Take‐13 映画『私の中のあなた(My sister’s keeper)』(2009)は面白かったのか?


 ども、ペイザンヌでおじゃる。


 え~とね、私、どんな好きなコがいてもですね、98点なんすよ。


 マイナス1点は何かと言うと“もっと、まだまだずっと好きになれる希望がほしいから”。


 もうひとつのマイナス1点は何かと言うと“ズルいから”。


 ズルいといってもなんというか、こんなに好きにさせやがって! みたいなズルさ? 長淵的に歌うと(別に歌わなくてもよい)『こ~んなに好~きにさせと~いて~“勝手に好きになった”はないでしょう~』というアレ。


 そんな感じのズルさを秘めやがった作品が今回チョイスした、『私の中のあなた』(米)。


 あまり点数とか付けるのはやなんだけどもう上がないんですわ。これ以上。つまり、先程言った流れでの【98点】。


 いや、やられました。

 もちろん、良い意味でですがやられまくったね。


 ひっさびさに終わった後、夜中に一人でスタンディング・オベーションでしたわ。


 ズルいのは白血病というJOKERを出してきやがったところ。なんですが、ヨイ。つかみからしてうまい。タルいと思ったところは皆無。


 簡単なあらすじは白血病の姉ケイトを“救うため”ドナーとして生まれた幼い妹アナ。だが、なんとアナは“私の命は私のものである”と主張し、弁護士を雇って家族を訴えるのである。その彼女の本当の意図するものは……


 という感じの映画である。


 たとえば男性とかでアクションやミステリーの方が好きなんでこういうのはちょっと… という人でも全然イけます。騙されたと思って一口だけ食ってみろって感じです。


 小説はともかく映画の脚本では回想シーンが多用されるのはあまり誉められないんですね。下手がよく使うとも言われます。


 ただ、本作の回想シーンにおいては無駄をはぶき、混乱もさせず、しかも回想の入口と出口が自然、といったまさに成功事例のごとき脚本と編集なのです。


 さほど尺が長いわけでもないのに人物全員にしっかりした“役割”があり、“見せ場”があり、“何故そんなことをするか”の理由まできちんと描かれています。


 と、思えばこういう映画によくありがちなものがない。


 それは、


◯ “いかにも”なシーンで泣かせようとするうざったい音楽。


◯ もらい泣きを誘うような“いかにも”な涙。


 これがないのが相当大きいんですね。


 だからリアルの日常生活の中でほのぼのとした会話や風景を「たまたま」見たり聞いたりした時のような微笑ましさがキュッと浸透してくる。また、そのことによってラストでのキャメロン・ディアスの“アレ”(確かめてください)がきいてくる。


 白血病に侵された姉ケイト、そして彼女が病院で出会った、こちらもやはり不治の病の少年。二人のキス・シーンがあるのだが、これは私が観てきた中で最も美しい(やはり98点?)ラブ・シーンだったことは特筆したいところですね。


 さらにはこういうテーマなのにリーガル映画っぽい楽しみも含まれてるんです。

 まあ、その“謎”ってのは映画の途中でだいたい見当がつくんですけど『ああ、そうだったのか、ビックリ!』てのがこの映画の売りではないので。


 まだあります。少し深読みすれば「造られたロボット」が自我に目覚める映画『A.I.(2001)』のように、アシモフ的なSF要素があるのにも気付く。


 例えるならば多種多様なジャンルのエッセンスがミックスされ、しかもお互いの味を邪魔し合わない、絶妙な配分のカクテル。


 だからこそファミリー系やハートウォーミング系が苦手だという人をも引っ張っていってしまう力があるのです。映画としてかなりお得な一本。


 ガン泣きはしませんでした。


 それがこの映画に対する礼儀のような気がしましたので。


 確率論で言っても、奇跡と呼ばれるものはあるのかもしれない。

 けれど、それはそれとして、現実をふと見つめること。

 その中で起こったことを肯定し、出会った人たちにどれくらい感謝することがデキルノカ?


 それが命あるうちに見つかるということは実はこれも奇跡のひとつなのかもしれない。


 そう思わせる映画。


 人間はやはり“ナゼシヌカ”より“ナゼイキルカ”なのであるなぁと。





【本作からの枝分かれ映画、勝手に三選】



★『ある愛の詩』(1970)

……元祖、白血病ロマンス。美人薄命、残された命。白血病といえばこのパターンというのが定着する決定打となったラブ・ロマンスの大御所。と、いっても今さら見る人がいるのかどうかはわからないが……教材的な作品……なのか?



★『ロレンツォのオイル/命の詩』(1992)

……愛するわが子を救うために息子のかかった難病副腎白質ジストロフィー(ALD)の特効薬をつくるため全てを捧げる両親の情熱を描く。公開当時よりも時が経つほどに名作として名高くなってきている気がする。なにげにこれも『マッドマックス』のジョージ・ミラー監督なのね。



★『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)

 …… 本作、妹のアナ役、アビゲイル・プレスリンが大きな眼鏡にポッコリお腹なオリーブちゃんを演じて10歳でアカデミー助演女優賞にノミネートされたロードムービー。家族それぞれが悩みを抱えつつも黄色い自家用バスに乗って娘が出場するカリフォルニアの美少女コンテストへと向かう珍道中を描く。まあ、今現在のアビゲイル・プレスリンは美少女コンテストどころか『ゾンビランド』や『エンダーのゲーム』などに出演してめっちゃ綺麗になってますけどね。心暖まります。良作です。

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