第8話 反逆
その8 反逆
わたしは歩く。ただひたすら、まっすぐに。
早熟だったわたしは、幼い頃から随分と物事に反発していたと思う。否定はしない。
対象は世の中であり、大人であった。また理不尽であること、納得できなくてもわかったふりをしなければいけないことに。
体がもどかしさにうずいていた。
子供が声を張り上げてたって、世間は見向きもしない。
大人はなぜだか、子供が「そこまで」考えているなんて思いもしない。
子供の記憶力も侮っている。
あんたたちだって、小さい頃は考えていたろう?
日々の雑事の記憶に紛れてしまったかい?
世の理不尽を素直に追求する子供が鬱陶しかったのか?
面倒くさかった?
わたしたちの声はたわごとにしか聞こえなかった?
必死に訴えても、客観的にも道徳的にも大人の視線で見ても正しかったはずの様々なことを黙殺してきたのはなぜ?
わたしたちが、小さくうずくまって痛みに耐えるしかなかったのはどうして。
そうしてネジ曲がってゆく心を、純真さを失っていくのも
自分たちのせいだなんてこれっぽっちも考えやしないよね。
どうしてそれで平気なの?
なぜ平気でわたしたちを非難できたの?
わたしたちはねじれた。
ひねくれてるんじゃない、捻じ曲げられたんだ。
それでも、
わたしたちは、我々の精神はまだ生きてるんだ。
あの日々を忘れたわけでもない。
納得出来ない多くのことをそっくりそのまま、両手に抱えて。
ねじれた体を必死で伸ばして、
それこそ激痛におそわれても、前をむいてる。
向かい風や横からの突風や、ときに後ろから豪雨が襲ってきても
わたしたちはねじれた体を動かして、
まっすぐ歩いている。
ねじれきったまま、歪んだ道を、楽な方を選んだりなんてしない。
あんたたちのようには生きない。
まっすぐ、まっすぐ、前を向くんだ。
それがわたしたちの反逆。
誰も気づかない、精一杯の反逆。
歪んだ世界で、まっすぐであること。
それはわたしたちの、ぼくらの、「反逆」
それはやがて世界を変えると信じて。
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