Take‐12 映画『フル・モンティ(The Full Monty)』(1997)は面白かったのか?
ども、ペイザンヌですねん。
その昔、某所で映画の語尾に(全裸で)をつけてみようなんていう「くっだらねー」お題が立ち上がったことがありました。
くっだらないですね。
が、自分としてはこの「くっだらねー」って、ある意味最高級の褒め言葉でもあるわけでありまして。
そうなるともう思わず分析せずにおれない自分がいるわけです。
駄菓子菓子、
このお題の主旨をよく理解していない方が多いのか、なんでもかんでも映画のタイトルの語尾に『全裸で』をくっつけりゃいいというわけではないのだぞと気付くのにさほど時間はかからず、ん~でははたして何をもって「面白い」と感ずるのか? と、真剣に悩んでみたところ、
「全裸」とは「哀愁」である 、
というどーでもいぃ真実に私は気づいてしまいました。
それはまさに映画『フル・モンティ』(英)で失業者たちが生活のために“男性ストリップ・ダンス・ショー”でひと儲けしよう! と悪戦苦闘するあの姿にも似てるのではないかということに気づいてしまったのです。
この『フル・モンティ』を観たのが今は無き名館〈日比谷シャンテ・シネ〉だったことを今でもよく覚えております。
そしておそらくなんですが私の“とあるNo.1”の映画のひとつなんですね。それは、
“見ている間の体感スピードNo.1”
つまり、“あっという間の90分間”
ということ。
まあ、上映時間93分というのは決して長い上映時間ではないのですが、同じ一時間半でも“長いな”と時計が気になる映画は結構あったりするわけで……そうですね、私の体感時間に直すと半分の“42分”くらいに感じたと思います。
もう一度検証するためについ最近見直してみましたが、やっぱり速いんですよね。
「えっ? もう、終わり?」みたいな。
主演は『トレインスポッティング』のバグビー役でブッ飛んだ演技を見せてくれたロバート・カーライル。
集まってきた6人の失業者。しかもデブにネクラにオッサンやジイサンなど肉体的にもダンスのセンスもダメダメな連中ばかり。
最初の方は見てるこっちが恥ずかしくなるくらい。で、最後にめちゃめちゃ上手くなるのかっていうと別にそうでもないんですよね。
ダメ・チームが最後に優勝する『クール・ランニング(1993)』とか、いじめられっこが最後に強くなる『ベスト・キッド(1984)(2010)』とか、そういう映画とはまた違うわけです。
彼らの目的はただひとつ。“お金が必要”なだけなんです。大金とかではないんです。普通に養育費や生活費なんですよ。そのために、ホンっトにバカバカしいことを“真剣に“練習してる姿がたまらなく胸に染みるんですわ。
6人が職業安定所の順番待ちしてる時に流れてきたドナ・サマーの「ホット・スタッフ」に釣られ、思わずステップを踏み始めてしまう場面は今見ても可っ笑しくて。そんながっちり笑えるポイントも随所に散りばめられています。
ただ……
不思議なんですよ、この映画、なんか。
どう考えても笑うべきところなのに鼻の中心あたりがなんかもうツーンときたり。
なにやってんだこいつらと思いながらも、いつの間にか目の淵がじわっと濡れてたり。
後半30分なんてずっとそんな『痛じょっぱオモロ感動』とか、『ぐっとじわ辛爆苦し涙』とか、なんかそんな国語辞典に乗ってないようなよくわからん”何か“が上半身全体にムワモニャッて感じでずっと滞ってるんですよ。わかりますかね(笑)
これ、ぜひ体感してみてほしいなっていうのあります。
本作がブロードウェイでロングラン・ミュージカルになったというのも頷けます。日本でも数年前、舞台になってまして主演の山田孝之がハマリ役だったとのことですがそちらも見てみたかったな、と。
せっかくなんで、今回は【本作からの枝分かれ、勝手に三選】ではなく、冒頭にに述べた【映画の語尾に(全裸で)をつけてみよう♪】という実験をしてみたいと思います。
名作映画をFull Monty(すっぽんぽん)にしてやろうじゃありませんか。
哀愁を感じてください。
まず、当時も書き込みが多かったオーソドックスなところからせめてみましょう。
例題みたいな感じですね。
『世界の中心で愛を叫ぶ』ー全裸で
哀愁ですね。
詩的でとても美しいと先生は思います。
平井賢のテーマソングがよりいっそう引き立つことでしょう。
続きまして、
『それでも僕はやってない』ー全裸で
ん~、なんかおしい!って気もしますが、力強さは感じますねぇ。 そこまでして言われると情状酌量の余地は充分あると思われます。
少なくとも陪審員たちにインパクトを与えることだけは可能だと先生は思います。
『いま 会いにいきます』ー全裸で
若気の至りってやつですねぇ。
先生にもこういう時代があった気がします。
「ありのままの俺を見てくれ!」という真心が痛いほど伝わってきます。
これなんかも非常にシュールでよいかと。
『僕の彼女を紹介します』ー全裸で
そこにどういった意味があるのかを考えさせらずにはいられないってのもありますが 、そもそも「全裸」なのが〈僕〉なのか〈彼女〉なのかというところがミステリアスでいいかなと。まあ、それは映画を観てからのお楽しみってとこなんでしょうねぇ。 将来性を感じます。
続きましてはエディ・マーフィー主演の、
『星の王子ニューヨークへ行く』ー全裸で
バッカバカしいですねぇ。
ナンセンスにもほどがありますね。
ほとんど意味不明です。
わりかしシンプルなものも先生は好きです。
巨匠、小津安二郎の
『生まれてはみたものの』ー全裸で
気持ちいいくらい、そのまんまですねぇ……
「ん~ボクちゃん? まだ、悩むにはちょっと早い年齢かな~?」とツッこまずにおれません。
対抗して黒澤明も、
『生きる』ー全裸で
もはや誰にも止められないといった決意を感じさせます。 カッコいいですよね。
対してこんなダンカン主演のこんな映画も、
『生きない』ー全裸では
普通の人にはそれが一番いいと思いますね。
その応用を用いることも可能です 。
『いまを生きる』ー全裸で
“いま”だけだったら、まあいいんじゃないかなと許せますね、先生は。
そう考えると「全裸」には邦題がよく似合うということなんでしょうね。かの名作も一言つけくわえるだけで趣が出るというものです。
誰もが知っている、
『大脱走』-全裸で
これもやはり「全裸」になることにどういった意味があるのかを考えさせられます。「別にならなくてもいいのにね」といったところが旨味なわけですね。 深いですね。 おそらくきっと誰にも止められないことでしょう。
さかのぼってモノクロの時代にも、
『女だけの都』ー全裸で
誰ですか、こういうのを書いたのは?
こういった自己欲求を書くのはよせと先生あれほど言ったでしょう。ただの下ネタ並みです。せっかく脱がせた名作が台無しです。
『ええじゃないか』ー全裸で
よくはないでしょう。
開き直るのは先生よくないと思うぞ。
続いてフランスから、フランソワ・オゾンの、
『8人の女たち』ー全裸で
これを書いた人、あとで職員室にくるように。
では、誰かビスコンティを脱がせられる人、
手をあげて。
『ベニスに死す』ー全裸で
ロイター発、ただの変死体の速報ですね。 猟奇的なものを感じます、怖いです。まあ、場所が東京湾であっても意味的になんら変わりはないと思います。
もうひとひねり頑張りましょう。
失敗例も上げておく必用があるでしょう。
『裸の銃を持つ男』-全裸で
『裸のランチ』ー全裸で
これはさすがにあいたた……みたいな、やっちゃった感がありますね。
“かぶる”ものはダメです。補習です。
相手にイメージを浮かばせること、コレ大切です。
『めまい』ー全裸で
いいと思います。
考えてみると結構、大変な状況ですからね。
とりあえず服を着るべきか、救急車を呼ぶべきか考えさせる作品だと思います。映画『大地震』なんかも同じ活用法が使えます。
『手錠のままの脱獄』ー全裸で
いいですね、先生こういうのけっこう好きだな。
『大脱走』とはまた違い、脱いでから手錠をはめたのか、はめてから脱いだのかとっても気になるところですからね。 はめてから脱いだのであれば結構イリュージョンだと思います。
ハンフリー・ボガードだって脱がせようと思えば脱がせられます。
『必死の逃亡者』ー全裸で
結構、逃げる人々には全裸がよく似合います。 それが「必死」であればあるほど滑稽だから不思議です。
もちろん逃げる者に似合うならば当然追う者にだって似合います。
今度はジョン・ウェインを脱がせてみましょう。
『勇気ある追跡』ー全裸で
まあ、勇気いるでしょうね。
で、最終的には、
『追い詰められて』ー全裸で
こうなりますね。まさに絶体絶命です。
当然 誰しもが意味もなく脱ぐわけではありません。全裸であることにはそれなりに理由があるケースだってちゃんとあるのです。
『寒い国から帰ってきたスパイ』ー全裸で
暑いんでしょうね。
きっと飛行機の中まではちゃんと 服を着てたんだと思います。
『死ぬまでにしたい10のこと』全裸で
これは思わず先生も指折り考えちゃったなぁ。
でもね、3つくらいで充分だと思うぞ、先生は。
そんなにしたいことないだろ全裸で。
『男の争い』全裸で
非常に醜いですねぇ。
『大人は判ってくれない』全裸で
判ってもらおうとする前にまずやるべきことがあると思うぞ先生は。 この少年は根本的になにか間違っていると思います。
『何かが道をやってくる』全裸で
人間でないことを祈ります。
そして、最後に選んだのは、
『ユー・ガット・メール』ー全裸で
はて?
と、先生も一瞬思ったわけですが、これはあえて投稿者の全文を載せておきましょう。
「なんか“お風呂から上がったらメールが届いてた”みたいな感じしません?」
とのこと。
はぁ~。なるほどねぇ。
数あるほとんどが、ウケ狙いだったため先生は思わず感動してしまいました。
ここまでくると万葉集のようですね。
誰しも経験あるその情景が浮かんでくるようではないですか。素直に感心しました。
さて、綺麗にしめましたところで、この『どーでもいぃ時間』もそろそろ終わりに近づいてきました。
もしここまで読んでくださった方がいるとすればそれは本当に本当に意味のない時間です。
非常に残念でしたね。
もし先生が最後にひとつだけ意味のあることを言えるとするならば、人間というものは所詮、裸で生まれてきて、裸で死んでいくという、その一言につきるのではないでしょうか。
そして願わくば皆で最後に笑ってこう言おうではありませんか。
『素晴らしき
と。
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