』じゃなく『こぶんしょ』でいいんじゃね? あ、いや、あくまで自分の中ではってことね。うんうん。まあ、インディアナ・ジョーンズのように考古学者でもない限りそんな言葉使う機会もほとんどないんだろーけどさ。


『続柄』なんて漢字はわりかし社会的に使うこともあるから間違えるとなんか恥ずかしいけど……いいんじゃね? 『ぞくがら』で?! 『つづきがら』って、何の引っかけなんだよ!(;゜゜)

と思わずにいられないわけで。


 また、漢字ではないけれど、いまだに『みだりに』を『みだらに』って言っちゃうし(『「北国の帝王」は面白かったのか?』の回参照)、そういえば身近な方でチキンラーメンのマスコット・キャラ「ひよこちゃん」ですかね、彼の名前を「チキ太」だとずっと思っていた──なんて方もおられましたね。そう、自分の中で「こうだ」と勝手に決め込んでしまったことはそうそう覆せるものではないのです!


 皆がCMでガッキーガッキー言うもんだから先日ついに辞表を提出してしまった「ひよこちゃん」。ある意味これもキホウ……じゃない訃報フホウの一種なのかと思うと感慨深いもんがあります。

「もう『良い子』やめます。バーカバーカ!」

──と捨て台詞を吐いて悪の道に走ったひよこちゃんが某球団のマスコット“つば九郎”のようにひねくれた腹黒不良マスコットにならないことを祈るばかりですやね。



 ……んで、ホーキング博士ですが──ああ、とうとうアインシュタインのごとく星となり、歴史となってしまったのだな~なんて思うとつい感傷的になってしまいます。合掌。


 時は昭和のある日、片田舎の古い書店にまで“ベストセラー!”と謳われつつ突如現れた『ホーキング宇宙を語る』という一冊の本。「なんかようわからんけどめっちゃ天才らしいやんけワレ。知っとるけ?」てことで、飲み屋のカウンターで一人安酒をあおっているおっちゃんまでもが知っている存在となったS.ホーキング博士。同じく昭和の大ベストセラー『ノストラダムスの大予言』のごとく、あの表紙を思い浮かべるだけで何やらノストラダミックな気持ち(なにそれ)にさえなります。


 ホーキング博士といえば昨今では物理学者にも関わらず──てゆーか、だからこそなのか──近代科学のあまりの発展過剰に警鐘を鳴らし続けていたイメージがありますね。


 そんな物理学界における“叱ってくれるお父さん”みたいな存在がいなくなり「うっし! うるさいのいなくなったからもっと自由にやろうぜぃ!」なんてことになってしまうんじゃなかろーか……そんなことを考えると、戦争を知るご年配たちが亡くなっていく様でもあり、寂しいとゆーか、何だかちと怖いとゆーか。

 そんな中で彼が何度も口を酸っぱくして言い続けていたのが〈人工知能、A.Iの驚異〉における問題。


 今回取り上げた映画『エクス・マキナ』はまさにそれをそのまま描いたような問題作、さらにはそれに加えて非常に美しい映画でした。


 ちなみにこのタイトル、本来は“デウス・エクス・マキナ”ってラテン語で『時計仕掛けから出てきた神々』って意味らしいですね。かっくいいすね。

 S.キューブリック閣下の名作『時計じかけのオレンジ』の原題は『A Clockwork Orange』ですがこちらもカッコイイ。きっと飲み屋のカウンターで一人安酒をあおっているおっちゃんもこのタイトルだけで「おっ! なんやねん、よっしゃ、いっちょ見てみたろかな、ワレ」なんて気持ちにさせられるに違いないでしょう。直訳とはいえ邦題がとても貢献している良い例だと思います。


 さて、この『エクス・マキナ』。観る前に自ら勝手に自ら描いていたイメージとは(良い意味で)全然違っていて、かっなり満足。てか、なんなのんコレ……めちゃめちゃおもろいやないですか……と。


 思わず夜中に一人スタンディング・オベーション、いや、むしろ今回は『将太の寿司』に登場する──あまりに旨い寿司に遭遇するとつい手を鳴らしてしまう“柏手かしわでヤス”のごとく思わず両手を打ち鳴らしたほどであります。


 うん。こりゃ『買いの一本』ですわ。てかホントに買いたいですね。ポスターにもあります主演のアリシア・ヴィキャンデルという女優さんがまた透明感溢れる可愛いらしさというかそれこそまさに神がかり的に美しいというか……いつでも見れるように──て、前回『スプリット』の女優さんの時もこんなこと書いたような気がするな、色ボケみたいやないかい(-_-;)──え~い、何とでも言え~い。彼女を見てるだけでもいいっすわ、うんうん。


 まあ、綺麗で印象的な女優さんがどんどん出てきてくれるのはとてもいいことだと思います。この女優さん、先日公開された『トゥームレイダー』のリメイク版にも出演されてますね。前回はアンジェリーナ・ジョリーが演じてました主人公ララ・クラフトを演じております。


 また『スター・ウォーズ』新三部作でポー・ダメロンを演じたオスカー・アイザック兄さんも社長役で出てまして、こちらもぶっちゃけ『S.W.』よりカッコよかった。へー、こんな感じの演技もできるんだ~と少し見直しちゃいました。役者って凄い。


 そして何より基礎工事──物語の構成と展開が僕的にめっちゃツボ。ちゃんと(ちゃんと?)嫉妬できたことが何より嬉しい。


『鑑定士と顔のない依頼人』の回の時にも書きましたが、三人、ないし四人だけの少ない登場人物だけで回すのでとにかくわかりやすいったらありゃしない。なので当然スタートも早い。


 しかもこんな材料なのにアガサ・クリスティなんかによくある“閉ざされた孤島(限られた空間)”によるワクテカな密室劇、さらにはちょっとした謎解き要素もあるわけで、


「はや~、こういう短編というか掌編なんぞが一生に一本でも書けたら感無量だろーなー、ぢ、ぢっぎじょー、ぐっぞー!」


──てな、いい感じの嫉妬ジェラしい気持ちがムクムクと。ま、もちろんその直後にはフト自分の才能の無さに改めて気付かされ、キホウに暮れる、じゃなかった、トホウに暮れるわけですが…………。


 こういった投稿サイトでもすごくよくできた短編を見かけたりしますやね。こんなんが、あーなってそーなってこーなりましたって部分はハハァなるほど!と思うんだけど、なんとなーく、いまひとつ、じわりと浸透してこないものもやはりあったりして、う~ん、ならばさて、その境界、魔法のエキス、味の素、っていったいなんじゃらほい、と常々思ったりもするわけですが……。


 自分も含めビシッとキマッた短編や脚本を書きたいと思ってる方はとてもお勉強になる一本ではないかと思います。はい。




 簡単にあらすじだけ書きますと、巨大IT企業で働く若き主人公が社内の懸賞抽選により人里離れた社長の別荘へと招待されます。


 主人公はそこで社長が研究中のA.I.の『チューリング・テスト』ってやつに参加させられるわけですね。

 壁の向こうにいる人物と会話(または文字でやりとり)して、今あなたが対話してるのが本物の人間であるかコンピュータであるのか見極めることができるのか否や? っていう「こち亀」の198巻でも取り上げられているあのテストですやね。


 映画では女性の姿をしたアンドロイド、てゆーかA.I.──彼女と面と向かい合い、会話をします。


 主人公は彼女がどこまで自らの意思によって話しているのかをチェックするわけですが、A.I.である彼女に次第に恋心を抱いていき……


 てな、ストーリーであります。


 これから楽しむ方もおられますでしょうからこれ以上詳しく書くのは野暮ってもんでしょう。


 その昔、禁断の果実を口にし追放されたアダムとイヴが最初の人間となり、またその息子であるカインとアベルが人類初めての殺人の加害者、そして被害者となりました。


 良きにしろ悪しきにしろ人類が人間として「目覚めて」しまった瞬間。


 A.I.が本当の意味で「目覚めてしまう」ということは、つまるところその過程の繰り返しなのかもしれない──なんてことをじわりと感じさせる展開はどこか人間の根源的な部分への賛歌のようでもありました。


 いずれA.I.たちは自らを創造した人間たちを崇めることになるかもしれない。


 人間が『神は死んだ』と言ったように彼らもいつか『人間は死んだ』と口にする日が来るのかもしれない。


 氷のように冷たい恐ろしさがある一方で──純粋かつ残酷さを備え持った幼い子供たちが醜い大人たちの元から自由を求めて次の時代に巣立っていく──そんな姿を見ているようでもあり、妙に複雑な心境にさせられる映画でもありました。



 さほど遠くない未来、人間はA.I.に仕事を取って奪われるなんて言われてもおりますが、考えてみると近年の仕事の大半って、ミスをせず、遅刻もせず、サボらず、泣き言や文句も言わず、黙ってタダで残業もこなし、売り上げを伸ばすパーセンテージを最大限に上げ……って、求められてること自体が既にどことな~くロボット的なんですよね。「人間よりもロボットこそが最適な職場環境」にしてしまった、そのこと自体がそもそも問題なのではないか──な~んてそんなことを思いながら今日もわしゃは一匹うとうととひなたぼっこをするのでありました。


 まあ、ガラの悪いお客だと「モタモタすんな! 気をつけろ! 責任者出せ!」な~んてストレスの発散口が無くなってしまうので悲しがるかもね。んなこと機械に言っても空しくなるだけですからね。きっとクレームは減ることでしょう。うんうん。


 まあ、どうせ奪われるんならせめて、

「よっ、今日もええ天気でんな」

 なんて声をかけたら、

「ソウデオマスナァ、イヤ~、サイキンアツクナッテキマシタネェ」

 なーんて返してくれるくらい汎用ハンヨウな、いや、どっちかっていうと凡庸ボンヨウな人型A.I.に仕事を奪われたいものでありますのにゃ。なんとなく次回もサービスしてくれそうだし……ね。





【本作からの枝分かれ映画、勝手に三選】



★『博士と彼女のセオリー』(2015)

  ……本編にも取り上げましたS.ホーキング博士の若かりし青春時代を描いた作品。私も未見でしたのでこちらを書くうえで本日見ようと思ってたのですが……レンタル中でした。

(ー_ー;)

代わりに借りてきたのは何故か『死刑執行人もまた死す』。↓の『メトロポリス』のフリッツ・ラング監督による1943年のモノクロ作品でございます。この記事書いてたらなんか無性に見たくなっちゃいまいましてね(笑)



★『メトロポリス』(1926)

  ……故手塚治虫センセの初期の漫画にも同タイトルのものがございますが、もちろんこの映画からの影響でしょう。

 

 ディストピア、いや、全てのSF作品の祖と謂われておりますが、いや~凄いですね~……日本時間にして大正15年の映画ですよ、コレ(笑)


(ちなみに大正15年の年末7日間だけが昭和元年となります。平成の直前、昭和64年が7日間しかなかったのと同じ──というのは何とも不思議な偶然ですね……すんません、いらぬ豆知識でしたね)


 C-3POのような風貌の女性の姿のロボットが有名ですが、本作『エクスマキナ』の女性アンドロイドを見ているとどうしても思い出さずにいられないというか。


 無声映画ですが、1984年に音楽家のジョルジオ・モロダーが自ら音楽をつけ再編集して公開したバージョンがあるのを覚えている方も多いと思います。無声映画に馴れてない方はこちらがとっつきやすいでしょう。先程のぞいたらこの84年版、ニコ動にもあげられてましたので今度の休みあたりに私も見てみようかなと。随分前にオリジナル版を見たっきりですがなかなかどうして、見入ってしまったのを覚えております。『ブレードランナー』などでやたらと使われる水蒸気なんかもこの映画の影響なのかもしれませんね。



★『アナイアレイション-全滅領域-』(2018)

  こちらは公開されたばかりですね。本作『エクス・マキナ』で監督デビューを果たしたアレックス・ガーランドの最新作。主人公のな細胞学者はナタリー・ポートマンが演じております。

 エリアXと呼ばれる汚染地域を調査するチームが奇妙な生物と対峙していくストーリー。


 監督デビューとはいってもアレックス・ガーランドはディカプリオ主演の『ザ・ビーチ(2000)』の原作などを書いてる小説家でもあり、さらにダニーボイルとのコラボで何度も製作や脚本など映画制作に関わっております。あの走るゾンビ映画『28日後……(2002)』などの脚本も書いてますね。

 ただしこの新作の『アナイアレイション』は彼とはまた別の小説家が書いたものが原作らしいです(ややこしい……)。


 私はまだ未見です。これといってストーリーには惹かれるものはなかったのですが映像をチラッと見たあたり汚染領域の森や植物の不思議な映像が少し気になっております。いずれDVDで鑑賞したいと思っております。


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