【Another-Take⑤】マンデラエフェクト・ナイト(後編)~007/ムーンレイカーの謎~
前回「UFO、UFO」書いててフト先日ラーメン屋のカウンターでつけ麺を食ってる時にピンク・レディのあの曲のイントロが流れてきたのを思い出しました。まあ、なんとなくこの時点でイヤ~な予感はしてたんですが。
……♪チャーンチャンチャーンチャン、チャンチャンチャンチャンチャーン。私の隣に座っておられた初老のダンディな男性(じいさんともいう)がキメのところで案の定『UFO♪』と呟きやがりまして鼻から麺を吹き出しそうになりましたペイザンヌでございます……(-_-;)
作家、田口ランディさんのデビュー作、『コンセント』という小説があります。その中でとても印象に残ったエピソードがありました。
それはつかみの部分──主人公の女性が冒頭、一人暮らししている兄の腐乱死体を発見するわけですよ(そういや“フランケンシュタイン”って日本語的にも“腐乱死体”をピタリとイメージさせる語呂でわざとつけたんちゃうかと思うくらいうまいな~的な駄洒落のノリがありますやね。まあ、そんなことはどーでもいいんですが……)。その死体の脇にはコンセントにささったままの電気掃除機がありました。それと兄の死体を見比べて、主人公は兄が昔『コンセントに繋がないと動けない少年』の話をよく話していたことを思い出すんです。それは『世界残酷物語』というオムニバス映画のワンエピソードの物語でした。
そんなこともあって主人公はあらためてその映画を見てみます。が……ですよ、その映画の中にそんなエピソードは存在しなかったんですね。
ちなみにこの『世界残酷物語』という映画は実際に存在する1962年のイタリア映画です。アカデミー賞にノミネートされた『モア』という曲だけが妙に有名になっております。昭和の純喫茶で一度は耳にしたことがあるような曲です。「ドトール」でも「スタバ」でもありません。なんか知らんけど「マイアミ」や「ルノアール」を思い出してしまう曲ナノデあります。
Wikipediaにて募金広告の嵐ををかわしながら調べてみると以下のように紹介されてました。
『──本作が公開された1962年はまだインターネットどころかテレビも普及段階にある時代であり、海外旅行なども高嶺の花、人々はもっぱら書籍や雑誌、映画などから伝えられる世界の風景に素直に驚いていた。
この頃に「夜もの」といわれるパリの夜の歓楽街などの性風俗を紹介したドキュメンタリー映画などを撮っていたグァルティエロ・ヤコペッティが、世界の奇習や風俗を描いた決定版ともいうべき作品として製作したのが、本作である。
ただし「ドキュメンタリー」と銘打ってはいるものの、実際には演出ややらせも含めた、捏造された題材が多数仕込まれており、現実と空想が混在した実にいかがわしい作品である。本作の世界的な大ヒット以降、この映画の原題 "Mondo Cane" (犬の世界)にちなんで、以降それらのいかがわしいドキュメンタリー映画はモンド映画と総称されるようになった──(原文のまま)』
……といったモノです。今でこそモキュメンタリー(ドキュメントぽく作ったフィクション)といわれる映画はたくさんありますが『食人族』(1980)も『ブレアウィッチ・プロジェクト』(1999)も、はたまた『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)や『パラノーマル・アクティビティ』(2008)も公開される前、遥か遥か昔のことですから、それらの先駆けと言ってもいいかもしれません。
ただしこの映画にはやはり、というか当然、『コンセントに繋がないと動けない少年』のくだりはありません。つまり主人公の兄が勝手に作り上げた妄想──もしくは記憶の捏造──だったわけです。もちろんそのエピソードを実際に見たと思って妹に話していたわけです。
この冒頭を読んだ時も私はかなり衝撃を受けました。単に「あ~あるある、そゆことあるよね~」だけでは片付けられない妙な不安感というか不気味さを覚えました。
「あれ? あの話ってどこで見た(読んだ)んだっけ?」
トカ、
「あれ? おかしい。確かに見たのにあのシーンがない……?」
あなたはそんな思いをしたことはありますか?
うん、ようやく話が繋がってきた気がする。
んで、前回私が衝撃を受けたと言った問題の映画。
これもやはりマンデラ・エフェクトの中では有名な一つでありまして、たいていどのページを開いても紹介されております。その映画こそが──
007シリーズの11作目『ムーンレイカー(Moonraker)』(1979)
であります。
昨年惜しくもお亡くなりになった三代目ボンドのロジャー・ムーア版007ですね。宇宙空間にまでいってしまいシリーズの中でもかなり荒唐無稽さの溢れる作品です。
さて、この作品には前作『007/私を愛したスパイ(The spy who loved me)』(1978)で人気を得て続投となった“ジョーズ”(リチャード・キール)という悪役が出ております。ギンギラギンの鋼鉄の歯を持ち何でもかんでもかじってぶっ壊す大男です。
問題のシーンはラスト近く。その“ジョーズ”が金髪の小柄な少女ドリーと恋に落ちる場面。
ジョーズが少女に向かってニッと微笑みを浮かべます(当然、ギンギラギンの鋼鉄の歯が強調されます)。次のカットでは今度は少女ドリーのアップです。彼女もジョーズに向かってニコッと笑うのです。
ここです。
ここですよ、奥さん。
ニコッと可愛らしく笑ったドリーの歯。なんとそこには歯列矯正の装置がキンキラキンとあったんですね。まるで“ジョーズ”の鋼鉄の歯のように。だから観客は笑う。プッとなる。私もここで笑ったのをハッキリと覚えております。
デ・ス・ガ…………………………………
((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
大事なとこなんで三回ガクブルしときました。今風に言うとガクブルしたンゴってやつです。
実際にはドリー少女が歯列矯正装置をつけていた映像などないのです……。
ひとつも、少しも、僅ながらも、これっぽっちも──存在しないのです。映像として残っていない…………のです。冷や汗ブッシャアです。
だってですよ、ぶっちゃけ『ムーンレイカー』って聞いた時、真っ先にパッと思いつくのはオープニングのパラシュートの闘いのシーンと歯列矯正器くらいだったんですよ。それだけインパクトがあったシーンなんです。
もちろん私もすぐに動画で確認しましたが……
((((;゜Д゜))) バカナ………………ウソヤロ?………………
ない………嘘や……俺はハメられたんだ! 確かにあったはずなんです、刑事さん! 信じてください、俺はこの目で見たんだ! 彼女の口の中に光る“歯列矯正装置”をぉぉ!
少女は“綺麗な歯並び”で愛らしく笑ってましたが、私はこれまで見たどんな心霊映像よりゾクッとしましたね。
なとゆーか初めて、UFOを、そこから降りてくる宇宙人グレイを、幽霊を、未確認生物UMAを、和田アキ子を、ハッキリと、間近で、ナマで、この目で、見ちゃった。──そんな気分でしたわ。
(゜_゜;)
当然私だけでなく、この『ムーンレイカー』説にも「いや、私はハッキリ見た!」という人たちが世界中にいます。「劇場で笑い声が上がったのをハッキリ覚えてる」という人が大勢います。まあ、そうでなけりゃマンデラエフェクトが成立しませんからね。
真っ先に疑うは「加工だろ?」ですやね。当然現代ではオリジナルにCG加工を施している映画はたくさんありますので。『スター・ウォーズ』などでは新シリーズと辻褄を合わせるため何度も加工されてますし。
ただ面白いのは、あのシーンで少女ドリーが歯列矯正装置をつけてないと、そのシーンがユーモアとして成立しないということなんですね。そもそもそんな場面を手間と金をかけて加工し直す理由などないわけで(あるとすれば女優やその事務所からクレームがきたくらいですがそれものちに否定されてます)。
「よーし、ほんなら当時市販されてたVHSビデオを引っ張り出して見てみっぺ!」という人も実際おられましたがやはり矯正装置はありませんでした(この様子もyoutubeにあがってます)。オリジナルの35mmフィルムにも残されてないといいます。
「いや、それでも納得いかない!(私も同感です……)」という人が──ついにはドリー少女を演じた女優本人、ブランシェ・ラヴァレクにインタビューまでしちゃってます。が、驚くことに彼女本人ですらやはり「歯にそんなものをつけて撮影はした覚えはない」とハッキリ語ってるんですね。
マンデラエフェクトにはその逆パターンもあります。つまり「今まで見ていたのに見えてなかったもの」。盲点みたいなモンですかね。
それこそもう五十回くらいは見てるんじゃないかと思う『スターウォーズ』ですが、あの中にでてくる金色の人間型ドロイドC-3PO、彼は全身が金色というわけではなく、右足の膝から爪先は“銀色”だということを皆様は御存知でしょうか(これはCG加工されたわけでありません)。私はまったく気づきませんでしたし、私同様、今でも気づいてない方はたくさんいるのでは……と。
しかしこれは、よくよく見てみるとC-3POが全身で映ってるシーンはそもそもあまりなく、あっても周りが黄色い砂漠だとか宇宙船の暗い中だとか、あるいはもう一人のドロイドR2-D2がちょうどそれを隠すようにセットで足元にいるパターンがすごく多いんですやね。これはまあ気付かなくてもしゃーないんではないかと納得もできます。
グッドタイミングといいますか、これを書いている時、『百万人の宮崎勤』発言はあったのか?”というテーマをYahoo!ニュースが報じておりましたので少し触れておきます。
宮崎勤事件の後日、コミケを訪れたレポーターがこともあろうに「ここに百万人の宮崎勤がいます」とニュース番組で発言してしまった──そのニュースを大勢の人が覚えている──というものです。そう、実はこれもマンデラエフェクトに取り上げられていた一つなんですね。
もちろんそんな映像は現存しておらず、そんなことを言うはずがないと当時のレポーターたちも口を揃えて言っております。まあ、そりゃ当然ですやね。
ただ、今回のニュースで新事実がありました。
そのコミケの中で販売されていた同人誌の中に「ここに百万人の宮崎勤がいる!」というセリフを扱った漫画があったというのです。
もはや真実は闇の中ですが、ははぁ……なるほど所詮幽霊の正体なんてのは、その辺りにあるのだろうな、と。
ただやはり『ムーンレイカー』の問題のシーンだけは不思議です。実際にそんなものが映ってないとするなら、カットバックの残像効果のようなものなんでしょうかね……。映ってないはずのものを自分の都合のいいように脳内で出現させておいて、さらにストーリー的なものまでわざわざ勝手にこさえて、しまいにはそれに対して自らクスッと笑ってしまう。それが自分だけでなく世界に大勢いたという現象。
はたして、そんなことがありえるのでしょうか……??? はたまた………………???
こんな感じで我々は知らぬうちに平行世界やトワイライトゾーンといったものへ巻き込まれてしまっている──実はそんなことがちょくちょく起こってしまっているのか………………???
『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』でドクが提言していたようにどこかでAパターンの未来とBパターンの未来に分かれてしまう──なんてことは実際にあり得るのか?
あのホーキンズ博士までもが最近まで「いや、宇宙的にやべーからさ、やめろよ、おまえらやめとけって!」と、ガチで警鐘を鳴らしていた──巷で噂のCERN(ジュネーブ郊外にある欧州原子核研究機構)。
粒子加速器の実験などが今も続けられており、平行世界の融合やら、パラレル・ワールドの存在といったことが、SFでなくリアルで、ここ数年間でやたら耳にすることが多くなってきてるのも確かであります。しかもそれらはもうすぐはっきり解明できますと断言しちゃってるし、この現代って時代、どーなの? 大丈夫なの? という怖さもなきにしあらず。
(◎-◎;)
私もこの『ムーンレイカー』事件の衝撃以降というか、「これは明らかにヘンじゃね?」というのを心底感じてしまったためでしょうかね? ──「やっぱこういうのトカなんかあんじゃね?」と心のベクトルが少し変わったような気がしまして。
(゜_゜;)
まあ、凡人の私にははたして何がどのくらいやべーのかなど、さっぱりわかりませんがね(´Д`)
【おまけ】
せっかくなのでマンデラエフェクトとされている映画中の台詞。有名な記憶違い現象をざっとまとめておきました。
今も昔も“まったく変わってない”はずなのですが、あえて、『昔』と『今』に分けて記しておきます。
『フォレストガンプ/一期一会』
バス停のベンチでの有名な台詞
・昔「Life is like a box of chocolates」
──人生はチョコレートの箱のようなものだ。
・今「Life was like a box of chocolates」
──人生はチョコレートの箱のようなものだった。
『羊たちの沈黙』
レクター博士が初めてクラリスと対面した時の台詞。
・昔「Hello,Claris」
──「こんにちは、クラリス」
・今「Good Morning」
──「おはよう」(のみ)
『白雪姫』
魔女が鏡に向かって……お馴染みの台詞。
・昔「Mirror,Mirror,on the wall……」
──壁に掛かりし鏡よ、鏡よ……
・今「Magic mirror on the wall……」
──魔法の鏡よ……
『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』
追い詰めたルークに告げるダース・ベイダーの台詞。
・昔「Luke,I am your father」
──ルーク、私がおまえの父親だ。
・今「No,I am your father」
──違う、私がおまえの父親だ。
『フィールド・オブ・ドリームス』
トウモロコシ畑で主人公に囁かれる謎の声。
・昔「If you build it,They will come」
──それを作れば、“彼ら”はやってくる
・今「If you build it,he will come」
──それを作れば“彼”はやってくる
『ジョーズ』
初めてサメと顔を合わせた時のブロディ署長の台詞。
・昔「We're gonna need a bigger boat」
──俺たち、もっとデカい船が必要だぜ
・今「You're gonna need a bigger boat」
──おまえら、もっとデカい船が必要だぜ
あなたの記憶はどちらでしょう?
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