第4話 夢に
この身体は思った通りに動いてくれなくなった。
人は私を老いぼれだと思って、扱いをひどくする。私はそんなんではない。私はまだ若いのだ。人々が思っているほど、枯れてはいない。
むしろ心は彼らよりも瑞々しく、活力に満ち満ちている。歩けなくなって車椅子になったとしても、私は歩くことができるし、空すらも飛べる。さらには踊ることもできる。
世界は夢を見ることで空を飛ぶことも踊ることもできる。ばあさんと最後に話してからそう改めて思い知らされる。
「ばあさん。これからどうすればいいか」
「知りませんよ。ただ、何とかなります。そうやって生きてきたじゃないですか」
「そうだが。疲れた」
「そんなこと言わずに。今私たちはこういう身体ですけどね」
「こういう身体ですけど、まだ歩くこともできるし空を飛ぶこともできますよ」
「どうやって」
「夢を見るんです。早起きになって夢を見る時間は短くなりましたけど、その分起きている間に夢を見ればいいんです」
「だがそれで本当にいいのか」
「大丈夫です。昔二人して海外旅行なんてものを夢見たじゃないですか。あのときと同じですよ」
「そんなこともあったなあ」
「ええ。だから」
ばあさんは死んだが、私はより強く生きている。もうすぐお迎えが来るかもしれないがそれまでは生きていられるのだ。
鳥と一緒に空を飛んだら、宇宙飛行士になって宇宙を進んだら、ダンサーになって華麗に踊れたら、この足で歩くことができるなら。
この夢は現実だ。私は幸せすぎる現実を生きている。
夢に生きる人間は、表面では決して判断されないべきだ。
それは私がこの身体で踊っているからだ。
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