Take‐4 映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル(Edge of tomorrow)』(2014)は面白かったのか?


 ペイザンヌでおます。


 私ですね、ピアノというかキーボードといいますか、まあ絶対音感なんてあるわけもなく、楽譜なんて“ト音記号”がナスカの地上絵に見えるほどの音階無知なのでまったく弾けません。


 いや、正確にいうと二曲だけ弾ける曲があります。(まあ、モドキなんですがね)


 弾きたい曲をチョイスし、練習のために次に押さえる部分の鍵盤が光る“ナビゲート機能”がついたキーボードってのがあるじゃないですか。あれでショパンの『別れの曲』を必死に練習したことがあるのですね。



 が、……なんとゆーかこの行為は“練習をしている”というよりも、テスト前に英文を丸々なんとか暗記しようとする業務作業にも似ているような、いや、どちらかというと目の前で動く猫じゃらしを何とか仕留めようとする猫の感覚に似ているような……



 それでも空いた時間を全てそれに捧げ、一週間、二週間と毎日毎日同じ行為を繰り返すうちに“出来る”ようになってくるんですよ、これが不思議と。



 五日前には『ムリムリムリ、無理だって、こんなの』トカ『ぜってえ指、届かねぇよ』トカ『こんなん左右同時に動かせるヤツ変態じゃん』ナド思ってたのが、ある時を境に急にできるようになる。睡眠学習のように眠ってる間に何かが進化しているような感覚、というか体が覚えていくんでしょうね、きっと。



 それと同じような感じで、何百本の極太パスタのような宇宙生物と戦うためにトムくんが同じ一日を何度も何度もタイムリープし、死んではやられてはまたその日の最初からリセットされ、やがてド素人から最強の戦士へと変わっていくという映画が今回取り上げた『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。



 なんと、原産地は日本のライト・ノベル。

 ラノベがハリウッド映画になるとは少し異例なことのように思います。(内容はだいぶ違うらしいですが)


 こりゃあ、『なろう』や『カクヨム』の住民様においても何とも夢のある話じゃないですか。

“あなたのその一作がハリウッド進出!”なんてことにもなりかねないんですからね。


 なんてのもあって、今回このカンソウキにチョイスしてみました。




 個人的には主人公トムくんが前半のダメダメ新入り兵士から徐々に変わっていく部分の方が興味深かったですね。


 毎日同じ戦闘の繰返しだから敵の攻撃パターンを暗記できるわけで、


 ワン・ツー・スリー、ドン! 

 ワン・ツーで右にズダン! 

 からの~、上に構えてバキューン!

 一歩下がってドン、ドドン! 


てな感じで、まるでダンスのように仕留めていけるようになってくるのが実に心地よさを感じます。


 ただ、後半。


 トムくんが既に強くなってしまってからはもはやどこにでもあるただのSFアクション映画みたいになってきちゃって、クライマックスに辿り着く頃にはお腹一杯に。早く終わんないかな……みたいなテンションになってきたのは否めません。



 これは以前に『恋はデジャブ』(1993)という映画でも使われた手法なのですが(邦題で何とも損をしている映画ですが・笑)こちらはかなりの良作コメディです。

 似たようなタイトルもたくさんありますが『ゴーストバスターズ』のビル・マーレイが出てるヤツですね。最近、とんとレンタル店でも見かけないのが残念なところですが、もし、機会があればぜひ。とてもお薦めの一本です。


 この映画の主人公も、ひょんなことから一日という時間枠の中に閉じ込められてしまいます。寝て、朝、起きたら昨日と全く同じ一日なわけですね。自分には昨日の記憶があるけれど他の人にはない。自殺を試みても、やはりリセットされてしまう。

 まあ、時間だけはたっぷりあるわけですから暇潰しで始めたピアノがバキバキ上手くなっていく場面なんかがあって……




 ……あれ? 



 と、察した方がいらっしゃいましたらその通りです。


 そう、実は冒頭に書いた下りはこの映画の主人公に触発されたからなんです(笑)


 元気があれば、もとい、時間さえ多く費やせば何でもできる! ……かもと。


 まあ、私は結局二曲しかマスターできませんでしたがね。





 この二本、主人公の最終目的を比べると『オール・ユー……』は極太パスタ星人を倒すためであり、『恋はデジャブ』はこの繰返しの同じ毎日から抜け出すこと。


 いつもいいところまでいくにも関わらず、恋した女性が次の日には自分のことを全て忘れてしまっているという葛藤は両方の映画にも共通してあるんですが、恋愛コメディとしての『恋はデジャブ』の方がやはり秀逸かと思えます。共感が持てるんですよね。見ている側として。



 映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。続編も製作進行中だそうです。脚本次第ですが… 見るのかどうかは微妙なとこかなぁ、と。



 ちなみに私が弾けるもう一曲というのはビートルズの『レディ・マドンナ』。大好きな曲なのでこちらはナビゲートではなく必死に楽譜から練習しました。



 この映画のタイトルがやはりビートルズの『愛こそすべて(オール・ユー・ニード・イズ・ラブ)』からきていることを考えると、なんとも不思議な偶然を感じるなぁと……









【本作からの枝分かれ映画、勝手に三選】



★『バンテージ・ポイント』(2008)

……大統領が演説中に暗殺された。その場にいた8人の視点から同じ状況が8回繰り返される。登場人物が、というより、見ているこちら側がタイムリープを体験できるという脚本、構成とともに秀逸な作品!



★『プライマー』(2004)

 ……スイッチを入れて6時間経過。そのスイッチを入れた6時間前にはタイムトラベルできるがそれ以上の過去、もしくは未来には行けない。そんなタイムマシンを開発した二人のとった行動は……。9つのタイムラインが存在する映画ですがとにかく軽い気持ちで見ないことをお薦めします(本当に)。難解レベル激高です。おそらく解説書を読みながら見ても理解するのは困難、もしくは相当時間がかかります。パラドックス好きならチャレンジの価値あり?



★『ターミネーター(一作目)』(1984)

 ……こちらもタイムリープ関連? ありがちじゃん? いやいや、そうではなく冒頭でシュワちゃんに瞬殺されるツンツン頭のチンピラが本作の口髭軍曹ビル・パクストンのデビュー作とは(笑)

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