第2話 闇と栄光
眠い。
とてつもなく眠い。
そういえば、いつからここにいるのだろう。いや、気づくとここにいたというべきか。
未だほんの子供だった儂は、人の叫び声をきっかけとし、我を持った。
怯える儂を人々は担ぎ上げ、狭い祠に押し込めた。
朝と夕には食事が与えられた。
やがて祠は大きくなった。
どんどん大きくなった。
朝夕の食事は相変わらずだった。
しかしあるとき、「人」が捧げられた。
「人」は胸を一突きにされ、祠の前に置かれた。
儂はどうしてよいのかわからなかった。
しかし、置かれたままでは困るので食った。。
やがて定期的に「人」が供犠された。
贄が供されてしばらくは、食事が運ばれなかった。
飢えに飢えた儂は、それを喰うしかなかった。
やってくる人々に、何度も訴えた。
儂の言葉は「人」には唸りにしか聞こえないようだった。
「ここから出してくれ」「人など食いとうない」
それだけだったのに。
祠はやがて城となった。石造りの頑強なものに変わっていった。
「人」は豪奢な城に儂が満足したのではないかと口々に語った。
ちがう。
より強力に閉じ込められたのだ、儂は。
儂は一体彼らに何をした?
ただ、彼らは一方的に儂を閉じ込め
朝夕食事を与え
「人」を捧げ続けていた。
ある日、食事の代わりに剣を持った若者と仲間らしきものがやってきた。
彼らは城の深奥にいたわしを一突きにした。
あの、捧げられた「人」のように。
なあ、一体儂はお前たちに何をした?
お前たちは儂を閉じ込め、供え物をし、
仲間を殺して勝手に捧げ、
儂を「魔王」と呼び
儂を苦しめ
儂は苦しみぬいて
一歩もここらか出ることもなく
「我」をもったそのときから一度も青空を見ることもなく
殺すのだな。
儂はただ、「人」であったにすぎぬのに。
長寿であったにすぎぬのに。
たったそれだけの理由で
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