勇者ですが、非破壊オブジェクト扱いで召喚されました。

第一章

第1話 宇宙と書いて「そら」と呼ぶ

星の向こうから太陽が上がってくる。徐々に回っていく大地の向こうに大きなクレーターが見えてきた。これでもう７度目だ。

俺は、田中仁。ちょっと前まで日本の地方都市で高校生をやっていた。

今は、星の周りを飛んでいる。何を言っているのかと思うだろう。俺もそう思う。だが、本当なんだ。普通、召喚されるって場合、お姫さまか巫女さんとかがいる祭壇とかじゃないの？え？そういうのはもう古いの？

まあいい。気が付いたら、宇宙を漂っていたんだ。そして、強制的に知識を埋め込まれた。なんか、一つの事をきっかけにイロイロ思い出すってあるじゃん？

あんな感じで新しい世界についての知識が湧いてきたんだよ。

今、眼下に広がっているクレーターの内側にあの星の文明圏の一つがある。

俺はそこに降りて救世主となるのだ。

お姫さまを助け、国を立て直す。良くある勇者の物語。

その勇者を演じないといけないらしい。あまり気が進まないが、いいかげん星の周りを飛んでいるのも飽きたし、いっちょ、やってきますか。